4 対峙
1人は剣呑な雰囲気を纏ったがっしりとした体格の大男。もう一人は背が高く龍見から見てもなかなかのイケメンだが、いかにも作ったような笑顔は信用ならない印象がある。
最初はルカの仲間かと思ったのだが、両者の間に漂い始めた張り詰めた空気がそれを否定する。
「いよぉ、ようやく出てきたな」
「わざわざ結界を張って舞台を整えてくれたことに感謝するべきか?ゆっくり話が出来る環境を用意してくれたのはこちらとしても有難いがな」
「いきなり暴れられてもこっちが迷惑するだけなんだよ。んで、単刀直入に聞くがお前ら何者だ?」
「えっと俺らは……イテッ!」
無精ひげを生やした大男に脛を蹴飛ばされた気のよさそうな若い男がピョンピョン飛び跳ねているが睨み合う2人の視線は相手の腹を読もうと絡み合って離れない。
「なるほど、表沙汰に出来ないヤツらってことか。まぁ、そっちの素性なんざオレらにゃ関係ないし聞かねぇよ。ただ命が惜しいならさっさと自分の世界に帰った方が身のためだぜ?」
「それは脅しか?」
「親切な忠告だぜ。アイツらの餌になりたいってんなら話は別だがな」
「だがお前も余所者だろう?なのにこちらに出ていけと言う権利があるのか?」
「オレは地球の連中に頼まれてここにいるんだ。こそこそうろついている鼠如きにとやかく言われる筋合いはないぜ」
威圧するようなゼスカルの言葉にルカも刺々しく反論し、一気に場の空気が冷たくなる。だが、その空気を和ますようにマルフォートが無駄に爽やかな笑顔を浮かべ間に入った。
「あ~、大尉殿もそっちのかわいいお嬢さんも少し落ち着いて、落ち着いて~。いや、そちらも自分の
現地人の龍見に無礼な発言を詫びてからマルフォートはペラペラと自分たちの境遇を語りだした。
「そう、この独特な世界に事故で来てしまっただけで、決して騒ぎを起こそうとか考えていたわけではないんですよ、いや本当に。それに帰りたくても変える方法が分からない有様でして。そうですよね、大尉殿?」
呼びかけられたゼスカルはおしゃべりな部下に苦々しい顔をして返事をしないがマルフォートは気にせずおしゃべり感覚で交渉を続行する。
「というわけで帰る方法があれば我々としてもありがたいな~とか思っているんですけど……。どうなんでしょう?」
「お前らがどこから来たのか知らねぇけど異世界へ渡るゲートは持ってるぜ。それを使いたいっていうんなら使わせてやってもいいぜ。……もっとも、そこのおっさんの狙いはソレだけじゃないみたいだが。タツミ、というかタツミの中にあるモノが狙いなんだろ?」
「いや、それは……」
「話が早いな」
まだへらへら愛想笑いを振りまいているマルフォードの襟首をつかんで後ろに引き戻すとゼスカルが一歩前に出る。
それに反応して龍見は思わず後ずさった。
男の雰囲気が明らかに変わっていた。先ほどまでも威圧感はあったが、それに加えて抜身の刃のような攻撃的な鋭さが加わり凄みが増した。その気迫に龍見は圧倒されてしまった。もしルカがいなければ腰が抜けて動けなくなっていたかもしれない。
「おいおい、オレに喧嘩を売る気か」
「貴様らがゲートを持っているなら好都合だ。お前らを人質にすれば交渉の余地もあるだろう?」
「ハハハハ、面白い冗談だなぁ、おい!」
ルカの足が地面から離れ金色の髪が意思をもっているかのように暴れはじめる。
「まぁ、その阿呆な思い上がりも許してやるさ。元々こうなる事を期待してわざわざ待っていてやったんだ。精々楽しませろよ!」
ルカの叫びに呼応して周囲の世界から色が消えていく。
そして目の前の2人の男に雷の洗礼が浴びせられた。
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