第12話 [食事]②


白いものが入った器からゆっくり手を遠ざけ、一番不安な何かの肉に手をつけることにした。


食べる前に何の肉なのか聞いておこう。ゴブリンの肉って言われたら多分僕は皿を投げる可能性があるぞ。


「これは肉?肉だとしたら何の肉?」

「ご馳走するときの肉。小型ワイバーン」

「ワイバーン……」


よし、ゴブリンじゃないのはわかった。


すーはーと深めの呼吸をしたあとに一口サイズになっている肉の中でも、一際小さい肉を恐る恐る口に入れる。


歯で噛んでみるとかなり筋っぽい。肉の繊維が一本一本わかるんじゃないかと思うくらい固くて、ちぎれる様子がこれっぽっちもない。


噛む度に肉から染み出てくる味はほのかに酸っぱく、火を通してるはずなのに生臭い。乳牛を焼いたときの乳臭さや、羊の独特な匂いのように元々肉についているものだと思う。


「人間、食べられないもの多い」


どうやら固い!生臭い!と顔に出ていたらしく、よだれを垂らしたトゥイーニーさんが果実と肉の器を奪っていった。隣にいたのはどうやら残り物狙いだったらしい。


口に肉が入ったままだから黙ってるけど、さりげなく虫の器を僕に寄せるんじゃない。


結局噛みきれなかった肉をごくんと飲み込んで飲み物を探すと、トゥイーニーさんが透明な液体が入ったコップを手渡してくれた。


「飲んでも大丈夫?」

「念のため無毒化してあるです」


ゆっくりコップに口をつけて傾けていく。味のないひんやりとした液体が喉を通るとほのかに爽やかな香りがした。


あー。喉が渇いたときに水分をとったあの体に染み渡る感じ、あの感じがする。


「ご飯終わったら案内するように言われてます。それ、どうします?」


肉と果実を一気に平らげたトゥイーニーさんは、虫の器を指差して言う。


「残すのは悪いし食べるよ」


食べられるものがどれだけあるのかわからないうちは食べられるものは食べておいたほうがいいと思う。


たとえそれが虫だとしても!

虫だとしても!!


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