第25話電気を作るナメクジ?

ドワーフの店主「は、はいるのか…?出られなくなったりせんだろうな」ドワーフが出入口を通り入って行く 

ドワーフの店主「なんじゃここは…」出入口一枚隔てただけで自分の店から亜空間の中に広めだが見た目普通の光石で照らされた部屋が広がっている 

ドワーフの店主「あっちは儂の店か…」円形の出入口の向こうに店がある 

コウキ「おーいおっさんこっち」コウキがドワーフの店主を呼ぶ 

ドワーフの店主「お、おお…」戸惑いながらも呼ばれて近づく 

コウキ「ここに置ければと思ったんだけど…ここ日の光とかないんだよな…」

ドワーフの店主「外はどうなっとるんだ?」

コウキ「外はこっちだよ」ドワーフの店主と共に左手にある扉から外へ出ると、石造りの地面が続いており光石が辺りを照らす柱が立っている、距離を置いて四方や上が黒い霧に囲まれている 

コウキ「ここが庭って事になるかな、あの黒い霧までがこの空間なんだ、それ以上行ってもどうやっても黒い霧に押されて進めない、日の光もないしな」

ドワーフの店主「なるほど…今手持ちはいくらある?」

コウキ「百万Gはある」

ドワーフの店主「若いのにずいぶん持っとるな」

コウキ「今まで修行がてら貯めてきたんだよ」

ドワーフの店主「なんとかなるかもしれん」

コウキ「本当か…!」

ドワーフの店主「金も三十万ありゃ足るだろう」そう言いながら二人で亜空間を出る 

ドワーフの店主「大きさはどのくらいを考えとる?」

コウキ「んー…そおだなー…やっぱあの一番デカいのかな」顎に手を当てしばらく考えた後、両開きの扉が上下に二枚ずつ、高さ二m強横幅二m強の冷凍庫を指差す 

ドワーフの店主「またでかいやつを選んだな…」

コウキ「まあ、どーせ買うならな」

ドワーフの店主「うーむ、あれくらいなら候補は二つだな…ここの屋根に取り付いてる太陽光で発電する装置を持ち運べる様にした物かデンキオロルを捕まえてそいつに電気作らせるかだな」

コウキ「光なら長時間、外で電気貯めてから使う感じか…デンキオロルってなんだ?」

ドワーフの店主「電気を出すナメクジみたいな奴だ」


デンキオロル…強位25 攻撃を受けたり一定以上の電気が溜まると蓄電している電気を体の突起から放電する、元々は海に生息していたナマコの仲間が濃い魔素に充てられ急激に進化した魔物。肉は見た目から敬遠されがちで味も独特の苦味があり、あまり好まれないが一部の酒呑みが調味料に漬け込んだ物を酒の肴に好むそう。素材は皮を絶縁体に使う事があるらしい


コウキ「そのナメクジこの辺りにいるのか?」

ドワーフの店主「この辺りにはおらんが俺がどんなもんかと思って飼っとるのが居る」

コウキ「なんだ売ってくれんのか?」

ドワーフの店主「金はいらん譲ってやるが…」苦い顔をする店主 

コウキ「どうしたんだよ…」その顔に不安を覚えるコウキ 

ドワーフの店主「捨てようにも不法に捨てたら議会に罰されるし、困っておったから丁度いいんだが…」

コウキ「…いいんだが?」

ドワーフの店主「持とうとすると物凄い勢いで放電するので他へ移せんのだ、かと言って餓死させるのは可哀想だしなー…」

コウキ「電気か…」

コウキ「持てる奴いたら譲ってくれるのか?!」

ドワーフの店主「ああ!やるやる!可愛いが厄介者だからな貰ってくれた方がいい!」

コウキ「じゃあ任せとけ!」自信満々で店主へ宣言する 

コウキ「じゃあ一回、宿帰ってまた来るから!」店主に再度来る事を伝え店を出て走って行くコウキ 

ドワーフの店主「俺はすぐ取り付けられる様にしとくかな…」コウキが大通りに出て香辛料の効いた骨付きの脂ののった鶏肉焼きを一つ買って冷めないうちに走って宿の部屋へ戻る

コウキ「やっぱまだ寝てんな…」寝ているトラウの目の前に買ってきた肉を差し出す、香ばしい肉と香辛料の匂いが漂う 

トラウ「お…?」トラウがボンヤリと目を覚ます

コウキ「これやるから起きろ」起き上がったトラウに肉を渡す

トラウ「おお!うまそー!」目が覚めたトラウが齧り付く 

コウキ「手伝ってほしい事がある、ちょっと来てくれ」

トラウ「ごちそうさまでした、手伝ってほしい事?」骨ごと食べ終わる 

コウキ「早すぎだろ飲み物かよ…てか骨まで食うなよ…」トラウに支度させ宿を出て電機屋へ

コウキ「着いた、この店だ」

トラウ「なんだ?ここ」

ドワーフの店主「おお!来たか!」

コウキ「連れて来たよ」

ドワーフの店主「おお、そうか…だが大丈夫か?」

コウキ「こいつは力や熱なんかのエネルギーの類を操れるし、頑丈だから大丈夫!」自信満々のコウキ

トラウ「何の話だよ」

ドワーフの店主「そうか、じゃあこっちに来い」店主に連れられ地下へ降りて行く、地下は倉庫で色々な物が置いてある、その中の一つにゴム張りの風呂様な物があり黄色い物体が鎮座している 

コウキ「蓋ねえけど、これ逃げ出したりしねえのか?」

ドワーフの店主「ある程度、腹が減るまでほとんど動かん」

コウキ「トラウみたいな奴だな」

トラウ「俺こんなんじゃねえよ!」

コウキ「…でトラウこいつを持って移してくれ」

トラウ「こいつを持つのか…?」

ドワーフの店主「そうだ」

コウキ「気をつけろ」

固唾を飲みトラウを見守る二人

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