第4話 『オーディション』その4


 『オスティナートのみなさま、今日は、地球のアートをご鑑賞いただいてきました。


 最後に、オーケストラの演奏をお聞きください。


 グスタフ・ホルストさんが作曲した、『組曲 惑星』です。


 全部で7つの音楽が集まってできています。


 それぞれに、私たちが住む太陽系のなかの、地球を除いた7つです。


 水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星です。


 冥王星は、まだ発見されていませんでした。1930年にようやく地球人が発見し、ここのつめの惑星になったのです。


 でも、おもしろいことに、冥王星は、西暦2006年からは、惑星の地位を奪われてしまいました。


 太陽系の外縁部には、似たような星がたくさんあることが分かってきたからです。


 でも、この作品は、惑星自体を表現したわけではなく、星占いの分野から見た音楽という性格を持っています。


 え、ぼくは、占星術は、わかりませんから、解説できません。


 さて、地球で初めて演奏をされたのは、西暦1918年9月29日でした。


 しかし、これは、非公開演奏会だったので、聞いたのは、招待客だけでした。


 全曲が一般公開されたのは、1920年11月15日になってからです。


 このころは、まだ、地球人は、衛星の月にも行けていませんでしたし、それどころか、地球の大気圏から出ることも、できていませんでした。

 ようやく、飛行船や、飛行機が、空を飛び始めた時代です。


 だから、望遠鏡で見たり、物理法則で計算した以上の、各惑星の素顔は、知らなかったのです。


 でも、ここでは、どうか、地球人の想像力をお楽しみください。』


 ぼくは、惑星の解説を終わらせた。


 あまり、面白くないな。


 しかも、宇宙人には、さっぱり分からないかもしれないな。


 しかし、マオ・マ氏は、こう、言った。


 『なかなか、佳かったです。あなたは、オスティナート星人が、われわれを、遥かに凌駕する知性の持ち主であることを、忘れてはならないです。我々が話すことは、彼等にとっては、幼稚なものなのです。しかし、演劇や音楽をどう受け止めるかは、まだ、はっきりしません。特に、抽象的な音楽という分野は、もしかしたら、地球人の切り札かもしれません。』


 『ふん。』


 アレグロ・コン・ブリオ氏が、意味不明な咳払いをした。



          ✴️


 



 

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