4 女王の望み
何度目か激突でショウは後ろに吹き飛ばされた。地面に足で2本の線を引きながら後退するショウをかみ砕かんと女王が姿勢を低くして大口を開けて迫る。
槍を地面に突き立て棒高跳びの要領で女王の背中に飛び乗ったショウは渾身の力で槍を突きさそうとしたが、その攻撃は背後から飛んできた尻尾の一撃で叩き落とされ阻止されてしまう。
「少しはダメージ与えたいところだけど!」
己への自信からか一直線に攻撃を仕掛けてくる女王に対しショウはジグザクに移動し相手の攻撃を空振りさせ隙を作り何度か攻撃を加えてはいるのだが巨大な体躯に見合わぬ俊敏さと機転で捌かれているのが現状だった。そもそも10メートル大の巨体を持つ女王の方がリーチが長い分肉弾戦では有利なのだから尚更である。
「その程度で我を倒せると思ってか!」
女王の足に蹴飛ばされるも、吹き飛ぶ瞬間に槍を投げつけ傷を与えることに成功するが。
「小癪な!」
「やっぱりこの程度じゃ駄目か」
女王の足の傷はすぐに癒され、ショウも投げた槍に手を伸ばし己の元へ引き寄せ立ち上がる。
「矮小の身で我とここまで戦える者は今までいなかった。褒めてつかわすぞ、異界の戦士よ」
「そりゃどうも。そういえば聞いていなかったが、あんたは他人の体を奪い取ってまで何をしたいんだ?」
「我の望みか。決まっている。我の強さを世に、あまねく世界に知らしめるためだ!」
「要するに腕試しかよ。まぁ、それをくだらないとは言わないさ。けど、あんただってあの
「なれば、我にお前たちのもつ力を捧げよ。さすれば我があの黒い災いを全て払ってやろう」
「幸原さんの体だけじゃなく輝石まで要求するのかよ……。ところであんたは滅ぼされた自分の世界、喰われた仲間の事をどう思っているんだ?どうもあんたからは故郷や仲間を殺された悲しさとか憎しみを感じないんだよな」
「仲間?くだらんな。弱者に価値はない。我らは龍、ただ強くあるためだけに存在する最強の種族よ!だから女王である我さえいれば後は不要。故郷なぞ我らを縛り付ける楔に過ぎん。そんな物に未練はない!」
「……そんな考えだから、あんたは王として喰らうモノに負けたんだよ。自分も世界も仲間も何もかもすべて失ったんだよ!」
「だからこそ、やり直すのだ!我は認めぬ、断じて認めぬ!あのような戦いで我が負けるなど許されぬのだ!」
「あんたがどう思おうが、あんたは負けて死んだ。その死を他人に押し付けようとするな!」
「黙れ!我は勝つ。それこそが我が我であるために必要なのだ!」
それは誇りか、あるいは生への執着か。ショウの目前で死してなお捨てきれない妄執を抱く女王の体が異常なほど膨張していく。
「さすが精神世界、何でもありだな。けど、負けられない理由をもっているのはあんただけじゃないんだ。ここであんたの妄執に終止符をうってやる!」
現実世界にある輝石から力を引き出しショウの体から青いオーラが溢れ出す。その光を槍に集めショウは山のような大きさになった女王を見据える。
(見栄を張ったはいいけど、アレに勝つにはなんとか同じ土俵に持ち込まないと無理だな。頼むぞ、先生、イルマさん!)
「行くぞ、これぞ我が力、我が意志なり!」
「ならその意思を穿つ!」
遠近感がおかしくなりそうなほどの巨体に向けてショウが槍を突き出した。
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