第27話歪な薬
三日目
トラウ「今日は何がいるかなー」上機嫌で徘徊する
コウキ「おーいトラウー!あいつどこ行ったんだよ!」逸れたトラウを怒り気味に探すコウキ
トラウ「…なんだありゃ…?」体や手足が枝の様に細く長い深緑の何かがこちらをじーっと見つめている
トラウ「おい!コウキ見てみ…あれ?いねえ…」トラウが細長い何かを指差し後ろを振り返る
トラウが後ろを向いた瞬間、その得体の知れないモノが細長い脚でシャカシャカと素早くトラウに近づき先端の毒針で刺そうとする
トラウ「おわ!あぶね!」咄嗟に仰け反り回避する
トラウ「なんだこのやろ!」トラウが殴りかかるが細長い体をクネらせ避け、毒針を再度突き出し反撃する
トラウ「おっと…!」トラウが横へ飛び回避する
トラウ「あぶねーなこいつ」奇妙なそれをトラウが警戒する
ソレが毒針から毒液を噴霧する
トラウ「うお!なんだ!」浴びてしまうトラウ
トラウ「う…!なんだ…?!これ…」手足が痺れる
動きが鈍ったトラウを見てソレが毒針を刺そうと追撃しトラウに毒針の先端一部が刺さる、トラウが能力で反発させ毒針を押し返すが切先で少し傷がつく
トラウ「ッイ…!」
トラウも毒針が刺さったまま殴打しようとするが、またも体をクネらせ、のらり避けられる
トラウ「ッツ…!」
トラウ「やべー体が…!」傷口から毒液が入りさらに動けなったトラウにソレが毒液を噴霧する
トラウ「なっ…!」動けなくなり尻餅を着いたトラウにソレが渾身の力を込めて毒針を刺しに来る
トラウ「へへ…!」刺そうとする毒針を左手で掴みソレを捕らえ、重力の力やや運動の力を右手に集めてソレの頭へ向けて放つと斜め上にソレが吹き飛び地面に転がり動かない
トラウ「ヤベ…!マジで動け…なくなってきた…!」相手も動けないが自分も動けない状態に陥りそこへトゲクロトカゲが近づいてくる
トラウ「っ…!ぁ…がっ!」逃げようとするも逃げられずトカゲが大きく口を開ける、トラウが飲み込まれトカゲが巣穴に帰ろとする
コウキ「はっ!」コウキが走ってきてトカゲの頭を切り飛ばす、トカゲの頭と胴体部が転がり、胴体から二本の足が見える
コウキ「うわっ!くっせ!」異臭を我慢しながらトラウを引きずり出す
コウキ「生きてはいるみたいだな…向こうを先に処理しておくか…」気絶している細長い深緑のモノを見て呟く
コウキ(プデューと一人でやるなんて危ねえな…やられたらどうするんだよ…)
プデュー…強位42 全長六mプデューはとある民族の「薬」という意味の言葉。とても細く長いナナフシの魔物、大きな複眼で全方向を見渡す事ができ、獲物を見つけると六本の細長い脚を素早く動かし近づき、頭部先端の飛び出す長い毒針で獲物を麻痺状態にし、生きたまま血を吸い取る。肉は毒が身全体に広がっている為、食す事はできないが乾燥させ砕き煎じて薬として使われる
トラウを拠点の天幕に連れ帰り痺れが取れるまで、コウキが看病しその日は終わる
四日目
トラウ「今日は何がいるかなー」上機嫌で辺りを走り回るトラウ
コウキ「おい!昨日の事もう忘れたのか!ウロチョロするな!昨日一日中トカゲのすっげぇ臭い匂いと戦うはめになったんだぞ!わかってんのか!」
トラウ「おお!次から気をつけるー」軽く返事をする
コウキ「それは今まで何回も聞いたよ!学習という言葉を知らねえのか!」トラウに詰め寄るコウキ
トラウ「わ、悪かった…これからは本当に気をつける…」怒るコウキにたじろぐトラウ
コウキ「本当だな…?」睨み聞く
トラウ「約束する!」
コウキ「次はないからな…」念を押すコウキ
トラウ「わかった」誓うトラウ
トラウ「おい!見ろ!なんだあいつ!」そう言って駆け出すトラウ
コウキ「…」
コウキ「アイツコロス」走るトラウの後ろ姿を殺気を込めた目で見る
トラウ「デッケー鳥…」人の四〜五倍はあろうかという縦にも横にも巨大な鳥が岩に鎮座している
トラウ「おい!見ろコウ…」後ろを振り返るとコウキが愛剣をトラウの喉元に突きつけている
コウキ「人の脳はよ学習ができる様になってるらしいお前の頭ってどうなってんのかな?気になるよな?見てみる?」コウキが喉元に剣を突きつけたまま無表情で淡々と話す
トラウ「ま、待て…!コウキ早まるな…!お、俺が悪かった!」
コウキ「あ、そう思う?さっきも聞いたよ?その話」無表情で淡々と単調に言葉を発する
トラウ「ち、違うんだよ…!ほ、ほらあいつ…あれ…!」巨大な鳥にコウキの興味が移ってくれる様祈り巨鳥を指差す
コウキ「カエンフクロウか…珍しいな…」若干興味がそちらへ移る
カエンフクロウ…強位41全長六m空気袋を膨らまし体に火を纏い温かい空気で浮力を得て飛ぶ梟、音の出難い翼と温めた空気の両方で飛ぶ為、音もなく滞空するのが得意、空から獲物を探し見つけると空気を吐き出し急降下し爪で抑えた後、火で焼き殺し捕食する。羽毛がふんわり膨らんで大きく見えるが身は見た目よりは少ない
トラウ「め、珍しいのか…じゃあ逃げる前にやっちまわねえと…」喉元に突きつけられた剣を窺いながらコウキの関心をそちらへ移そうとする
コウキ「…」剣を離すコウキ
トラウ「よかった…生きてる…」昨日の事以上に生を実感するトラウ
コウキ「あのフクロウは温めた空気で空へ飛ぶ、飛ぶのを阻止してくれ」
トラウ「任せとけい!」二人がカエンフクロウへ駆け出すと二人にカエンフクロウが気付き翼を羽ばたかせ火を放ってくる、コウキは避けトラウは火にそのまま突っ込む
トラウ「おりゃ!」カエンフクロウにしがみつく コウキ「よし抑えてろ!」剣を構えフクロウへ向かって走る、フクロウが警戒し飛び立とうと体に火をつけるがトラウが羽を抑え邪魔をする
トラウ「アチィー!コウキ早く!」
コウキ「わかってる!…はあ!」二本の刃がフクロウを切り裂く
トラウ「でっけー!いっぱい食えるぞー!」
コウキ「いや羽根を毟るとそうでもねえよ」
トラウ「え?」
コウキ「なんでもねえ」二人で大きな体の羽根を取り焼いて食べた後、ガビテの戦祭へ向け魔照虫鍛錬をして寝る
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