第2話 [世界のおわり]②


「な!?なに!?」


始めに、空が白く染まったように光ったあと目がその真っ白い光と共に見えなくなり、そのまま視界を失った体がぐらりと尻餅をついたのがわかった。手のひらとお尻に地面と草の感触が伝わる。


次に耳を越えて脳にまで直接伝わるような轟音と、立ち上がることすらできない震動が僕を襲い、家畜のことや村のことを考える余裕すらなく『助けてほしい』という思い以外の思考を全て奪い去った。


「なんで……なにがっ……!」


目も耳も機能しなくなってパニックになった僕を容赦のない熱が襲う。


体がカッと燃え上がるように熱く痛く、助けの声を出そうにも口を開けば喉を焼いてしまうから、誰か助けてほしいという希望と終わらない痛みに頭を抱えて丸まった体勢のまま唸り声を出した。


「う゛……ぐっ……」


痛い!痛い!痛い!痛い!なにもかもが痛い!手足の感覚はすでに無いはずなのに、脳内が全てが痛いと訴えている!


なにも見えず、なにも聞こえない状態で熱さと痛みに僕が破壊されていく。


どんどん『熱い』より『痛い』が強くなり、僕はパニックでぐちゃぐちゃになった自分の頭を感覚のない腕で抱えて横向きに倒れた。


倒れた小さな衝撃で炭化していた瞼が落ちる。さっきまで真っ白に塗りつぶされていた世界は、歪んだ赤と黒で塗り直されていた。


「……っ?」


なにかわからない塵のようなものが真っ黒な空から降り注ぎ、森も村も家も人もなくなった地面は赤く燃え上がり、高温で焼いたあとの熱を帯びた炭があちこちに転がっている。


あれは……人?人に見えてしまうだけ?家はどこ?なにが起きてるのかわからない。あれ?世界ってこんな感じだったっけ?赤くて、黒くて、音がなくて。


視界の端に映る僕の頭を抱えている腕も同じような黒焦げた炭のようで。


――――バチッ


体がもう死ぬのだと悟ったのか不思議と痛みはなくなり、曖昧な意識が閉じていく途中で真っ黒な空に紫色の閃光が走った。紫のそれは、空に文字のようなものを走らせて、それは、光って。


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