6 決意
「ねぇ、ルカは私を守ってくれるんだよね?」
「ああ、そういう約束だったからな」
「ならお願い。私をあそこまで連れて行って!」
いくら力を得たとて1人で無数とも言える喰らうモノを突っ切っていくのが無謀であることは龍見にも分かっていた。
その龍見の願いに根っからの戦闘狂である龍は笑って頷く。
「龍見が動けるなら、もうここにいる必要はないからな。どうせ殴り込みに行く予定だったんだ。ついでに連れてってやるぜ!」
「まぁ、そうなるよな。ヴァイシュ、本部に幸原さんの話を……」
「私を通じて本部も聞いているはずですよ」
≪はい、聞いてましたよ!……はい、戦闘に参加している全ての勇者へ通達。これより作戦目標を変更。総力を結集して『方舟』へ幸原龍見さんを送り届けるになりました!≫
「了解!」「幸原さんって誰だ?」「いいから目の前を敵を倒せ!」「お掃除、お掃除~♪」「邪魔はさせません!」「とにかく敵を倒しゃいんだろ?」「おら、どんどんかかってこいや!」「逆転の秘策は1人の少女にあり。いいね、燃えるね、こういう展開!」「ルカも一緒に行くの?二人とも頑張って!」
頼もしい勇者たちの言葉に龍見は思わず涙ぐむ。自分の事を信じてもらえる。それがこれほど嬉しい事とは思わなかった。
(ラーもこういう思いを共有できる誰かがいれば違う未来を歩けたのかな?)
「何、泣いてんだ。これから敵陣に飛び込むんだぜ。楽しそうに笑えよ」
「そんなので笑えるのはお前を含めて数人だぞ?あっ、俺もついていくから。ただイルマさんとヴァイシュは……」
申し訳なさそうなショウの言葉を笑顔でイルマは遮った。
「流石についていく勇気はないから安心して」
「私も自己修復が追い付いていないので今回は見送りですね。イルマさんの事はお任せを」
「オーブを持っていくつもりだけど1人で大丈夫か?」
今張っているオーブの力場を解除すればイルマも戦場に放り出されることになる。本調子ではないヴァイシュだけで大丈夫かとショウが心配するが――。
「やっほ~、助けがいる感じ?」
「私たちで良ければ力をお貸しします!」
周囲の『ドラゴン』を薙ぎ払って現れたのは小柄で武骨な石造りの大剣と青い刃をもつ大鎌を携えた2人の少女だった。
「茶々に優子ちゃんじゃないか。君たちも来てくれたのか!」
「げっ、お前らが来たって事はあの人も……」
「オオ~ン!!」
ルカの質問に答えるように遠くから獣の遠吠えが聞こえルカの巨体が激しく震え出した。
「リョウさんも来てくれたんだ。ならここは安心だな」
「オイ、早く行こうぜ!というか、もう行くからな!」
「おい、勝手に行くなって!」
上にいた『ドラゴン』を体当たりで吹き飛ばしながらルカが天へ向かって急上昇していってしまった。
「えっと、ルカはどうしたの?」
「まぁ色々あるんだよ、アイツにも」
表情(というか顔に当たる部分が)がないヴァイシュ以外が苦笑している中で状況が分からず困惑する龍見に気にしなくていいとは言いショウは展開していたオーブを盾に回収してルカを追いかける。
「ここは任せて頑張ってね!」
「ありがとう、行ってきます!」
茶々と呼ばれた子に後を任せ龍見も翼を広げ空へ飛ぶ。この戦いを終わらせるというゆるぎない決意と共に。
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