地球と異惑星が混ざった星の旅の飯はウマい

@you_Hey

第1話白い鰐の肉とチョコレート

地球とベベルが混ざる約二千年前


赤い魔人「あー…面倒臭えなー…向こうまで行かねえと、居ねえのかよ」二m以上ある片刃の剣を持った約百七十五cmの赤い魔人が目付き悪く遠方を睨む 

赤い魔人「ウマいモンの為、行くかー…」

光る剣の男「暴虐の赤い魔人よ!ここで会ったが百年目!貴様に屠られた者の恨みと共に仇を討つ!」光る剣を携え、赤い鎧を着た人間のノンヒューマンが言う

赤い魔人「あぁ?」声のする方を面倒臭さそうに横を見ると、

光る剣を持つ男と、

大きな槌を構えた大柄な男、

外套を羽織った女性、

聖職の服を着た女性.

四人のノンヒューマン各々が武器を構えている

赤い魔人「あんだお前ら、俺は忙しんだよ」そっぽを向いて遠方を見直す

外套を羽織った女性「正々堂々、やる必要もないらね!」手を前に出すと三十cm程の火の玉が十個、赤い魔人へ飛んでいく

聖職服の女性「動きを止めます!」

赤い魔人「そんなもんで何すんだよ」火を剣を持っていない方の手で払う

赤い魔人「あ?」払った瞬間に火が氷に変わり、腕が一瞬、固定される

光る剣の男「はぁー!」光る剣を振り被ると、光る剣が激しく光を放出し長くなる

大槌の男「いくぞぉー!」筋肉が隆起した男が槌を振り被る

二人の一撃が赤い魔人に直撃する

赤い魔人「お前ら、邪魔すんのか?」二人の攻撃が直撃するが無傷の赤い魔人

光る剣の男「なっ…!」

大槌の男「当たったはず!」

戸惑い後ずさる男二人

外套を羽織った女性「無傷だなんて…!」

聖職服の女性「か、勝ち目が…」

絶望する二人の女性

赤い魔人「雑魚がウゼェな」そう言うと空気中をバクッと食べる様な動作をした瞬間にバグンという音が鳴り、大気の無くなった場所に風が勢いよく吹き込む

光る剣の男「な、なんだ!この風は!」

大槌の男「退いた方がいいぞ!」

アグニ「ガァッ!」飲み込んだ空気を解き放ち、四人にぶつける

赤い魔人「雑魚が」四人が地面に転がり、微動だにしない

赤い魔人「行くか」歩き出そうとする赤い魔人

赤い魔人「…ッ!ッテェナ〜…」赤い魔人の肩が鋭く細い光で微かに切れすぐさま治る、赤い魔人が見た方に、光る剣を持った男が満身創痍の状態で立っている

光る剣の男「お前を…倒…す…」そう言って倒れる光る剣の男

赤い魔人「しつけぇな!邪魔すんな!」応答のない四人に怒鳴る赤い魔人

赤い魔人「面倒臭えな雑魚の分際で!」そう言って当初見ていた方向へ走り出す赤い魔人、バグンッ!ボッ!という音がする度に、走っている赤い魔人の位置が、瞬間移動の様に少しずつ飛び目的地へ近づく


所かわり、別の大陸では

浮遊する生命体「うーむ…あの辺りか…」紫色や青や黒などが混ざり合い揺らめき、太い紐がワラワラと球状に、より集まった様な形をした、三百m近い大きさの生命体が遠方を見つめている

大砲の男「おい!飛来物!」そう言って右の肩甲骨下から、生え伸びた大砲を長い右手で支え、黒弾を打つ、十m以上の身長で灰色の肌をしている

浮遊する生命体「貴様か…儂は今、遊んでおる場合ではない」直撃するが平然としている

大砲の男「世界征服の為の第一歩は飛来物だ!」そう言い大砲から砲撃を放つと、砲身から黒く禍々しい力が飛び出し、浮遊している生命体へ飛んでいく

大砲の男「オォォォッ!」生命体に禍々しい力を浴びせ続ける大砲の男

大砲の男「どうだ!」放つのをやめ対象を見る

浮遊する生命体「夫婦おっても小虫程度の貴様らでは、傷一つ付けられんわ!」そう言うと同時に直径十mの光の玉を生成し大砲の男に放つ

大砲の男「グァァァ!」避けようとしたが、衝撃に吹き飛ばされ意気消沈する

浮遊する生命体「儂の美味なる食を遮るでないわ!」そう言うと目的地へ風を切り、風を巻き起こし飛んでいく 

浮遊する生命体「おったぞ!あれか!」

赤い魔人「あいつか!食ってやるよ!」同じ場所に同時期に着いた赤い魔人と浮遊する生命体が同じ場所を見る、見た先に白い長髪の人の様な物が地上十五辺りに浮いている

赤い魔人「食ってやるぞー!」駆け出しながらバグンッ!ボッ!という音と共に位置をずらし白い髪の人物にどんどん近づく

浮遊する生命体「食ろうてやるわー!」そう言い白い髪の人物へ飛んでいく

白い髪の人物「何者だ!貴様らは!」

アグニ「食わせろー!」剣を振り、白い長髪の人物に傷を負わせる

白い髪の人物「ぐぁあっ!っなんだ…!これは!生命力がっ!」

浮遊する生命体「儂の腹に収まらぬかー!」そう言い巨大な手を生やし白い髪の人物を殴り飛ばす

白い髪の人物「がっ!…ガハッ!」地面に殴り落とされ立ち上がろうとする白い髪の人物

白い髪の人物「な、なんだこれは!我の魔力と生命力が…?!このままでは…!くっ…!かくなる上は…ただ時間が…!」

赤い魔人「あんだお前?」

浮遊する生命体を見上げて睨む赤い魔人

浮遊する生命体「貴様こそなんだ!」

赤い魔人を見下ろす生命体

白い髪の人物「なんだ…?今なら…!」何かを始める

白い髪の人物「我はここで朽ち果てる訳にはいかんのだ…!」

赤い魔人「テメェ俺の飯の邪魔してんじゃねえぞ!俺が食うんだ!」

浮遊する生命体「何者だ貴様こそ!儂の飯を邪魔するでないわ!」

赤い魔人「あんだテメェー!やんのかっ!」

浮遊する生命体「なんじゃー!貴様の様なチッコイのが儂に楯突くかー!」

赤い魔人と生命体がいがみ合う

白い髪の人物(もう少しだ…!)

浮遊する生命体「ん?何をする気だ…?」白い髪の人物に目線を向ける

赤い魔人「あ?」それに釣られて赤い魔人も白い髪の人物を見る

浮遊する生命体「何をする気だー!」白い髪の人物へ飛んでいく浮遊する生命体

赤い魔人「俺の飯、取るんじゃねぇー!」赤い魔人も後を追う

白い髪の人物「間に合った様だな…」白い髪の人物が一瞬にして消える

赤い魔人「はぁーっ?!」

浮遊する生命体「なーっ?!…なんだと!どこにも居らぬ!」

赤い魔人「俺のウマい飯が…!」

浮遊する生命体「儂の美味なる飯が…!」

赤い魔人「テメェのせいだぞ!」

浮遊する生命体「何をー!貴様が邪魔をするからであろう!」

赤い魔人「ブッコロス…!」

浮遊する生命体「塵にしてやろう」

その後、二人の戦いが一月続き世界が荒れ

お互いが、倒れた頃…

黒い鎧の男「暴虐の魔人と星食いの両方を回収出来るとはな…都合が良い…」動かない赤い魔人と生命体を見て不敵な笑みを浮かべる黒い鎧の男

黒い鎧の男「我らの領地に封印しておけ!なんなりと使えるだろう!」

鎧の兵「ハッ!」キビキビと動く百人近い兵

黒い鎧の男(事が漏れぬよう、この件に関わった兵は全て斬首にするとしよう…)

黒い鎧の兵「クックック…」


二千年の月日が経ち、ある国のある街


赤い髪を束ねた、眼鏡の女性

赤い髪の女性(荷物を運ぶだけで、こんな金額をいただけるなんて!なんたる幸運!この依頼終わったら美味しい物でも〜、チョコレートを大人買い?!はたまた安全第一日本へ渡航?!いいですね〜夢広がる〜)ギルドの中で上機嫌に順番を待つ女性

受付嬢「ミトアさーん」

赤い髪の女性「え?あ、私か…はーい」受付嬢へ駆け寄る女性


そこから数日…




石造りの大きな部屋に怒鳴り声と何かをバシバシ叩く音が響く 

男「また叩かれたいか!早く増やせ!」男が十にも満たない少女を恫喝し木の棒で叩き、何かを強制する 


ミトア「すぐ増やします!増やしますから!叩かないでぇ!え!…ハァ…ハァ…」バッと起き上がる

ミトア「夢か…」

ミトア(よかった…)夢であった事に安堵する

女性の声「あとどれくらいかしら?」

男性の声「あの山、越えた辺りだってよ」

ミトア「あ!やば皆起きてる!用意しないと!眼鏡眼鏡…」眼鏡をかけ急いで支度し、寝ていた天幕を慌ただしく出る

女性「あ、おはようミトアちゃんだっけ?」大人っぽい女性が挨拶してくる

ミトア「あ!お、おはようございますマリアさん!」

男性「早くしろよ無能」細いが筋肉が無駄なくついて目の鋭い男が声をかける 

ミトア「は、はい!すいません!すいません!」慌てふためき謝りながら、寝ていた天幕を片付ける

男性「おい、ジキ無能は差別用語だ気をつけろ」体型が大きく、長斧を携えた硬派な男が注意する 

ジキ「ノアル、無能に無能つって何が悪いんだよ」

小柄な女性「大変そうだね〜手伝おうか?」小柄な女性がミトアに声をかける

ミトア「おはようございますチリさん!だ、大丈夫でつ!」

ミトア(ヒー!噛んじゃった!)

チリ「でもそれ入れる袋違くない?」ミトアの手元を見ていたチリが言う 

ミトア「はわわわっ…!」更に焦るミトア 

男性「おい集まれ、今日中に目的地に着く、依頼の内容を改めて確認するチリもこっちで話を聞け」最年長らしきリーダー格の男が皆を集める

チリ「ほーい」呼ばれて集まるチリ

男性「これから向かう場所にある、閉じた亜空間を開けその中にある、死体…二千年前に封じた星食いと暴食の死体を国へ持ち帰る事だ」

ジキ「いやトールセン、それ一昨日聞いたよ」軽口を叩くジキ

ノアル「おいジキ黙って聞いてろ」ジキに指摘するノアル

トールセン「警戒するのはこいつらを探している一部の国や組織だ、まあ封じられてる、なんて知らないだろうがな」

マリア「気になってたんだけど死体なんかに利用価値なんてあるのかしら?」

トールセン「大昔こいつらは大陸をも破壊する存在だったそうだ、昔の技術ではその力を利用するのは難しいと考え封印したそうだ、だが今の設備や技術なら利用可能と考え、俺らに依頼して来た…というわけだ」

チリ「なるほどねー、でも国の奴らが自分で行けばいいのに、イチイチウチらに依頼しなくても」

ノアル「おそらく…自分達が動けば悟られる可能性を危惧してだろう、こんな危険地帯に少数なのもその為だろうな」

ミトア(そんな…暴食と星食いが封じられてる所に…知らなかった!荷物を運ぶだけで報酬が良いのは、それでだったのか来なきゃ良かった…!一緒になったこの人達が強そうなのが救い?…かな?)途中から話を聞いていたミトアが震え後悔する

トールセン「出発する」山を越えるため谷の川沿いを行く 

カイギュウ「ブモーォー!」勢いよく川からザバアッと怪物が川から飛び出す、体が長く水面から五mはあり、牙が出た怪物が六人に咆哮を浴びせる

ミトア「ぎゃあぁー!」ミトアがカイギュウに恐れ慄く 

トールセン「ノアル!ジキ!」ジキ「了解!」ノアル「む」ジキが猟銃の様な物から雷の弾を打ち出す、ノアルが斧を投げ、離れた場所の怪物にズガンと刺さり、刺さった斧が一人でに戻ってくる 

マリア「はあっ!」マリアが地面に手をつくと植物の根が伸びていき怪物を拘束する 

トールセン「もう一押しか…」トールセンが腰を落とし右手を引いて構える 

トールセン「フンッ!」引いた拳を打ち出す

カイギュウ「ブオッ?!」トールセンが拳を打ち出すと、距離のある怪物が損傷を受け、川にさざ波を立て倒れる 

トールセン「素材を回収している暇は無い行くぞ」

ジキ「あーあ、もったいね」

チリ「しょうがないよねー」

しばらく歩き一旦食事にする一行

ジキ「うん、うめえ、昨日も思ったけど、お前飯は美味いよな」

ミトラ「あ、ありがとうございます!」

マリア「習いたいくらいだわ」

チリ「マリねえの飯不味いもんね」

マリア「そんな事ないわよ!」

ジキ「いやそんな事あるよ、最初知らずに食った時、毒殺されたかと思ったからな」

マリア「言い過ぎでしょ!」マリアとジキが言い合っている 

ノアル「おかわりもらってもいいか?」

トールセン「私も頼む」二人がミトアにおかわりの催促をする 

ミトア「は、はいぃ、ただいまー!」

食事を終えた一行が再び歩く 

トールセン「あれだな…」トールセンが見た先に開けた場所があり、石の台座の上に約一mの墓石の様なものが建てられている 

ジキ「地味だなー」

チリ「だね〜」

一行が見た目が墓石のような物に近づく

トールセン「ノアルこの墓を壊してくれ」

ノアル「いいのか?」

トールセン「やってくれ」

ノアル「わかった…ヌンッ!」ノアルが斧を振るうと、台座ごと墓石がドカッと粉砕され飛んでいく、壊れ露になった部分から、階段の様な物が見える 

ジキ「隠し通路とか物語あるあるかよ」嘲笑するジキ 

チリ「ないけどあるある」釣られて笑うチリ 

トールセン「行くとしよう」トールセンが入り口を塞いでいた、壊れかけの台座を破壊し中に入っていく六人

トールセン「ジキ照らしてくれ」

ジキ「へいよっと」ジキの掌に雷の玉が浮かび上がり周囲を照らす、幅三m程の階段を二十mほど下り、平坦な通路を五十mほど歩く 

チリ「意外とラクショー?」

ノアル「油断するな…」

ミトア(怖いよ〜…暗いし、一番後ろの私が何かにこう急にガッと襲われたらどうしよ〜、考えたら余計怖いよ〜…)ミトアが後ろや前に視線を行ったり来たりさせる

トールセン「あれだな」約六m四方の部屋があり、その中央に円盤型の石が微動だにせず浮いている 

ジキ「こんな物よく壊れなかったな」

マリア「隕石でも降ってこないと壊れないらしいわ」

ジキ「そんな事言ってて降って来たりしてな」冗談を言い笑うジキ 

ミトア(い、隕石なんて降って来たらどうしよう…)

チリ「ドカアァーン!」チリが突如大きな声を出す 

ジキ「うわー!」マリア「キャアー!」ミトア「ハギャー!」チリの声に三人が驚く 

チリ「アッハッハ!」三人の反応を見て大笑いするチリ 

トールセン「おい…」トールセンが四人をギロッと睨む 

チリ、ジキ、マリア、ミトア「ごめんなさい…」怒られシュンとなる四人 

トールセン「今からこの道具で開ける、気を引き締めろ」トールセンが石の様な物を円盤にくっつけると、少し間を空けて円盤がゴトッと下に落ちる、円盤が浮いていた場所には空気中にも関わらず穴が空いている 

ミトア(穴が空いてる?)

トールセン「後は出し…なんだこれはっ!全員退避!全速力で出口へ!」その怒号とも言える指示の元、急いで全員で出口を目指す 

ジキ「な、なんなんだよ!」

ミトア(ひぃぃぃ〜!)六人が死ぬ気で走る、出口が見え、全員が出口から出た途端、約六十〜七十m離れた場所を中心に地面が吹き飛び、出口までその衝撃が吹き出してくる 

ノアル「ぐっ!」チリ「おわっ!」出口から吹き出してきた風圧にのけぞる

轟音と地鳴りの後、辺りが静かになる 

トールセン「確認するぞ」

マリア「一体何が…」地面が吹き飛んだ中心地へ向かう 

ジキ「すげぇ…穴が空いてんな…」先程円盤があった場所から半径二十五mが吹き飛んでいる 

トールセン「下りるぞ」

ミトア(下りますよね〜…下りたくないよ〜…)衝撃で空いた穴を下りる一行 

穴の中心へ向かうと先程の空間の穴の様な物がそのまま空いている 

トールセン「何も無い…!どういことだ?」トールセンが中を覗いて見ると何も入っていない

トールセン(国の者に謀られたか…!)

赤い魔人「いやー…もうちょっとしたら自分で出ようかと思ったけど…出してくれるなんてなー…早めに出られた」

白い短髪に赤い肌で右腕全体がなんとも言えない色をしており、右腕上腕部に右腕と同じ色の枝の様な物を生やした謎の人物が立っている 

ジキ「あんたこんなとこで何してんだ?」

マリア「見た目は魔人の種族かしら?赤い魔人は初めて見たわ」

チリ「今、依頼中だから邪魔しないでくれる?」謎の人物にジキ、マリア、チリが語りかける 

赤い魔人「ずっと入ってたからな、腹減った、なあなんか食いもん持ってねえか?」六人に聞く赤い魔人 

トールセン「おい!全員戦闘態勢を取れ!こいつだ!」焦るトールセン

ノアル「こいつなのか…?」

トールセン「ああ、こいつだ暴食の魔人アグニ、資料で見た特徴と合致する!中で生きていたのか…!」

アグニ「あんだ?やんのか?」

トールセン「…もう一体はいないみたいだな…フッ中で共食いでもしたか…?」冷や汗を流しながら強がり笑みを浮かべトールセンが問う

アグニ「は?居るだろ?」赤い魔人が何言ってんだという様な反応をする 

トールセン「なんだと!どこへ行った!」辺りを見渡すトールセン 

アグニ「目の」ジキ「先手必勝!」ジキが貯めていた雷を銃から放出する 

トールセン「おい!まだ指示は出してないだろう!」アグニのいた場所に太い雷が走る 

アグニ「ふぅ…魔力の足しにはなったってよ」雷が通った後に平然と立っている 

マリア「む、無傷?!これならどうかしら!」マリアが地面に手をつくと、赤い肌の魔人アグニへ向かって地面から、鋭い木の根が伸び四方八方から串刺しにしようとする 

マリア「え…?」突如バグンッという音と共にアグニの周囲の木の根が消える 

アグニ「バキミシッモグモグゴクッ…そんな不味いもん食わすなよ」

チリ「えいっ!」直後チリが目にも止まらぬ速さでアグニの首目掛けて短刀を振るうが簡単に避けられる 

チリ「避けられるなんて!もういっちょ!」短刀は首に当たったが傷一つ付かず、チリが警戒し距離をとる 

ノアル「ドリャー!」トールセン「セイッ!」ノアルが斧を投げ、トールセンが拳を打ち出す 

アグニ「バキンッガキッゴクッ」斧が突然バグンという音と共に消え、打ち出した衝撃に当たってはいるがどこ吹く風のアグニ 

アグニ「なんかお前ら面倒臭ぇな、雑魚いのと遊んでてもつまんねーし、これでもやるよ」そう言うと右手が光出し、右手で拳を作り地面に打ちつけると軽い地震とさえ言える様な地面の揺れと爆風が吹き荒れる。戦っていた五人が吹き飛び、死んでこそいないが立ち上がれない 

アグニ「あーあ、余計な体力使っちまったよ、しょうがねえこいつら食うか?」

ミトア「待って下さい!」ミトアが五人とアグニの間に割って入る

アグニ「あ?」ミトアを顰めっ面で見るアグニ

ミトア「こここの人達は!」

アグニ「なんだお前?」

ミトア「た!食べないでぐだざい〜…」立ちはだかり号泣するミトア 

トールセン「…おい…早く逃げろ…」

マリア「ミトアちゃん…」

アグニ「なんだ…?お前ウマそうな匂いするな!」

ミトア(わ、私食べられる…ああ、そんな…もう少しマシな人生を生きたかった…)人生を思い返し死を覚悟する 

アグニ「なんだこれ?うぇ!マジィィ!うわっ!カッラ!」ミトアから奪い取った鞄をアグニが漁っている 

アグニ「オイ!あんだ!ウマそうな匂いだけじゃねえか!」調味料を食べ不味い事に激怒するアグニ

ミトア「え?ああ…そりゃ調味料なので…?食材があれば作れますが…」思わず答える

アグニ「お前ウマイもん作れんのか!」反応するアグニ

ミトア「多少は…」戸惑い答える

アグニ「じゃあ今すぐ作れ!」怒鳴るアグニ

ミトア「ひぃっ!い、今は食材が無いので、む、無理ですー!」怯えるミトア

アグニ「ショクザイってなんだ?」

ミトア「おおおお肉とか野菜、さ!魚です!」

アグニ「肉か…来い!」思い立ちミトアを掴む

ミトア「ひぃっ?!」アグニがミトアと鞄を掴み、何処かへ飛んで行く 

ミトア「ギャアァァーー!助けてー!」連れ去られるミトアが悲鳴を上げる 

トールセン「待て!…ぐっ!」無理に立ち上がろうとするトールセン 

ジキ「おい!トールセン大丈夫か?」トールセンへ駆け寄るジキ 

トールセン「大丈夫だが彼女が…!」

ノアル「その傷じゃどの道無理だ国へ帰って救助要請を出そう…!」

チリ「とんでもない化け物だね」飛んで行った方を見て言うチリ

マリア「あれで一匹なんてね…」

トールセン「最悪…どこかの文明が滅ぶかもしれんな…」

一時帰還を進める五人

一方ミトアとアグニ 

ミトア「うわあああー!」

アグニ「この辺だろ」飛んでいたアグニが下りる 

ミトア「ハァハァ…し…死ぬかと思った…」呼吸を整える 

アグニ「獲ってくるから待ってろ」どこかへ飛んで行くアグニ 

ミトア(よし!この隙に逃げる!)急いで鞄を背負い走り出そうとすると、ズゥゥーンという音が後ろに響く 

ミトア「は?!」見た物に驚愕するミトア

ミトア(え?…そんな…)後ろを振り向くと全長十二mの白い体に黄色の棘を生やしたハクライワニが転がっており、傍にアグニがいる 

アグニ「おい!気持ち悪い顔してないで早くしろ!」

ミトア「か、かしゅこまりゅましゅた…」驚愕した後、精一杯の料理を作る 

アグニ「お前さっきからなにしてんだ?」ミトアの作業に疑問を抱くアグニ

ミトア「りょりょりょ料理を!」

アグニ「リョリ?なんだそれ」

ミトア「え、えっと…あのその」しどろもどろ説明しようとする

アグニ「いいから、早くしろよ!」

ミトア「は、はい〜!」

ミトア(自分で聞いたくせに!)ハクライワニの肉一㎏を肉叩きで叩き低温で焼いた後に、高温で焼き上げ、香草を乾燥し砕いた物と粗い胡椒をまぶす 

ミトア「お、お待たせしましたー!」料理が完成する

アグニ「いい匂いだな!なんて匂いだ?」

ミトア「え?匂いの名前ですか?!そ、そうですね…名前があるとすれば〜…」

アグニ「飯食うんだ静かにしろよ」ミトアを睨むアグニ

ミトア「は…はい」ミトア(なんて自分勝手な!)

アグニ「いっただきまーあむっ」肉を鷲掴み、一口で半分食べる、アグニが食べた後に腕に付いている枝が伸び口の様な物を開き、残りを枝が食べる 

アグニ「ウメー!」料理に感激するアグニ

ミトア(今、腕に生えてるやつ動いた…?)

アグニ「おい!ウマいぞ!やるな!」

ミトア「ご、ご満足いただけてよかったです〜、え〜では私はこれにて…」ミトアがソロソロ逃げ出そうとする

アグニ「おい、お前ふざけてんのか?」

ミトア「ひぃー!そんな滅相も無い!一ミクロンたりともふざけてはおりませぬ!」

アグニ「おう、まだ肉残ってるよな?」ハクライワニを指差す 

ミトア「で、ですよね〜、おかわりですよね〜後どのくらい食べられますか?まとめて焼いておきましょう!」

ミトア(まとめて焼いて食べてる隙に逃げよう!)

アグニ「全部だろ」

ミトア「ぜ、全部?!」驚愕するミトア

アグニ「おい早くしろ!」固まっているミトアに怒鳴るアグニ

ミトア「はい!ただいま〜!」逃げる隙を作る為、肉をどんどん焼いていく、それと同時にどんどん無くなっていく 

ミトア「ヒィヒィ…ゼェゼェ…」料理で息切れするミトア

ミトア(逃げる隙なかった、それどころか過労死するところだった…!)

アグニ「いやー!ウマかったー!」腹を叩くアグニ

アグニ「じゃあ次、獲ってくる」飛ぼうとするアグニ

ミトア(え?うそん)言葉に耳を疑うミトア

ミトア「ぎゃああー!ちょっと待ってください!」悲鳴まじりに急いで止めるミトア 

アグニ「あんだよ」辛気臭そうにミトアを見るアグニ

ミトア「え?まだ食べるんですか?」

アグニ「当たり前だろ何年も食ってねーんだ、全然足りねえだろ?」

ミトア「でも起きてすぐ食べるのは、あまり体に良くないらしいですよ?」

アグニ「あ?知らねえよそんなの」ミトアの言葉を無視してアグニが飛んで行く 

ミトア「よし!この隙に!」鞄を背負うミトア、例によってドスゥーンという音が響く 

ミトア(ですよね〜)後ろを振り向く

ミトア「…」全長三五mの背に火山の様な物と大きな翼を生やし溶岩を垂れ流しているネンショウカザンリュウが横たわっている 

ミトア(やばくね?さっきより大きいし誰が捌くの?え?私?無理じゃね?)

アグニ「おい、早くしろよ…!」アグニが睨む

ミトア「は、はい…」渋々作業を始める

ミトア(ネンショウカザンリュウは冷やしながら外殻を剥がして身を再燃焼させることで旨みがより強くなる…流れる溶岩はヒヤリツユクサの蜜を垂らし混ぜることで肉と相性の良い調味料になる…最近手に入れた味噌という調味料を付焼きに…)ミトアが一心不乱に調理し完成一歩手前までくる 

ミトア「あの〜…つかぬ事をお伺いしますが…」

アグニ「あ?」

ミトア「後どれくらい食べられるんですかね〜?な〜んてへへへ」愛想笑いしながら聞くミトア 

アグニ「こいつをそうだな…後五だな」

ミトア「え?五?五匹?」発言に耳を疑うミトア

アグニ「そうだな」

ミトア(イヤーー!どの道待つは死!こうなれば隠して生きてきたアレを使うしか…!でも誰かにバレればまた奴隷生活の日々…)考え込み悩むミトア

アグニ「おい」

ミトア(でもこのままいけばどの道死ぬ!)

アグニ「おい!」

ミトア「ヒャイ?!」

アグニ「まだか?」

ミトア「す…すぐに…」

ミトア(ええい!ままよ!)

ミトア「あー!世界一美味しいお肉が飛んでますー!」ミトアがあさっての方を指差す 

アグニ「せ!世界ーだと?!ど!どこだどこだ!」指差された方を然りに探す

アグニ「おい!ねえぞ!」ミトアの方を振り返る

ミトア「み、見間違えました、その代わり料理が出来ました!」獲って来たはずの当初の量の五倍近くに増えて調理が完成している 

アグニ「ウマそー!こんなに獲ってきたか俺?!」

ミトア「それはもう!」

アグニ「そうか!まあそうだよな!」何故か納得するアグニ

ミトア(なんとか騙せた…だけど、なんだろう何処かから、すごく視線を感じる…気のせいだよね!)

日も老けアグニが寝静まる

アグニ「グー…」寝息をたてて寝ているアグニ

ミトア(フッフッフこうなればこっちのもの、ではトンズラしますか)ミトアがソロソロ動く 

ミトア(なんだろうまた視線を感じる…)周りをキョロキョロするが視線の元は見当たらない 

ミトア(な、なんの足音?!)遠くでバキバキ、ズシンという足音が聞こえる 

ミトア(よく考えたら来る時あの人達居たから来れたのに、一人で帰れるわけない!うわーんそんな〜!)一人試行錯誤する夜が過ぎ

次の日の朝 アグニ「グアー!よく寝たー!飯食って寝たの久々だな!」アグニが起きて離れた所を見るとミトアが倒れている 

アグニ「獲ってくるか!」飛んで行くアグニ、少し間を置いて帰ってくる 

アグニ「おい!起きろ!いつまで寝てんだ!」ミトアに怒鳴るアグニ 

ミトア「うう…昨日の事は夢じゃなかったんですね…」眠たい目を擦りながら起きる 

アグニ「飯」

ミトア「はい…」昨日より一回り小さい約三十mのネンショウカザンリュウが転がっている 

ミトア「昨日の料理を気に入って頂けたんでしょうか…」なんとなく呟き、寝起きの体に鞭打ちながら調理していく 

ミトア(朝から濃い味付けよりあっさりの方が…)料理完成一歩手前まで進む 

アグニ「終わったかー?」

ミトア「あ〜!激ウマ竜が飛んでます〜!」昨日と同様、何もない空を指差す 

アグニ「激ウマー?!どこだどこだー?!」例によって然りに探すアグニ 

ミトア「いや〜見間違いでした面目ない」照れる様に頭を掻くミトア 

アグニ「テメェ…」ミトアを睨むアグニ 

ミトア「わ〜!ご、ご飯完成しました!」慌てて視線を逸らす

アグニ「なんだー?!昨日より多くねえか?!」

ミトア「頑張って作ったので!」意味の分からない言い訳をする

アグニ「リョリすげーな!」食事を始めどんどんなくなる料理 

ミトア「なかなか、美味しく出来たんではないでしょうか、モグモグうん美味しい」

アグニ「ふぅー食った食った」二人が食事を終える

ミトア「わ、わた、わたつぃから、ひ、一つ提案なんですが北へ進みませんか?!」

アグニ「あんでだよ」顔を顰めるアグニ

ミトア「北に美味しい物があった様な〜…」目を逸らしながら説明する

アグニ「マジか!すぐ行くぞ!」ミトアを掴み飛ぼうとする

ミトア「あー!飛ぶのは無しです!」

アグニ「あ?」

ミトア「と、飛んで行くと食べられない物なんですよ〜…」目が泳ぎオロオロ説明する 

アグニ「面倒臭えなー、食い物のためならしゃーね」

ミトア(よっしゃ〜!うまくいった〜!)拳を握り歓喜するミトア 

アグニ「何してんだ?」

ミトア「いえなんでも、では行きましょう」

山を越え谷を渡り北を目指す 

アグニ「何してんだ、早く来い」先を歩くアグニが止まっているミトアに言う

ミトア「はぁっ…はぁ、そんな早く歩けませんよ」息切れし足を止めるミトア、止まっていると茂みがガサッと音を立て何かが頭を上げる 

ショウロウムカデ「キシャーー!」三mのショウロウムカデがミトアを狙う

ミトア「ぎやー!」

ミトア「助けて下さーい!」

アグニ「あんだこいつ」蹴り飛ばすアグニ 

ミトア「助かりました…ありがとうございます…」

ミトア(怖すぎる…でもこれも脱出計画の一つ…!西の国から来た私たちですが飛んで攫われたせいで、国からはだいぶ離れましたが北に進むと町がある!私一人なら到底辿り着けないけど今は究極の護衛が居る!かと言って一緒に飛んでる所を見られれば仲間だと思われかねない!町近くまで進んだ夜こそ脱出!フッフッフ…!)

ミトア「グフフフ…」

アグニ「おい、気持ち悪い顔してないで早く歩け」

ミトア「ぐっ!気持ち悪い…」体に鞭打ち歩き始める

足が棒になるまで歩き食事にする 

アグニ「いやーそのまんま食うより焼いたり切ったり変なモンつけたりした方がウマいなんてなー」

ミトア(変なモン…)

ミトア「…アグニさんは普段料理されないんですか?」

アグニ「そんな面倒臭えことしねえ、お前がやればいいだろ」

ミトア「なんで私が大体私はあなたに料理をする義理も」ブツブツ小声で文句を言うミトア 

アグニ「え?なんだよ、かけてるやつ?」

ミトア「わ、わ〜文句なんて言ってません!」文句を聞かれたと思い焦るミトア 

アグニ「おい、かけてる変なヤツは、いつも変えてるのかだってよ」

ミトア「いつも変えてる?ああ、そうですね使う食材によって合う合わない等もありますので」

アグニ「だってよ」

ミトア「え?あ、はい…?」食事を終えまた歩く、暗くなって来た頃に食事を取り終える 

ミトア「はぁ〜疲れた…そういう時は〜とっておいたチョコレートを〜」上機嫌で鼻歌混じりに板型のチョコレートを取り出す

ミトア(最近、大きな街で買って美味しくて買い溜めしておいたんですよね〜)

アグニ「あんだそれ?」アグニがチョコレートに興味を持つ 

ミトア「こ、これはその〜、く!薬です!持病が再発して仕方なくゴホゴホ、本当は苦いし食べたくはないんですが…!」

アグニ「まずそ、色も変だしな」アグニが興味を無くす 

ミトア(ふぃ〜あぶね〜あぶね〜)安堵しチョコレートをパキッと口で割りポリポリ食べる

ミトア「おいし…!」つい漏れるミトア

ミトア(あ、危ない、危ない口どけ広がる甘さに声が出るとこでした…)

ミトア(…?…なんだろう最近すごい見られてる気がする…きっと気のせい気のせい)キョロキョロした後、気になる視線を気にしないようにしながら就寝する

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