03_2度目のプレゼント

 次の年にサンタさんに貰ったのは、レゴブロックでしたね。かなり大掛かりなセットで、部品の数と種類が沢山有って何でも作れるものでした。

実はその年は事前に、友達に聞いてサンタクロースのことを色々調べていました。どんな物が貰えるのか。なぜ貰えるのか。どうしたら自分の欲しい物を伝えることが出来るのか。

複数の友達から聞いたところによると、ただ願えばそれが貰えるとの話でしたので、それで自分の欲しい物を願ってみる事にしました。


その当時は缶詰が大好きだったのでそれをお願いしてみました。ええ、缶詰です。鮭とかミカンとか、そういうのです。普段ウチではあんまり食べませんでしたが、たまにお歳暮とかで頂く事も有り、とても嬉しかったんです。

そして、自分で自分が何をお願いしたのか忘れないように、それをノートにメモしておくことにしました。だって、あとになって振り返ってみて、忘れていたり思い違いをしたら嫌でしょう? それは人にはわからないように暗号で書きました。絵を組み合わせて描いて、後で自分だけがわかるようにしたんです。そして、そのノートは誰にも見られないように注意しました。


これは自分にとって重要な実験でした。そうやって、試してみようと思ったんです。

実験をするなんてそれは不敬だと思われるかもしれませんが、しかし子供の思いつくことですからね。その時の自分は子供でした。仮に自分がサンタクロースであったとしても、子どもたちにそういうテストをされたら喜んで、面白がって応じますよ。


 しかし、先程も言いましたが貰ったのは意外にもレゴブロックでした。

確かにレゴブロックも欲しいとは思っていたんです。保育園では、自由時間にはいつもレゴで遊んでいましたから。時たま自分でも傑作だと思うものが出来るのですが、でもすぐ壊さないといけないんです。残念に思っていました。家に持って帰りたいなぁと。


それで、その日大喜びして早速組み立てていたら、それを見た父親が「説明書通りに作らないのか? それだと説明書の完成品と形が違ってしまうのではないか?」と聞いてきました。それで私は、自分が作りたいものを自分の頭で考えて作っている、と答えると彼は随分喜んだのが印象に残っています。彼は昔から若干アナーキーな所があって、人が権威に逆らう事を喜ぶフシが有りました。年をとった今でも、政府のする事やしない事をいちいち批判していますよ。まあ、子供の頃から自分の身近である種の人間の典型的なサンプルを見られて、勉強にはなりました(笑)

ウチの家庭で一般的な年中行事を一切行わないのも、彼の思想を反映しての事でした。


ああそう言えば、父親もそのレゴブロックの出どころを、何の疑いもなくサンタクロースと述べていた事を思い出しました。今思うと、父とはその件で何の疑問も疑いもなく、当然のようにサンタさんからの贈り物という認識を示していましたね。それは当然の前提という感じで、全くスムーズにコミュニケーションが取れていました。彼はクリスマスを祝わない人なのに、今思うと不思議です。


 そうそう、それでサンタクロースにした願い事の方ですが、それが何とですね、家の食料戸棚を開けてみたら、いろいろな種類の缶詰が幾つかずつ入っていたんです。

聞いた所それは両親が買ってきたものだったのですが、それが、普段は寄らないスーパーにたまたま行ったらたまたま値引き品として売られていて、そしてふと私がそれを好きだということを思い出したので買ってきたと言うんですよ。


偶然にしては凄いじゃないですか。それでその時つくづく思ったのは、誰も見ていなくても、誰も気づかなくても、サンタさんはちゃんと見てくれているのだなと言うことでした。自分が書いたノートを見返してつくづく思いました。


 それにしても興味深いのは、その時の直接のプレゼントはレゴブロックだった事です。

その前は本でした。

食べ物は食べ終わってしまうと無くなりますし、子供が欲しがりがちなキャラクターグッズみたいな物も、どんなに夢中になっていても時期が来るときっと飽きてしまいます。しかし、絵本とか、それこそレゴブロックといったプレゼントは、貰う人の一生を益するものです。やはりこういうものこそ、本当の意味でのギフトだと思うんですよ。


実を言うと自分がITの仕事につくことが出来たのも、子供の頃レゴに夢中になっていたのが遠因ではないかと考えています。レゴという遊びはプログラミングに通づる面白さが有るんですよ。本当に良いものを、良い時期に頂いたなと感じています。

ああ。ええと、もちろん缶詰も喜んで頂きましたよ。


サンタクロースからのプレゼントはそれが最後でした。

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