第4話 月影の森へ

その頃、ダルニス、ノマルは月影の森では懸命にメイの捜索を続けていたが

なかなか見つからず

一旦聞き込みに行こうとバルオキーの村へ向かっていた


アルドは煉獄界からバルオキーに戻ると

すぐに我が家に急ぐ

玄関をあけると同時に、村長を呼ぶ


「じいちゃん!じいちゃん!じいちゃんいるか?

 じいちゃん?あれ?居ないのか?」


家に入るや否や大きな声で呼んでみたが

返事は返ってこない

どうやら家には誰もいないみたいだ

ふとテーブルに手をかけると紙が手に触り

フィーネの置き手紙を見つけて思い出す。


「そうか、そういや

 じいちゃんはフィーネを連れて

 村長の会議にでるために

 出かけているんだったか・・・

 フィーネからの置き手紙がそう言えばあったな

 年に数回ある村長が集まる会議だったか??

 仕方がない、とにかく月影の森に向かおう」


確かめる為にじいちゃんにもう一度話を聞きたかったが

ゆっくりできる時間はない

アルドは家から出て月影の森にむかおうとすると

丁度、捜索隊のダルニスとノマルの姿がみえた

向こうもこちらに気づき

おーいと言わんばかりに手を振っている


「アルド戻ってきていたのか?

 すまん、メイはまだ見つかっていないんだ

 一旦メイが村の方に戻ってないかを聞きに

 こちらも戻って来たところだ。

 アルドの方はどうだったんだ?何か進展は

 あったのか?」


「こっちはちょっと思い出したことがあって

 何とかなりそうなんだ

 俺も今から月影の森へ行ってくる!

 メイの方はミグランスの騎士団の方にも

 頼んでみるよ」


「アルド、俺もそう考えたんだが

 今ミグランスの騎士団は

 魔獣の討伐に行ってしまっていて

 あたってはみたが駄目なんだよ」


「魔獣の討伐?騎士団も大変じゃないか。

 残念だが、それじゃ捜索の協力は頼めないな」


「あぁ、村の皆にも

 手伝ってもらってはいるのだが

 月影の森にはまだ魔物がでる

 警備隊としては

 みすみす皆を危険にさらす訳にいかん

 これは俺達警備隊で解決するしかないと

 俺は思っているノマルも考えは同じだ」


ノマルは大きく頷き

 「はい!僕も同意見です!」


頷くノマルをみてダルニスが話を続ける

 「だから村の皆には村の中で探してもらっている

  その方がメイが村に帰ってきたらすぐに

  分かるだろうし、村の皆も安全だからな」


「そうだな!助かるよ、ダルニス」

 

するとノマルがバルオキーを見回して


「アルド先輩、僕たちメイさんが帰ってきてるか

 確かめに戻って来たのですが、

 うーん、村の皆の反応をみると

 どうやらまだみたいです

 僕たちがバルオキーに戻ってきた時に

 もし村で見つかったら

 すぐに僕たちに教えてくれるように

 頼んであるんです。」


「そうだな、ノマル

 まだメイはバルオキーには

 帰ってきてないみたいだし、

 もう一度月影の森にいって捜索だな!」


「あぁ、ダルニス!ノマル!

 四大幻霊もメイも俺達で探し出そう!」


「おう!」

「はい!」


※ここからは[バルオキー警備隊]のみのパーティーを組む設定


アルド、ダルニス、ノマルは再び月影の森に向かって行く

その道中で月影の森に行くのだと言うアルドにダルニスは話しかける


「アルド、そういえば

 四大幻霊がなぜ月影の森に存在していると

 わかったのだ?

 メイは月影の森に行ったって

 メイの父親が言ってたけど・・・」


「ダルニス、それは話せばちょっと

 長くなるんだけど、煉獄界に行った時に

 感じ取れる残滓があって、

 それをオタマンダーと話してたら

 バルオキーの昔話を思い出したんだ!」


「ん?バルオキーの昔話?それが何か

 関係あるのか?」


「ダルニスもノマルも小さい頃

 きいたことないか??じいちゃんが

 バルオキーの昔話をしてくれたのを

 少し思い出したんだ、ほら・・・

 陽(よう)なき光(こう)なき場所

 ・・・とか出てくるあの昔話だよ!」


 「あーっ!懐かしいな!」

 「懐かしいですね!」

 とダルニスとノマルが頷く


「聞いたことあるなぁ、と思ってたんだが

 それは・・・」


続けてアルドは回想しながら語る(オタマンダー達にも言ったのだけど

この昔話は知らなかったんだよなぁとアルドはふと思う)


「陽(よう)なき光(こう)なき場所…

 太陽はなく、光の届かない場所

 だから

 太陽ではなく月!光と表裏一体は影

 月影の森の事を指しているんだ!」


「なるほど!それで昔話か!」

「なるほどです!」


「そうなんだよ、ダルニス!ノマル!

 何だか懐かしいだろ?

 そして昔話の中には神隠しの話もあったし

 もしかしたら四大幻霊も

 メイもそこにいるかもしれない」


「それなら合点がいくな!しかし昔話とは

 思ってもみなかったな!

 四大幻霊という神が隠れる場所であり、

 尚且つ人の子が隠されるという場所、

 という事か・・・」


「それで月影の森なんですね!!

 何だか不思議な感覚ですね。

 まさか昔話が鍵となるなんて

 不謹慎かもしれませんが

 ちょっとドキドキしてきました!」


道中での昔話の話をしていたら月影の森に到着した三人

空をみて何かを思い出したかのようにアルドは走り始める

ダルニス、ノマルも走る


「だとしたら隠されている、いや

 隠れている場所はあそこだ!!

 昔話では確かあの場所に、

 もうそろそろのはずだ・・・だから急ごう!」


月が映る泉に

アルド達は到着する確か、昔話では


「ある季節、月が真ん中に映る時に扉は開かれる」


月が泉の中央に映るその時、

時空の次元の穴が現れて開かれる



開く穴の出現して扉は開かれるというくだりを

目の当たりにする3人

本当に出てきた!

「よし!行くぞ!」

アルド、ダルニス、ノマルは互いの意志の確認をし一緒に穴に飛び込む

3人が飛び込んだ後、その閉じかけた穴に

怪しい四つの光も飛び込むのであった・・・


その穴から降り立つ3人

そこは何ら変わらない月影の森の風景が

広がっていた

周囲をみまわすアルド

あまりに変わらない月影の森に

 

「ここは月影の森なのか?

 たしかに時空の穴に飛び込んだはず

 こんなところで迷ってる場合じゃない

 四大幻霊とメイを探さなくては」


「そうだな、ここでこうしていても仕方がない

 アルド、ノマル手分けして探すぞ!」


月影の森の捜索を始める3人

ノマルが何かに気づいて

草むらが動いているので、近づいてみると

 

「こ、これは!?ね、猫?」

 よく姿を確認したがやはり猫がいる。しかし、


「ダルニスさーん、アルド先輩ー!

 こっちに見たことない変な猫がいます

 ちょっと見てみてください」


声の方に駆け寄る2人

ダルニスは近くにいるが

アルドはまだもう少し遠くにいる


「ノマルどうした?何か発見したのか?

 ん…猫?

 猫がどうしてこんなところに」


するとダルニスも見たことない猫に


「変わった猫だな。首元に文様??」


「何かはわかりません、でも首元が赤い猫なんて

 見た事がありませんね。」


「アルド!こっちに来てくれ!ノマルが猫を

 見つけたんだが・・・」


アルドはダルニスの声を聞いてやってきた


「どうしたんだ??

 二人とも、その猫・・・ん?いや待ってくれ

 その猫、ものすごい量のエレメンタルを

 持っているぞ」


アルドを見るや否や急に逃げ出す猫

森の奥へと消えていく

その速度は凄まじいものだった

普通の猫とはまるで違うと感じたアルドは


 「ダルニス!ノマル

  あの猫を追いかけよう!

  赤い文様の猫が鍵だと思うんだ

  急いで追いかけよう!」


 「了解した!」

 

 「わかりました!アルド先輩!」


アルド達はその猫を追いかけた

月影の森を縦横無尽に猫は駆け抜けていく

凄まじいスピードなので見えたところ、見えたところを

人が通れる道で追いかけて来るとやがて

森の中の大きな野原にたどり着いた



そこには首に文様をつけた猫が4匹いる

それぞれ首の文様は赤、青、緑、黄の

見たこともない変わった猫達だった

アルドは猫達を見て立ち尽くす


「あの猫の仲間なのか??

 しかしなんてエレメンタルの量なんだ…

 とても猫とは思えない存在だ」


その時だった!

森の木々の方からガサガサ聞こえてくる

そして声がした

 

 「あー猫ちゃん達やっと見つけたぁ!!

  かくれんぼしようとか言ってるくせに

  もぉ全然これ鬼ごっこじゃん!

  いくらなんでもアタシ怒っちゃうよ~」


その声は聞き覚えのある声だった


 「あれ~?アルドにダルニスにノマルじゃん!

  こんなところであんたたち何やってんのよ?」


あっけらかんとした声で

あまりに普通に登場したのは

必死に探してたメイだった!


見つけてほっとするが

あまりにあっけらかんとしているメイに

驚きを隠せない3人

 

「メイ!!よかった、無事なのか?」


「はぁ? 何言ってるのよアルド!

 アタシはこの通りピンピンしてるわよ!

 ・・・っていうか、何みんな血相変えてんの?」


ノマル安堵の表情で


「良かったー!

 と、とにかく無事に見つかって

 良かったじゃないですか!

 みんなでバルオキーに帰りましょう」


「そうだな、そうするか」


ダルニスがそう言った直後の事だった

辺りに不穏な空気が漂ってきて

猫達の色とはまた違う禍々しい4つの光が

アルド達を襲ってきたのである


「いかん!アルド、ノマル

 メイと猫達を守るんだ」


その禍々しい4つの光は瞬く間に

魔物へと姿を変えていく

魔物の狙いはどうやら猫達のようだ

猫達に向かい襲いかかろうとする魔物

アルドは間一髪のところで

猫達への攻撃を防ぎ猫達を守った


「ダルニス、ノマルここはオレ達、警備隊で

 叩くぞ!」


「アルド!アタシも猫ちゃんのために一緒に

 戦うよ!」


「わかった!危険だと思ったらすぐ退くんだぞ!」


「わかってるって!ダルニス、ノマルもいくよー!!」

「よし!行くぞ!」

「はい!」


※ここからアルド、ダルニス、メイ、ノマルで戦闘に入ります

 敵は赤、青、緑、黄の魔物のイメ―ジです。


-戦闘終了-


何とか魔物を退ける事ができたアルド達


「もう大丈夫だ!」


しかし最後の足掻きで魔物が一撃を放ち

ダルニスが叫ぶ


「アルド危ない!!!」


「しまった!」


グッと力を入れて耐えるアルドだったが

一撃は届かなかった

ふと見ると赤い文様の猫がアルドの前に立ち

アルドを守ったのだ

赤い文様の猫が攻撃すると、炎に消えていく魔物


「何がどうなったんだ?」


そして赤い文様の猫が突然語りかけてきた


「我ら四大の力に吸い寄せられたらしい

 すまぬな、人の子よ」


喋る猫に驚くアルド目の前の猫を凝視しながら


「この力にこの口調、聞いたことあるぞ?

 猫だけど?

 えーっ、まさかとは思うがサラマンダー?

 なのか?」


「左様、よく分かったな人の子よ

 我はサラマンダー」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!サラマンダー

 ということは他の猫も・・・?

 全部で4匹いるってことはまさか四大幻霊⁉︎」


「その通りだ人の子よ」


「何だってこんなところにいるんだ?

 四大幻霊がいなくなってオタマンダー達は

 困惑していたぞ」


青い文様の猫が語りだす

 

 「哀しみを与えてしまいました

  なぜここにいるかというと」


 「その口調、オンディーヌか!?」


青い文様の猫は頷く


次は緑の文様の猫が語りだす


「生きた人間さんたちとダンスいえ

 遊びたかったのよ」  


 「こっちはシルフなのか!?」


緑の文様の猫も頷く


そして黄色の文様の猫が語りだす


 「その通りなのだ、小さき…大きな?

  いや小さき者よ」


 「ノームなのか!?今は俺の方が大きいけど

  元の姿は俺より大きいからな!」


と、アルドが少し笑うと黄色の文様の猫は頷き何処か横を向いた

赤い文様の猫、サラマンダーがゆっくりと語りだす


「聞くがよい 人の子よ

 我ら四大幻霊には

 人間界でいうストレスというものが

 溜まっているのだ」


「ス、ストレス⁉︎四大幻霊にもあるのか⁉︎

 初耳だ!」

まさかの言葉に驚くアルド


「依って我らはあのままの姿では

 驚かれてしまうのでな

 仮の姿、猫の姿となり

 ここへ来てメイという人の子と出会ったのだ

 

 そして聞くがよい!良いか人の子よ!

 我らも遊びたいのだ!

 かわいい人の子と戯れたいのだ!

 癒されたいのだ!!」


自信満々に語るサラマンダー

そして大きく頷く他の幻霊達


「そこまでハッキリ言われてしまうと

 オレも何も言えないな…」


ドーンといってのけたサラマンダーに呆けてしまうアルド


「え?猫ちゃん達って実はすごい存在なんだね!

 最初、猫ちゃん達が喋った時は

 すごいビックリしたんだけど

 すごく面白かったし楽しかったよ、アタシは」


満面の笑みで話すメイ

和やかな空気が流れる

そこにノマルが緊張しながら恐る恐る口を開き始める


「じゃ、じゃあバルオキーに伝わってる昔話は

 四大幻霊様の事・・・なのですか??

 神隠しとか、色とりどりの魔物の事とか」


「それは我らにはわからぬことだが、

 ストレスと言われるものが蓄積すると

 よく人の子と戯れたものよ

 良き時間を過ごすと心が洗われるというものだ


 しかしながら人の子よ

 別の次元でなければ困ったことに

 我らのエレメンタルに

 ありとあらゆる物が吸い寄せられる

 先程のようにな」


「な、なるほど

 それで魔物が襲ってきたんですね!?

 でもどうして月影の森なのでしょうか?」


「うむ、ここはとてもエネルギーに満ちているからだ

 もしや我らが顕現した事による影響かもしれぬが

 ここは我らにとってとても心地の良い場所なのだ

 昔からここと決めておるのだ」


「そうだったんですね、ありがとうございます」


深々と頭を下げるノマル

幻霊と話す機会などないものだから

未だに緊張しているようだ


「我らの気分も落ち着いたものよ

 人間界でいうリフレッシュとやらができたぞ・・・

 さて人の子よ我らは

 再び煉獄界へ」


「猫ちゃん達、アタシめっちゃ楽しかったよ!

 また遊ぼうね!

 今度はお菓子持ってきてあげるね~!」


「うむ、楽しみにしているぞ」


そう言うと、四大幻霊の猫達がまぶしく光輝く

光となって月影の森を去っていく

煉獄界へ戻ったのか?


気が付くと森の中の大きな野原ではなく

月影の森に戻ってきていた。

もう月が真ん中には映っていないあの泉だ。

昔話もお伽話ではなかったんだなと思うとともに

アルドはしみじみと


「メイも見つかったし

 四大幻霊も見つかったし

 理由はちょっと驚いたけれど本当に良かった

 後でオタマンダー達にも知らせないと」


そのアルドの後ろでダルニス、ノマル、

そしてメイの声が聞こえる


「・・・・・という訳なんだ」


「えーーーーーーーーーっ!?

 じゃあアタシ迷子になってたのぉ?!」


「そうなんですよ、バルオキーは

 なかなか大変な事になっていたんですから」


アルドもその輪の中に入っていく


「本当に大変だったんだぞ

 メイのお父さんもとても心配していたんだからな

 早く帰ってしっかり顔みせてやるんだぞ」


「え?でもそんなに時間経ってないでしょ?」

 

とあっけらかんと言うメイだが


「多分向こうの次元ではそんなに長く感じないも

 しれないけど、

 こっちでは・・・一日くらい経っていると思うぞ」


アルドの言った一言で目を丸くするメイ

時間が経過しすぎていて一瞬固まるメイであった

そしてよくわからないまま消化したのか、再び驚くメイ


「もう一回言うけど!」


「えーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 ウソでしょーーー!?

 そんなに経ってたなんて! 

 聞いてないよぉ!猫ちゃん達ぃぃ〜!」


信じられない様子のメイだったが、ふふっと

四人はそれぞれの顔をみて

大きく笑いあうのだった

そしてアルドが


「さぁバルオキーに帰ろう!」


「おう!」

「はい!」

「うん!」


やっと日常を取り戻し、和気藹々と仲良くバルオキーに帰っていく4人


月影の森にもいつもの平穏が訪れたのであった


























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