第21話陸上の蛸

ギルドの前まで来る二人

コウキ(昨日の連中はいねえのかー?)コウキが開け放たれている大きな扉からコソコソと中を確認する、夜と朝で訪れる人物層が変わるのか、昨日いた者はいない模様

トラウ「何してんだ早く入れよ」

コウキ(よし!いねえな!)

コウキ「わかってるよ」二人がギルドに入り総合受付らしき場所に人が並んでいるので一番後ろに並ぶ

トラウ「また並ぶのかよ…」

コウキ「人が多い分しょうがねえんだよ」そう言って宥めるが受付に二人いる為、順番がすぐに来た

コウキ「俺達、最近登録してギルドカードここに送ってくれるって聞いたんだけどギルドカード届いてる?」

受付嬢「調べてみますね、…ここにお名前と生年月日書いてくれますか?」紙を渡され名前と生年月日を書き紙を渡す

受付嬢「えーっとトラウさんとコウキさん…」受付嬢が紙を見ながら箱に向かって何かをカタカタ指で叩いている

トラウ「何やってんだありゃ」

コウキ「いや、わかんねえ…」

受付嬢「ありました、今お持ちしますね」

コウキ「?」

受付嬢「お待たせしました、こちらですね…お名前や生年月日などお間違いないですか?」二枚のギルドカードを見せられる

コウキ「ああ、大丈夫」

トラウ「へへーん、これでいつでも依頼受けられるぜー」自分のギルドカードを見て気分が上がるトラウ

受付嬢「ギルドや依頼の説明はよろしいですか?」

コウキ「ああ、もう聞いたから大丈夫」

受付嬢「かしこまりました、もし依頼受けられる際はあちらの掲示板からご自身の位階に見合った物を受けてください」ギルド入って右手にある、大きな掲示板を手で示す受付嬢

コウキ「ありがとう」 二人は掲示板の前に立ち、張り出してある依頼の紙を見る、張り出してあるものは左端から右へ向かって難易度が上がっている

トラウ「おい!見ろよ翼竜十匹だってよ!」右端の高難度依頼を見て声をあげる

コウキ「受けらんねーだろ」トラウの方を見ず張り出してある依頼を見ながら応える

コウキ(街中の清掃やら単発の仕事とかもあんだな…通りでギルドの中に色んな人がいるわけだ…)

フランドル「おはよう!」

トラウ「お!お前は!…誰だ?」

コウキ「おはよう昨日は、助かったよ」

フランドル「気にするな、依頼を受けるのか…?こっちは低ランクの依頼しか無いはずだが?」

コウキ「いんだよ俺らの最低の位階一位だからな」

フランドル「そ、そんなわけないだろ!」

コウキ「おいトラウー、この逃げ出した騎竜の捜索なんてどうだ?」

トラウ「えー!そんなのよりこっちの竜のが面白そうだろ!」

コウキ「何言ってんだよ、俺らの位階じゃ無理だろ」

フランドル「その依頼は私も受けられないが、私ならこっちのミドリオカダコの討伐なら受けられるが?もしよれば一緒にいかがかな?」Dランクの張り紙を剥がし誘ってくるフランドル

トラウ「なんだタコかよ〜…」

コウキ「なんだよ急に?」

フランドル「君達の実力を見てみたいと思ってね」

コウキ「…」

コウキ(ランクが高いものの方が報酬もやっぱいいよな…)

コウキ「うーん…わかった、じゃあ一緒に行かせてもらうよ」

フランドル「決まりだな」微笑むフランドル


ミドリオカダコ…強位37 頭の先から触手の先までで全長八mあるタコの魔物。大昔、地中海に住んでいた蛸の魔物が長い年月をかけ進化し陸上に適応した魔物、肺呼吸と鰓呼吸の両方の器官を持ちありとあらゆる風景に擬態する。触手は吸盤が退化しており、筋肉が発達。触手の内側に鉤爪のような物が並んでおり、移動や攻撃されると外敵を引っ掻くようにして反撃する。体に貯水臓器があり高水圧で水を噴射し対象を切り裂く。頭を守る為、成長に合わせて体液を分泌し頭に殻を作る習性を持つ。肉は生で食べるのは敬遠されるが火を通すと弾力と甘味が強くなる、見た目で避ける者も多いが意外と人気、幼少期は外敵に食べられないようにする為か火を通しても非常に苦い上にやたらと生臭い。素材は殻に需要があり、鉤爪などは余り需要がない


受付で受注を済ませ支度をしすぐに運転手と竜車を手配し北西へ向け出発する三人

コウキ「そーいや、名前言ってなかったな…俺はコウキよろしく」

トラウ「俺はトラウだ!よろしくな!」

フランドル「よろしく、二人はどこの出身なんだ?」竜者に揺られながら質問するフランドル

コウキ「俺らはオリーブの町から来たんだよ」

フランドル「オリーブ…最近できた最西端の町か…」

フランドル「凶星と呼ばれる者がいるらしいな…」

トラウ「そんな奴いたか?」

コウキ「いや、俺も知らねえ」

フランドル「昔、東の大陸から渡ってきて怪物のような強さを振るい議会に協力し混星時の混乱を治めた立役者の一人…らしい…まあ私も詳しい事は知らないが」

コウキ「怪物のような強さか…」

コウキ(可能性があるとすれば…トラウのおじちゃん、じいちゃん、ズドのおっちゃんか…?いや、他にも誰かいたりすんのか?)

トラウ「へー!マジかよ!帰ったら探してみようぜ!」気になったトラウがコウキに言う

コウキ「ああ、そうだな」話をしているうちに目的地に近い所まで到達する

フランドル「運転手さん、この辺りでいいよ」竜者を止めてもらう

運転手男性「そうですかい?まだ距離は多少あるようですが…」

フランドル「擬態するような奴らだからね不用意に近づくと運転手さんが危ないよ」

運転手男性「そうですかい、じゃあ、あっしはこの辺りで待たせてもらうとしますよ」

フランドル「ああ、ありがとう、じゃあ行こうか!」

トラウ「よっしゃー!いくぜー!」三人が竜車をおり北西へ向かって歩き出す

フランドル「今回の依頼はミドリオカダコという水陸両用のタコの討伐だ」

コウキ「オリーブの町じゃ見たことないな…」

フランドル「学者、曰く地中海に居たタコの魔物が長い年月をかけて陸に適応したんじゃないかって話らしいこの辺りは地中海からそこまで遠くないからね、稀に出るんだよ」

コウキ「丘に上がった蛸か…」

トラウ「ふーんタコねー」

フランドル「強位は個体にもよるが基本的には37、一匹ならEランクの依頼といったところだ今回の目標は三匹…難しめのDランクといったところだ」

コウキ「一人一匹か…」

コウキ(この依頼を受けられる、あたり三匹を一人でやれるんだろうな…)

トラウ「一人一匹か!じゃあ誰が一番か勝負しようぜ!」

コウキ「魔力の感知できねえやつがなーに言ってんだよ」

フランドル(感知ができない…?苦手ということか?)

フランドル「それなら心配ないこのタコは擬態するとともに魔力の流れも誤魔化して活動するからね、それに二人の本気が気になる…」微笑むフランドル

コウキ「じゃあ久々にやるとするか」

トラウ「へっへっへ、いいね…」火がつく三人、静かに闘志を燃やしながら、しばらく歩く

フランドル「これは…」大きな岩に規則的に並んだ細かい傷がついており、よく見ると周囲の木や石に同じ様な傷がついている

フランドル「奴らは触手に生えているの鉤爪を引っ掛けて移動する、この傷跡からしてこのあたりで活動しているのだろう…」

コウキ「…じゃあ、あとは各々探すだけってことね」

フランドル「そういうことだ…」

トラウ「じゃあ、ここに一番最初に戻って来た奴の勝ちだな!」

フランドル「そういうことになるな…」

トラウ「俺がいちばんだー!」そう言って北へ走っていくトラウ

コウキ「な!汚ねえ!じゃあ後でな!」フランドルにそう言いコウキは西へ走って行く

フランドル「面白い…!」フランドルが北西へ向かって走り出す

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