第30話過去の傷

村へ戻り病院


スレイ「とりあえず僕もリサリーも大丈夫そうだよ」


ディア「良かったよ」


ガットア「ウォルデも大丈夫だ」


ウォルデ「大丈夫じゃねえよ!骨折れたんだぞ!あの女なんて力だ!」


リサリー「治療終わってミトアさんが看ておられるみたいですね」


ウォルデ「あいつは本当変わってるよ」


ディア「そうだな」


スレイ「昔なんかあったのかな…」


一方病室では


ミトア「女性を殴るなんて駄目ですよ」


アグニ「そいつが向かって来るからだろ!」


ミトア「それはそうかもしれないですが…」二人が話しているとノステアが目を覚ます


ノステア「…なんのつもり」


ミトア「いや〜なんのつもりとかでは無いんですが…」


ノステア「…頭がおかしいのかしら」


ボロ「そうだな」アグニ「こいつは頭がおかしい」


ミトア「なんでですか!」


ノステア「善意で私を助けても、その分また人を傷つけるわ、あなたが間接的に傷付けてる様なものよ」


ミトア「そう言われると何とも言えないんですが…」俯くミトア


ノステア「殺すなら今よ、でなければ明日も明後日も仕事を遂行するわ」


ミトア「そんな仕事辞めて下さい!」


ノステア「辞めてどうするの?!そもそも何故止めるの?!私の人生でしょ!あなたに関係ないでしょ!」


ミトア「あなたがその仕事を本心から望んではいない様に見えるからです!」


ノステア「嫌々やっているとして、あなたにそれを止める権利があるの?!」


ミトア「ありません!」


ノステア「ふざけんな!」


ミトア「ふざけてません!仕事でお金の為なら私が一生懸命ノステアさんの分まで働きます!」


ノステア「じゃあ代わりに人殺ししてよ!」


ミトア「別の仕事もあります!」


ウォルデ「ど!どうしたんだ?!」怒号が聞こえて五人が入って来る 


ノステア「そんな事で私が生き方を変えられるわけ無いでしょう!気持ち悪い蛾人間や虫なんて呼ばれて幼少期から蔑まれ虐げられて来た私の何が、あなたにわかる!」


ミトア「全部はわかりませんけど私も幼少期の辛い日々くらいなら分かります!」


ノステア「適当な話なら聞きたくないわ…!」


ミトア「…」拳を握り黙るミトア


ミトア「…私の能力は魔力を流した物を増やす事が出来ます…」


ノステア「?」唐突に何かを言い出したミトアに眉を顰める


ミトア「例えば…」金でできた三cm程の百万G硬貨を取り出す 


ウォルデ「スゲェ…百万G硬貨だぞ」


ディア「流石だな」


スレイ「取引してる魔物が段違いだからね」


ノステア「自慢…?」


ミトア「ち、違いますよ…なんとなく取り出したらこれだったんです…」ミトアが硬貨に魔力を流すとゆっくり大きくなり、十五cm程になる


ノステア「大きくなった…?」


スレイ「なんて能力だ…」驚愕し目を見開くスレイ


ウォルデ「凄いのか?」


ガットア「国どころか世界が欲しがる垂涎の能力だ」


リサリー「す、凄い…」


ミトア「幼い頃は虐げられ強制労働の日々です…」


ノステア「その能力を私に見せて情報をばら撒けばあなたの人生は終わりよ」


ミトア「ノステアさんはそんな事しません、優しいけど自分を守る為に周りを攻撃しているだけなので」


ノステア「適当言ったってここを出れば自由よ」


ウォルデ「逃がす訳ねえだろ」


スレイ「僕らじゃ怪我してる彼女にも敵わないと思うけど」


ウォルデ「…」ノステアを見たまま沈黙するウォルデ


ウォルデ「俺じゃねえよ、ですよねボロ先生」


ボロ「知らん攻撃して来たから応戦したまでだ」


ウォルデ「そんな!」


ミトア「言いふらすならそれでも構いませんよ」


ノステア「くだらないわね…もう一人はどうしたのかしら」


ミトア「もう一人?」


ノステア「ハードよ」


六人「あ…忘れてた…」


ミトア「ノステアさんも私と一緒に世界を旅しませんか!」


ノステア「嫌よ」


ミトア「私は自分の家を探してるんです!」


ノステア「耳ついてるの」


ミトア「まずは色々な街を見てみようかと思いまして!」


ノステア「行かないわよ」


ミトア「次の街はカラントゥアルです!」


ノステア「嫌だってだ言ってるでしょ」


スレイ「ミトア危険だよ」


ウォルデ「お前何考えてんだ?」


ディア「あまり勧められないな」


ミトア「でも皆さんも最初はアグニさんやボロさんを危険だと思ったでしょう」


ウォルデ「うーん…まあ」


リサリー「それとこれとは別な気がしますが…」


ガットア「…」


ミトア「大丈夫です!」


ノステア「捕らえないなら組織に帰るわ」


ミトア「駄目です!」


ノステア「何故あなたが指図するの!」


ミトア「私に助けられた命なので私に恩返ししてからです」


ノステア「あなたが勝手にやった事でしょ!」


アグニ「暇だな」


ミトア「ノステアさんが治ったら一緒に出発しますよ、なので皆さん勝手で悪いのですがお先に行っていただけませんか?」


リサリー「えっ!そんな…」


ディア「どうしても助けるのか?」


ミトア「はい!」


ノステア「勝手にすればいいわ、怪我が治れば戻るから」


ガットア「俺は一緒に残る」


ウォルデ「え?!なんでだよ!」


ディア「ガットアが言うならしょうがないアタイも残ろう」


スレイ「心配だし僕らも残るよ」


ミトア「いいんですか?!」


アグニ「暇だ遊んでくる」アグニが窓から飛んで行く


ウォルデ「なんでだよー!」


ミトア「じゃあ怪我治るまで待ってますね!」


ノステア「フッフッフ…馬鹿ね、あの魔人が居なくなった今、私を止められる者なんて居ないのに…!」ノステアが羽を広げ縞模様が赤から赤黒く変色する

ウォルデ「ヤ!ヤベェ!ほら見ろ!」


ミトア「ノステアさんの羽って綺麗ですよね」羽を触ろうと試みるミトア


ノステア「さ、触るな!」羽をバッと引っ込め、羽が赤黒い色から赤に変わる 


ミトア「なんでですか?」


スレイ「赤黒く変色すると毒性が強くなるからだよ」


ウォルデ「…俺らはお邪魔になりそうだし外、出とくか」


ガットア「そうだな」


リサリー「そうですね」五人が外へ出る 


ミトア「ノステアさんは何処出身なんですか?」


ノステア「あんたなんで残ってるのよ!」


ミトア「やっぱりこの辺りの方なんですかね〜」


ノステア「聞いてんの!」


ミトア「私出身地分からないんですよね〜」


ノステア「聞いてないわよ!」


ミトア「ちなみに私の名前はミトアです」


ノステア「だから!聞いてないって!」

しばらくして日が暮れてくる 


ミトア「ノステアさんは今日なにが食べたいですか?」


ノステア「ハァ…もうなんでもいいわよ…」


ノステア(この女ずっと居るんだけど…怪我人なんだから休ませてよ!延々なんか話してるし!本当に疲れたわ!)


ミトア「それは一緒に食べてくれるという事ですね」


ノステア「何言ってんのイラナイ」


ミトア「怪我の治り早いですね〜…一日でここまで…」怪我を見ながら呟くミトア 


ノステア「もうわかった!本当に大丈夫だから…!外の空気でも吸ってくれば?!」


ミトア「一緒に外、行きたいんですですか?」


ノステア「あんたの耳大丈夫?!」


ミトア「あんたじゃなくてミトアです!」


ノステア「わかったから外行きなさいよ!」


ミトア「名前を呼んでくれたら動きます!」


ノステア「あんた本当に面倒臭いわよ!いいからどっか行って!」


ミトア「この羽って触られるとどんな感じなんですか?」


ノステア「わかった!本当もう何時間もあなたの話聞いてるのよ…頭が可笑しくなるわ…ミトアお願いだからちょっとだけ一人にして…」


ミトア「わかりましたノステアさん!そのかわりちょっとだけ羽触ってもいいですか?」


ノステア「もう…好きにすれば…」


ミトア「凄くしなやかで柔らかいし綺麗ですね、とても美しいです」羽を撫でたり触ってみるミトア


ノステア「あっそ…」ミトア「ディアさんやウォルデさんに攻撃された時、防いでいたのに柔らかいんですね、どうしてですか?」


ノステア「色を変えると毒性と共に硬度も飛躍的に上がるのよ」


ミトア「そうなんですね!ウォルデさんの攻撃で一切、傷つかなかったこの腕もですか?」腕を触りながら問う 


ノステア「…ええ、そうよ」


ミトア「いい触り心地ですね〜…」


ノステア「いいから外へ行きなさいよ!わかったって言ってからいつまで居るの!」


アグニ「おい飯」窓から入って来たアグニが声をかける


ボロ「美味な物を食わせろ」


ノステア「ほら来たわよ」


ミトア「あ、もう外暗いですね」


ウォルデ「おーい、そろそろ晩飯食おうぜ」


ミトア「ノステアさんも行きましょう!」


ノステア「怪我してるのに行けるわけ無いでしょ」


ミトア「では寝床ごと移動しますか…」


ガットア「運ぶか?」


ミトア「お願いします!」頭を下げるミトア


ウォルデ「怒られるぞ…」


ガットア「俺が運ぼう」


ノステア「け!結構よ!自分で歩くわ!」


ミトア「いんですよ無理しなくて」


ノステア(羽が治ったら速攻飛んで逃げてやるわ!)九人で昼の焼肉屋へ 


アグニ「早くくれー!」

ボロ「腹と背がくっつくぞー!」

ウォルデ「追加の分を早くー!」

リサリー「ボロさん腹と背あるのでしょうか…」

スレイ「無さそうだけど…」

女性店員「お待たせしましたー!」

アグニ「来たー!」

ボロ「焼くのだ!」

ガットア「もっと慎重に…!」

ウォルデ「馬鹿そんなチマチマ焼いてたらあの二人が全部食っちまうだろうが!」

リサリー「イヤー!タレが私の服にー!」

ミトア「アグボロさん!お二人でそんな独占しないで下さい!」

ディア「な!アタイが育てた肉だろう!」

ウォルデ「早い物勝ちだよーん」

ガットア「その肉はまだ!」

スレイ「火力強すぎない?!」

リサリー「イヤー!今度はお肉が顔に飛んできたー!」

アグニ「俺の肉だぞ!」

ボロ「儂のだ!」

アグニ「テメェこのやろー!」

ボロ「文句あるかー!」

ウォルデ「うまっ!」

アグニ「あー!てめー!俺のー!」

ミトア「喧嘩なんかしてるからですよ、早い者勝ちです…パクッ美味しい!」

アグニ「あー!また取りやがったぁ!」

スレイ「ちょっと暴れないで!」

ノステア「な、なんなのこの連中…」

ミトア「ノステアさんもっと食べて下さいよ」

ノステア「結構食べたわよ…あなたが勧めてくるから…」

ミトア「それは良かったです!」

九人で店を出る


ミトア「私達は宿へ行きますがノステアさん病室に一人大丈夫ですか?」


ウォルデ「絶対大丈夫だろ…」


ノステア「大丈夫よ…」


ミトア「怖くないですか?」


ディア「子どもか」


ノステア「いいから大丈夫よ…!」


ミトア「私…ノステアさんと付き添います」


ノステア「本当に!ほんとーーに!大丈夫よ!」

ノステア(一晩中、隣で話聞かされたら堪ったもんじゃないわ!それに今日中には羽も治りそうだし…)


ミトア「そうですね、ではまた明日!明日ですね!」


ギルドで報酬を受け取り、作業場で代金を貰い、それぞれが宿へ戻り就寝する

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る