第2章

第9話:オリアンナの怨念

 許さない、絶対に許さない、何が何でも復讐してやる。

 私をこんな僻地の汚い修道院に押し込んで無理矢理反省させようとする。

 誰が反省などするモノか、必ず復讐してやる。

 どんな手段を使ってでもマチルダとサーニン皇太子にも地獄を見せてやる。


「オリアンナ、ちゃんと反省していますか。

 心から反省して真摯に祈れば、神が救いの手を差し伸べてくれますよ」


 この腐れ大神官が、自分は夜な夜な修道女をベットに引っ張り込んでいるくせに、他の修道士の前では清廉潔白の仮面をかぶってやがる。

 必ず正体を暴露して大神官の地位から引きずり落としてやる。

 私の美貌を身体を使えば、欲求不満の修道士を誘惑するくらい簡単な事。

 だた安売りをしては後々困る。

 最も力ある相手を見抜いて最良の時に使わないといけない。


「はい大神官様、心から反省しております。

 神に真摯に祈り反省の心をお伝えしております。

 御姉様には本当に申し訳ない事をしたと思っています。

 ロバート王太子殿下の事も心配です。

 いったいどのような罰を受けられたのか……」


 今までロバート王太子を操っていたように大神官を誘惑する。

 できるだけ多くの情報を引き出して利用できるモノを探すために。

 誘惑し過ぎて大神官が暴走しないように注意深く。


「オリアンナ、まだ全然反省していないようですね。

 真摯に反省しないといつまでもここからは出られませんよ。

 マチルダ様の慈悲に縋るのです。

 サーニン皇太子殿下のお許しを得るのは難しいですが、マチルダ様のお口添えがあれば許されるかもしれないのですよ」


 おのれ、おのれ、マチルダ、全部マチルダの所為だ。

 全て私よりも劣るというのに、数分早く生まれたというだけで王太子婚約者に選ばれ、今では皇太子の婚約者ですって。

 私はマチルダごときの下につく女ではないわ。

 その私に、マチルダごときの慈悲に縋れと言うのか。


「それに、もう貴女に味方する者は誰もいませんよ。

 ロバート王太子は処刑されてもうこの世にはおられませんよ。

 ロバート王太子の側近だった者も全員処刑されています。

 フランドル王国も、もう直轄領だけの弱小国になっているのですよ。

 フランドル王国に仕えていた全ての貴族が、ルーサン皇国に仕えています。

 もう貴女の知っているフランドル王国ではないのですよ。

 貴女が頼るべき相手はマチルダ様しかいないのですよ」


 いま、今だけだ、今だけ、形だけマチルダに頭を下げる。

 今だけ形だけマチルダに媚び諂って自由の身になる。

 自由の身にさえなれれば、ルーサン皇国の社交界に入ることができれば、この美貌と身体を使って信奉者を集めて復讐できる。

 だから、今だけ形だけマチルダに頭を下げる。

 だが、だが下げた屈辱は絶対に忘れない。

 私が受けた屈辱の分だけマチルダに復讐してやる。

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