第2話白い竜の唐揚げ

就寝し夜が明け朝が来る 

ミトア(いよいよ!ここまで!今日の夜になれば夢の脱出〜)チョコレートを食べたせいか、気持ちのせいか足取り軽く山を越え、魔物に出会しひた歩く 

アグニ「そろそろ飯だなー」

ミトア「そうですね!フンフンフンフー」鼻歌歌い上機嫌なミトア 

アグニ「何?!マジか!すぐ行くぞ!」アグニが突如大きな声を出す

ミトア「ビ!ビックリした〜、なんですか急に」驚くミトア

アグニ「ちょっと待ってろクッソウマいやつを獲ってくる」意気込むアグニ

ミトア「クッソウマいやつ?」理解が及ばないミトア

アグニ「待ってろ」アグニが飛んで行き、しばらく待つ 

ミトア「遅いな〜…何してんだろ」待っているがアグニが三十分近く帰ってこない 

ミトア「はっ!今のうちに町まで逃げれば!」

アグニ「獲ってきたぞ」アグニが飛んで帰ってくる 

ミトア(私のバカバカバカ!)逃げなかった自分を責め、自分の頭を叩くミトア 

アグニ「何してんだあいつ…?」アグニが自分の頭を叩いているミトアを見て疑問に思う

アグニ「へぇ…そうなのかあれで治してんのか、人間は変わった事すんな」

ミトア「はぁ…とりあえずご飯の用意を…」立ち直りミトアが獲って来た獲物を見ると、十四mの白い羽衣の様な物を纏った白い竜が横たわっている 

ミトア(ハ…ハクリンリュウ…!成層圏で生きていると言われる伝説のドラゴン!これ鱗一枚いくら?!素材すら降ってきた物が存在するだけなのに獲って来た?!)驚愕するミトア

アグニ「おい!早くしろ!こいつのウマさはもうクソだぞ!」作業を始めないミトアを急かす

ミトア「え…いや…でも私これの捌き方知らないんですけど…」見た事も無い生物の処理に困るミトア

アグニ「はあ?!なんで知らねんだ知っとけ!お前の仕事だろ!」怒鳴るアグニ

ミトア(え〜?!そんな理不尽な…)

アグニ「じゃあいいや面倒臭えし適当に」無造作に翼を毟ろうとするアグニ

ミトア「わぁ〜!待ってください!何考えてるんですか!」急いで止めるミトア

アグニ「なんだお前」アグニが止めるミトアに顔を顰める

ミトア「どうせなら一番美味しく食べたいと思いませんか?」

アグニ「出来んのか?」期待するアグニ

ミトア「私の今までの知識を駆使してやってみます、ただ鱗や外殻が硬すぎるのでアグニさんも手伝ってください」

アグニ「ウマいモンか…う〜ん…やるか…」しばらく考え、渋々手伝うアグニ

ミトア(一枚一枚鱗の質感が違う…この羽衣下手な力の入れ方をすると切り口から周りが腐る、なんて繊細なんだろう…皮と肉の間をうまく切り分けないと肉の断面が腐っていく…)試行錯誤の末、調理し最後にアグニが見ていない間に何故か量が増え

ミトア「で、できた…!」誰も食べたことないであろう料理が完成する

アグニ「ウマー!やばいなこれ!」アグニが完成した瞬間に手をつける

ミトア「もうちょっと見た目を楽しみましょうよ…」アグニの行動に呆れて呟くミトア

ミトア(骨の出汁で作った羽衣のスープ、柔らかい鱗揚げ、竜舌の赤ネギ岩塩焼き、翼の白い唐揚げ、肝の醤油焼き)

ミトア「ああ、美味しい…一口一口が至福…」最高の口福を味わうミトア

アグニ「おい!ふざけんなお前これは俺のだ!お前は一個多く食っただろうが!はあ?!ふざけんな!」上腕に生えた枝と唐揚げの取り合いをするアグニ

ミトア(この人何やってんだろ…自分の腕に生えてる枝と最後の唐揚げ取り合いしてる…あ、枝が取った)食事しながらその様子を見るミトア

アグニ「あー!俺のー!ぶっ殺す!」アグニが唐揚げを上腕の枝に食べられ激怒する、暗くなるまで腕の枝と喧嘩した後に就寝する

ミトア(フッフッフ、ついにこの時が来た!荷物はもう、まとめてあるし〜、さて行くとしますか…)ミトアが忍び足で町に向かおうとする、不意にアグニの顔を見て足が止まり、頭を振って町へ向かい日が明ける前には町に着き宿で就寝する。

日が上り朝になりそして昼 ミトア「うあ〜っよく寝た〜」朝の支度をして町へ繰り出す 

ミトア「これがパラズの町か〜!美味しそうな匂い!ここ入ってみよう!」明るくなった町は土の上に直接木造の店が建っている。匂いにつられて店へ入るミトア

女性定員「こんにちわ、こちらどうぞー」出迎え案内する女性店員

ミトア「ありがとうございます、これなんて読むんですか?」席に座り初めて見た品名を尋ねる

女性定員「これは蒲焼丼、リチっていう脂の乗った白身魚をタレにつけて炭火で焼いて米の上に乗せて食べるんです」

ミトア「じゃあこれでお願いします」

女性定員「焼き上がるまでお待ちくださいねー」注文を聞き厨房に入って料理人に注文を伝えに行く

女性店員「おまたせしました〜」三十分ほど本を読んで待っていると大きめの椀に蓋が乗って登場する

ミトア「わ〜、いただきま〜す」蓋を上げると水蒸気と共に甘く香ばしい匂いが溢れ出る

ミトア「では一口目」箸に白米と蒲焼を乗せ一口目を頬張る

ミトア(美味しー!コクのある脂にこの甘いタレが絡み旨味を増長している!この魚だけなら重いけどそれを下の米が中和してる!美味しい!…アグニさんも今頃何か食べてるのかな…そんな話に聞くほど悪い人じゃなかったかな…?もう忘れよう!食べて忘れよう!)丼をかき込むミトア

食事を終えて店を出る、店を出ると道の向こうから紫色の趣味の悪い竜車に乗った一行がやってくる

ミトア(うわっ!毒蜘蛛の一団だ、活動の仕方が酷くてギルドから目をつけられてるんだっけ、ささっと退散しよ)不良素行の毒蜘蛛の竜車が道の交差に差し掛かる

老婆「ヒァッ!」老婆が運転していた小型の竜車と毒蜘蛛の竜車がぶつかりそうになる

引いている竜「グァッ!」毒蜘蛛の竜車を引いている竜がのけぞる

毒蜘蛛団員「おい!ババアてめえなにしてんだ!」団員三人が降りてきて老婆を恫喝する

老婆「こ、こっちの道が優」戸惑い自分が優先道路を走っている事を説明しようとする

毒蜘蛛団員「ああ?!聞こえねえな!」老婆を脅し言葉を遮る団員

毒蜘蛛団員「あーあ、今ので怪我したなー治療費が要るな」無傷で言いがかりをつける

老婆「怪我なんてそんな…」

毒蜘蛛団員「おい、ババア俺らの竜車に乗って楽しいとこ行くか竜車の修理代と治療費よこすか二つに一つ選べ」無茶な提案をして反応を楽しむ団員

ミトア(国の監視が少ない町だからって好き勝手して…!)毒蜘蛛団員の行動に憤りを覚える

老婆「そ、そんな…お金なんて!」要求に戸惑う老婆

毒蜘蛛団員「じゃあ!乗ってもらおうか!」団員が老婆の胸ぐらをガッと掴む

ミトア「わわ私が行きます!」老婆と団員の間にミトアが割って入る

毒蜘蛛団員「なんだお前、頭おかしいのか?」訝しげな顔をする団員

ミトア「よ、弱い人相手にそんな事、い、ししてる人よりマシです!」強がるミトア

毒蜘蛛団員「じゃあ、マシなお前がこいよ」団員に掴まれ竜車に乗ると団員は五人おり、仕切りで外が見えない竜車に乗せられどこかへ連れて行かれる 

毒蜘蛛団員「降りろ」扉を開けミトアを突き飛ばす

ミトア「ッ!」団員に突き飛ばされ降りると大きな洞窟の中に居た

毒蜘蛛団員「ここにはよ、雑魚いけど血肉が好きな虫の魔物がウヨウヨしてんのよ、そんな場所で傷だらけの動けない人間がいたらどうなるだろうなぁ?」不気味に笑みを浮かべる団員

ミトア「ヒィッ!」恐怖で顔が引き攣る

毒蜘蛛団員「こいつ全然、金持ってねえよハズレだわ」荷物を漁る団員が言う

毒蜘蛛団員「いいだろ別にその分面白そうなもん見れそうだしな」

毒蜘蛛団員「好きなだけ殴れるしなぁ!」毒蜘蛛団員の笑い声が洞窟にこだまする

ミトア「…ッ!」恐怖でうまく声が出ない

毒蜘蛛団員「じゃあ!俺からか!」毒蜘蛛団員が木の棒を振りかぶる

ミトア「うっ!…がっ!」木の棒で殴打され痛い様な熱い様な感覚が当たった場所に残留する

毒蜘蛛団員「オラオラ!」

毒蜘蛛団員「おい、やりすぎだって!次俺だろー!」

ミトア(あ〜子供頃からよく殴れるな〜私…)殴られ意識が朦朧としてきて痛みを感じず自分に起きていることが遠いことの様に思える

毒蜘蛛団員「あ〜駄目だもう動かねえわ」

毒蜘蛛団員「はやっ!もう終わりかよ」

毒蜘蛛団員「つまんね」

毒蜘蛛団員「あとは虫の餌だな」毒蜘蛛団員の足音が遠ざかると共にカサカサという音が近づいてブシュッという音と共に足に痛みが走りそのまま気絶する

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