8 激戦の幕開け
「あらよっと!」
間近に迫った喰らうモノにルカは両手に貯めた雷を叩き込む。
女王に手出しが出来ないと悟った喰らうモノたちは、その周囲にいる者をターゲットに変え襲い掛かってきた。
「ちょこまかとうっとおしい!」
女王の攻撃を吸収して成長した5メートル級の『ドラゴン』の爪をルカが宙がえりでかわし、指から雷撃を放ち反撃する。だが巨体に見合わぬ動きで『ドラゴン』も動き回り攻撃を避けていく。
「先ほど攻撃を吸収した個体は中々の手強さですね」
そういうヴァイシュも同サイズの『ドラゴン』が使った炎の魔術を喰らいつつ腹部のビーム砲で応戦しているが一進一退の戦いを繰り広げていた。
だが2人の相手はこの2体だけではない。能力と体格は劣るが同じような『ドラゴン』が数十体も加わり大乱戦になっていく。
「面白れぇ、どんどん来やがれ!」
両腕に雷の刃を形成し通り過ぎ様に人間大の『ドラゴン』を切り裂いたルカの頭上が突然暗くなった。
「ちっ!」
ルカの意識が雑魚に向いた瞬間を見逃さず、先ほどの『巨大なドラゴン』が体を回転させて勢いの乗った尻尾を振り下ろす。
咄嗟に腕を交差させ攻撃を防ぐも勢いは殺せずルカが地面に叩きつけられバウンドしながら転がっていく。
「あの子、死んだんじゃ!?」
『いや、あの程度で死にゃせん。むしろお前さんたちの方が危険じゃ。何度も言うが絶対にワシが張った結界を出るでないぞ。消し炭になりたくなければな』
「確かにここを出れば怪物の餌食になるだけだな」
「いや、危険なのはむしろルカの方じゃ。今までのパターンじゃと……」
地上から戦いを見ていたイルマとゼスカルは普通の人間なら死んでいてもおかしくない攻撃を受けたルカがゆっくりと立ち上がるのを見た。
だが、そのルカの雰囲気が明らかに変わった。凄まじいほどの威圧感と力の波動が周囲を揺るがす。
「やってくれるじゃねぇか。そうだよな、仮にも他の世界の龍を喰ったんだ。こうでなくちゃ面白くねぇよなぁ!」
勢いよく跳ね起きたルカが吼えるとその体が光に包まれどんどん大きくなっていく。
「嘘!?」
「まさかアイツも……!?」
2人の視線の先には、蛇のように体をくねらせ優雅に空を泳ぐ巨大な龍がいた。
額に2本の角、鮮やかな金色の鱗はキラキラと輝いている。そしてなにより特徴的なのは顔にある2対3列、その上に更にもう1つ、合計7つの琥珀色の目が周囲を飛ぶ『ドラゴン』を睥睨する。
「教えてやるぜ。本当の龍、『七目龍』の力をな!」
七目龍の咆哮が空を震わし、天から無数の雷が降り注ぎ『ドラゴン』を打ち砕いてく。
「ひぃ、本当にこっちにも雷落ちてきた!」
『元々力の制御が苦手な奴じゃからな。頭に血が昇っておる状態では更に悪くなるのは必然じゃ』
「冷静に解説してますけど私たち大丈夫なんですよね!?」
『まぁ、一点に集中した攻撃でなければ大丈夫じゃ』
(あんな攻撃、戦艦のシールドですら防ぎ切れるか分からんのだぞ……。何なんだ、こいつ等は?)
ルカの攻撃を軽く防ぐ杖の老人にゼスカルはただ戦慄するしかなかった。
「敵の数は減っていますが少々手荒すぎますよ、ルカ」
「うるせえ、倒せてんだからいいじゃねえか」
「せめて味方に攻撃を当てるのは止めてもらいたいのですがね」
「お前もじじいもこの程度どうってことないだろ」
その言葉通りヴァイシュも何発か直撃を喰らっているのだが全くダメージを受けている様子がなく逃げ惑う『ドラゴン』に指から発射する『フィンガービーム』を浴びせ確実に屠っている。
「私はともかく先生の元には要救助者がいるのです。そこの所は理解しておいてください」
「分かってるよ。だから加減しているだろうが。くそ、本当はあのいけ好かない女王気取りと戦いたいのによ!」
「状況次第ではそうなる可能性もあります。キチンと体力は残しておいてくださいよ」
「ま、ショウなら上手くやるだろ」
「ええ、私もそう願っていますよ」
2人の活躍で周囲の『ドラゴン』の数は減り、地上の別グループの喰らうモノもほぼ壊滅した。
厄介なのはルカの攻撃を受けてなお健在な大型の『ドラゴン』のみ、と思われたのだが――。
≪次元振動、極大反応! 来ます!!≫
ゴゴゴゴと空間を揺さぶる振動と共に月が浮かぶ灰色の空に亀裂が走り地面まで到達する。そしてゆっくりと扉の様に亀裂が左右に広がっていき、中から無数の黒い『ドラゴン』たちが飛び出してきた。
「来やがったな!」
「竜の女王に近づけさせないでください!」
「分かってるよ!」
ルカの雷のブレス、ヴァイシュの腹部から発射されたシャインブラスターが黒い塊となっている『ドラゴン』の群れを薙ぎ払う。
だが、同時に『ドラゴン』や亀裂の向こうから放たれたブレスの一斉攻撃がルカの体やショウが張った力場、そして先生の結界に当たり爆発を起こす。
竜の女王をめぐる戦いは、更に混沌とした様相を呈していくのであった。
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