第10話タツセー屋の老人

竜車に乗るため西門近くまで走る

コウキ「西門の近くの厩舎って言ってたな…」コウキが西門の前に来て辺りの建物を見回す

コウキ「あ!あれか…」青い二匹の騎竜の居る厩舎があり看板の様な物が出ている家がある


騎竜…卵から育てたり捕まえて飼い慣らす等をして、従わせ荷車を引かせたり、競技等で競わせる竜の全般的な呼称、走る竜に加え飛ぶ竜、泳ぐ竜などもおり、持久力があるものが好まれる。虐待と訴える者も一部いる


コウキ「タツセー屋…」店の目の前まで来て変わった看板の名前を呟き読み上げる

コウキ「すみませーん」玄関口をコンコンと叩く 

コウキ(誰もいねえのか…?)間を置いても返事がない試しに扉を開けようとすると鍵は開いており扉がキィー…っと開く、明かりの類はなく窓から入る光の筋が床の一部を照らしており、何故か部屋は荒れている、床に瓶や本が落ちている

コウキ「すみませーん…誰かいませんかー…」不気味な気配に恐る恐る中へ進む

コウキ(誰もいねえのかよ…でも外に騎竜繋がれてたしなー…)奥の部屋の中がほとんど見えない台所らしきところまで来る

コウキ(こんなことならトンネルに使ってあった光石、オリーブの町で貰ってから来りゃ良かった…奥になんかあるな…大きさ的に人くらい?)魔力感知で辺りを探りながら進む、奥の台所の真ん中辺りまで来ると目が慣れてきて人ほどの大きさの物が転がっている

コウキ(なんだこれ…魔力は流れてるな…もしかして死体か?!そんなわけ…)よく目を凝らす

老人「わー!!」コウキ「ぎゃー!!」転がっていた物がバッと起き上がり絶叫するコウキ

老人「ひょっひょっひょっ」老人が不気味な笑い声をあげている

コウキ「…え…は?…なに…?」驚愕し涙目になって動揺し状況を飲み込めないコウキ

老人「ひょっひょっひょっ、引っかかったのー幽霊かと思うたかー?」ニヤニヤ笑みを浮かべ手をユラユラさせながら小馬鹿にする老人

コウキ「…はっ!ふぐっ!あ…!」突然、胸を押さえ苦しみ出すコウキ

老人「な、なんじゃ…!」

コウキ「…!」口をパクパクさせ何かを訴えバタッと床に倒れるコウキ

老人「ど、どうしたんじゃ!や、やりすぎたか!」戸惑い焦り自分がした事を後悔する老人

コウキ「わー!!」老人「ぎにゃーー!!」コウキが突然バッと起き上がり、老人が絶叫する

老人「はあ…はぁ…」驚きすぎて息切れする老人

コウキ「変わり者とは聞いてたけど…とんだじいさんだな、まったく…!」

老人「フッ…若いの、なかなかやるではないか…」

コウキ「うるせぇよ…そんな事より俺達、竜車に乗りたいんだけどラウンタティまで行ける?」

老人「構わんぞえ…にしてもなかなか迫真の演技じゃったのぉ…」

コウキ「それは、どうも」少し呆れながら返事を返すコウキ、二人で外へ出る

老人「おぬし一人か?道中襲われる心配もあるぞ、まあ大丈夫と言えば大丈夫だが」

コウキ「大丈夫だよ俺達つえーから」

老人(俺達…?まあ…ええか)

老人「騎竜と荷車を繋ぐでのちょっと待っておれ」腑に落ちないまま厩舎へ向かう老人

コウキ「ああ、わかった」五分程のんびりしていると

老人「おーい、ええぞー」

コウキ「お、できたのか…ってなんだその荷車!」呼ばれて行ってみると二匹の騎竜が全て虹色で塗られた荷車を引いて出てくる

老人「フッ…イカすじゃろ?」

コウキ「いや…勘弁してくれよ…」乗りたくないが歩いて行くわけにも行かず、渋々老人の隣へ座る 

老人「では、行くとするかの…」そう言って老人が手綱を引くと、ゆっくり西の道を走りだす

コウキ「あ、そうだじいさん」

老人「なんじゃ?」

コウキ「ラウンタティまでいくらなんだ?」

老人「一人六千Gじゃよ」

コウキ「ラウンタティまでなのにそんなに安いのか?」

老人「儂みたいなジジイが金、持っておってもしょうがないでの、このくらいで竜車出しとるんじゃ」

コウキ「そうなのか、ありがたい事だな…はいこれ」腰の袋から一万G硬貨一枚と千G硬貨二枚を手に取り、老人に渡す

老人「…?一人六千じゃぞ…?」

コウキ「一応、二人乗ってっから」

老人「…」一瞬考えを巡らせる老人

老人「はっはっは、何を冗談言っておる」冗談だと思って笑い飛ばす老人

コウキ「ホントだって乗ってんだよ」真面目な顔で返答するコウキ

老人「…そそそ、そんな…!じょ、じょ、じょ、冗談…!」激しく動揺し、歯をガチガチ鳴らして、手が震える老人、それに釣られて騎竜が乱れ荷車がガタガタ走行する

コウキ「あっ!危ねえ!事故る!事故る!」老人が持っている手綱を片手添えるコウキ

老人「ま、ま、まさかおぬしも実は…とかではないよな…?」震えながら恐る恐る聞く老人

コウキ「何言ってんだよ、ちげえよ二人なんだって、ほら」自分の目の前に亜空間の出入口を作り寝ているトラウを見せる

老人「しにーん!!」老人がそのまま気絶する

コウキ「おい!危ねえ!」急いで手綱を左手で握り、倒れそうになる老人を右手で支える

コウキ「ハァ…勘弁してくれよ…人を驚かすくせに自分は苦手ってどうなんだよ…ホント…」竜車を止め後ろの荷台で老人とトラウを寝かせて、そのまま竜車を操り走る

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る