3 広がる戦火
『地球で、この規模の戦いは久しぶりじゃな。もしあの数がお主らの世界に現れたらどれだけの犠牲が出るじゃろうな?』
「おい、アイツらはなんなんだ。なぜ、あいつらは戦える?」
『ある世界が喰らうモノに襲われ滅びに瀕していた。多くのモノが喰われていく中で、ただ1つだけ喰らうモノが決して口にしようとしなかった鉱石があった。強大な力を秘めているが誰も扱いきれず度々大きな災害を起こすその石を人々は忌むべき石、『忌石』と呼んでいたそうな』
「なんの話をしている?」
訝しげなゼスカルを無視して老人は語り続ける。
『じゃが、そこに奇跡が起こった。強大すぎる力を持つ石と生まれつき特殊能力を持たない人間が出会った。なんの能力を持たないが故に空っぽだった人間に力が注ぎ込まれた。喰らうモノが唯一絶対に喰らう事ができない力を」
勇者たちがそれぞれの武器を手に『ドラゴン』の群れと死闘を繰り広げている。剣、槍、斧、銃、弓に拳、棒、鞭。着ている服も、基本は色とりどりのコートだが中には鎧、ローブ、明らかに戦闘向けとは思えないヒラヒラした服を着ている女の子もいる。更にロボットやら獣やら戦車やらが入り乱れ訳の分からないカオスな空間を作り出していた。
『その時、忌石は輝石、未来を照らし出す希望となった。そして、その希望の担い手たちをワシらはこう呼んでおる。勇者とな』
滑稽な呼び名とゼスカルは思う。
だが、あの最凶最悪の敵を恐れずに立ち向かう者たちに対してこれ以上の呼び名はないだろうとも思わずにいられない。
勇敢に戦う若者の姿にいつしかゼスカルは拳を握りしめ、その全てを目に焼き付けようとするかのように見守るのだった。
地上での激戦が続く中、光の矢の攻撃を凌いで女王に向かってくる『ドラゴン』たちの対応に追われるルカとヴァイシュに空から応援が駆けつけてきた。
「お待たせ!」
「うおっ、鳩子じゃねぇか。お前も来たのかよ?」
「地球の一大事だからね。私だけじゃないよ」
ルカと会話を交わしたのは伝説のルフ鳥を思わせるほどの大きさの……鳩だった。その鳩を追い越すように、複葉機や飛行ロボット、果ては空飛ぶ円盤が空を駆け『ドラゴン』を撃ち落としていく。
「運んでくれてありがとう!」
そう言って巨大な鳩の背中から10人の勇者たちが飛び降りて地上戦に参戦した。積み荷を降ろした巨大鳩もヴァイシュたちに別れを告げ『ドラゴン』の群れに向けて飛んでいった。
『警告!『方舟』から高エネルギー反応!範囲予測……射線上の味方は退避、退避してください!」
黒い大地の中央部が膨れ上がり巨大な『ドラゴン』の上半身を形成、その口元から、どす黒い力の奔流が吐き出された。放たれた闇のブレスは射線上の味方であるはずの『ドラゴン』を巻き込み女王を囲む力場も巻き込もうとした。
「ちっ、おい!」
「分かっています。鏡面バリアー展開。攻撃を弾き返します」
間に割り込んだヴァイシュの前方に光の壁が出現しブレスを空に弾き返した。
「ジェネレーター冷却開始。残存エネルギー25%低下。『王』ほどではないですがかなりの威力ですね」
「くそっ。あんなの何度も受け止められねぇぞ?」
「それでも何とかするしかないですよ。気づいていますか?あの『方舟』に現れた竜の体。大きさは違いますが、ここにいる女王によく似ているということに」
「言われてみれば似ているな。はぁ、こりゃ何としてもコイツを守らなきゃならないな」
「そう嫌そうな顔をしないでください。元々幸原さんを守るのがあなたの任務だったでしょう?」
「わ~ってるよ!」
ルカも一応今回の騒動の引き金を自分が引いてしまった事に対して引け目を感じていた。だからこそ、敵陣に飛び込みたい衝動を抑えて女王に奪われた龍見の体を守る事に専念していた。
「さて、ではこちらも敵の本格的な攻撃に備えましょう。本部へ、こちらヴァイシュです。メビウスパックの使用許可を申請します」
≪アレを使うんですか!?少し待ってください。……はい、承認が降りました。出力は30パーセントで固定。特に『機雷』の扱いは注意してくださいね≫
「ええ、もちろんです。メビウスパック、ドッキングシーケンス開始」
ヴァイシュは背中に異空間から召喚した∞の形をしたパーツが合体し同調を開始する。
「サブブースター展開。Sドライブに接続。エネルギー供給開始。さて、始めるとしましょうか。メビウス・レイ発射!」
メビウスパックが青く輝き円の部分からリング状のビームを発射し近づいてくる『ドラゴン』たちを撃墜していくが、何匹かは落ちている途中で体を再生させ再び女王を目指そうとするが。
「本物のブレスって奴を見せてやるよ!」
ルカの口から放たれた雷の力を秘めたブレスが執拗に女王を狙う『ドラゴン』を焼き払う。そのまま顔を上げ『方舟』に生まれた超巨大『ドラゴン』に一撃を見舞おうとするも、その攻撃は大地から噴き出した黒い霧に攪乱され霧散してしまう。
「やはり遠距離からの攻撃を通すほど甘くはないようですね」
「ちっ、偽物の分際で!」
「アレの対処は他の人に任せましょう。我々はここを死守しなくては」
「くそっ、ショウの奴、さっさと終わらせろよ……!」
続々と向かってくる『ドラゴン』に2人は、それぞれ攻撃を開始する。
後に『方舟迎撃戦』と名付けられる戦いも佳境に入ろうとしていた。
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