第二章 地球の守護者たち
1 奇妙な3人組
地球は今、恐るべき敵に侵略されようとしていた。
あらゆる物体、エネルギーを喰らい進化増殖する、悪魔の軍団『喰らうモノ』。
それに対抗できるのは、未知の力を秘めた『輝石』の力を使う『勇者』のみ。
地球の日本、更に関東地方を舞台に侵略者と勇者の戦いは人知れず今日も続けられているのだった。
東京上空にて。
「最後の敵を撃破。撃破数はショウが58、私が80、ルカが37。今日は私が撃墜王ですね」
「ざけんな、ポンコツ! 一番大物を潰したのはオレだろうが!」
「今回はあくまで撃破数を競うと言ったのはルカ、あなたではないですか」
「うるせーな! オレがでかいのと戦っている間にチマチマと雑魚とばかり狩りやがって!」
「数を競うのですから当然の戦術では?」
「なんだとぉ!」
「お前ら、いい加減にしろって……」
「うるせー! お前も毎回きっちり二位をキープしてんじゃねぇよ!」
「ルカ、あなたの敗因はいつも何も考えず敵と戦っているからです。次からはもう少し考えて……」
「うるせー、うるせー!」
人知れず悪と戦う勇者の3人は今日の戦いに関してあーだこーだと他愛のない言い争いをしていた。
勇者とは基本的に輝石の力を引き出せる地球人を指すのであるが、この3人はかなり変則的な人員の集まりだった。
ポンコツと呼ばれたのはヴァイシュ、正式名称はヴァイス・シュタール。
発音のカッコよさで定評のあるドイツ語で「白い鋼」を意味する名称を与えられた白を基調とした人型ロボットである。
救助された時には全ての記憶を失っていたため、新たに名前を付ける事になり、勇者ギルドの仲間が色々考えた中から、この名称が選ばれた。ただ名前が長いので『ヴァイシュ』と縮めて呼ばれる事の方が多い。
最大の特徴は人間の頭部にあたる部分が無く胴体上部に大きなセンサーレンズがあり強いて言えばそこが顔にあたる部分と言える。
3メートル大の丸みを帯びた胴体にがっしりとした足、それに比べてひょろ長い腕がアンバランスでお世辞にもスタイリッシュとは言えない姿だが、その戦闘能力は恐ろしく高い。
こんな姿だがマッハで飛行可能。対喰らうモノの為に内部に輝石を搭載したジェネレータを増設し、強力なエネルギー砲を駆使して戦う異世界のロボットである。
1年ほど前に喰らうモノとの戦いで『救出』され、本人が持っていたデータを元に体を復元し現在は調整を兼ねて地球で運用されることになったのである。
分析能力もあり社交性もそれなりに持ち合わせてはいるが、人の感情の機微は理解しづらいらしく、時折空気を読めない発言をしてしまう事だろう。
そして、そのヴァイシュに(悪意は全くないが)煽られていたのがルカという口の悪い少女だ。
褐色の肌に金色の髪を頭の左右で団子状にまとめ身にまとっているのは丈の短い中華風の道士服。見た目こそ十代前半の美少女だが、吐き出される言葉は恐ろしく汚いのが玉に瑕である。
彼女もまたヴァイシュと同じく、どこかの世界で喰らうモノに喰われ地球まで運ばれてきた
元の世界ではかなり高貴な身分らしいのだが、とてもそうは思えないほど粗暴な性格をしているが本人曰く昔よりはマシとのこと。
現在は勇者ギルドの保護されているのだが、自分も戦いたい(暴れたい)との事で勇者の手伝いをしているであった。
そんな凸凹コンビの仲裁に入ったのが、この部隊のまとめ役である
彼は生粋の日本人であり輝石の力を使う勇者の1人である。
輝石は持つ者によって様々な力の発現をする。
ショウはその中で『変身』の能力を獲得した。その効果で白を基調とした全身鎧にマントをつけ、まるで騎士のような姿をしている。
右手には柄から先が緑色に発光しているランスを、左手には五つの紋章が施された大盾を持っている。その盾はかなり凝った意匠が施され、それぞれの紋章に1つずつ赤、青、緑、黒オーブが組み込まれ、中心には一際大きな白いオーブが輝いていた。
16歳の時に幼馴染みが行方不明になるという事件がきっかけで勇者となり、既に1年が経過していた。それまでの戦功と戦いの中で獲得した飛行能力を買われ、ヴァイシュとルカの指揮を任された(あるいは押し付けられた)苦労人であった。
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