第4話トンネルを抜けた道中

トラウ「ついに!ついに!この日が来たんだな!」

コウキ「そうだな…まだ実感がわかねえよ…まあでも、予選を勝ち抜いて選出戦も勝ち抜かねえと本戦出れねーんだけどな」

トラウ「俺らが一位二位で勝ち抜けだろ!」

コウキ「もちろん!俺が一位だけどな!」

トラウ「ざけんな!俺に決まってんだろ!」二人が西への道を歩いていると、トンネルの入り口が近づいてくる

トラウ「おー!これかー!」

コウキ「町の皆や色んな人が協力して掘ったトンネルだってよ…!」

トラウ「ああ…!父ちゃんも毎日泥だらけになって帰って来たよ」

コウキ「掘るのに四年かかって、今ギルド作ってんだってよ」

トラウ「帰って来たら町がちょっと変わってるかもな!」大会参加や変化していく町への期待で胸、膨らませながらトンネルを進んで行く

トラウ「中、明るいな、なんでだ?」

コウキ「北西の方へずっと行ったとこに砂漠があって、そこに光石ってのがあるらしいそれをトンネルに散りばめてんだってよ」

トラウ「へー」トラウが生返事で応答する

コウキ「興味ねーなら聞くんじゃねえよ」眉間に皺を寄せるコウキ

トラウ「そういや、こんなに広いとなんかいんじゃねえか?!」戦いに期待し気分が上がる

コウキ「いや、バサド山山頂の竜のションベン撒いてあっから皆、逃げてくってよ」

トラウ「ハァ…なーんだなんもいねぇのか…」落ち込むトラウ

コウキ「心配すんな、次にある村で依頼なり受けられるからよ」

トラウ「依頼って?」

コウキ「行けばわかる」

三時間程歩き続け昼過ぎにやっとトンネルを抜ける

トラウ「どわー!でたー!」

コウキ「んー!はぁ…何も無いとこただ歩くだけもしんどいな」久しぶりの日の光を浴び伸びをする二人

コウキ「よーし!あと…半分!」

トラウ「は?!こっからまた歩くのかよ!」

コウキ「おう」

トラウ「おう、じゃねえよ!」

コウキ「文句、言っても着かねえぞ、さあ歩いた歩いた!」

トラウ「うへー!」道の脇でたまに休憩をしながら森に挟まれた平坦な道を歩く二人、干し肉や途中なっている果実をもいで食べ歩くトラウと地図を見て方向を確認し黙々と歩くコウキ

コウキ「おーし!もうちょいだ!後二、三十分くらい…かな?」

トラウ「おっしゃー!」

コウキ「もうここまで…」

トラウ「コウキ!しっ…!」静かにするよう合図するトラウ

コウキ「ど、どうしたんだよ…」突然の言葉に困惑するコウキ

トラウ「…こっちだ!」進んでいた道の右手の森へトラウがガサっと入り、走って行く

コウキ「どこ行くんだよ!」状況が飲み込めぬままトラウを追いかけるコウキ

男の声「だ!誰かー!助けてくれーー!」トラウが声のする方へ走って行く

トラウ「いた!あそこか!」一人の中年男性が何かに足を挟まれ動けない状態で、木の檻に入れられ、四匹のイタチの様な動物に囲まれている。オオイタチ「シャアアァー!!」


モクメオオイタチ…強位11体長百二十cm程で群れで行動するイタチ、林や森に溶け込む様な緑や茶色の毛皮で覆われている、姿を隠し連携して狩りをする。肉は臭く硬い為、罠や餌などに使われる事が多い。毛皮は衣類や防具などに用いられる


男性をオオイタチが襲おうと木の檻に噛みつき壊そうとしている

トラウ「おらー!」トラウが囲んでいたオオイタチを蹴散らし、そのうち一匹がトラウに飛びかかり噛みつく

トラウ「へっへっへ、効かねーなー」腕に掛かる力を蓄積し、腕を噛んでいるオオイタチを見てニヤリとするトラウ

トラウ「ウラー!」腕を噛んでいるオオイタチを勢いよく地面に叩きつける

トラウ「よし、コレで大丈夫だな」

コウキ「おいトラウーいた!おまえ急に…お!?あんた大丈夫か?!」

トラウを追いかけて来たコウキが男性に気づき声をかける

中年男性「ああ、大丈夫助かったよ…いやまだちょっと助かって無いかも…」中年男性が囲んでいる木や足を挟んでいる罠を見てどうしようかと悩む

コウキ「とりあえずこの木だな…」コウキが亜空間から双剣を取り出し木を切り裂く

中年男性「おー」中年男性が感心する

コウキ「トラウ、この罠壊せるか?」

トラウ「任しとけって!」トラウが男性の足を挟んでいる罠をこじ開ける

中年男性「助かったよー」

トラウ「おっさん、こんなとこで何してんだ?」

中年男性「いやーそれがねー忘れたんだよねー」

コウキ(こんなとこまで来て忘れるか?普通…)

中年男性「ただ、どうせ来たから獲物でも捕まえようかと思って罠張ったら、自分で仕掛けた動物用の罠にハマってねーまいったまいった!」はははと笑いながら言う暢気な雰囲気の中年男性

コウキ(鈍臭えおっさんだな…)コウキが呆れる

コウキ「さっきの木の檻みたいなのは…?」

コウキが質問しながら四匹のイタチを亜空間から取り出した袋に入れ亜空間にしまっておく

中年男性「それは僕の能力で伸ばした木だよーこんな風にねー」切れた木の檻の断面を伸ばして見せる

コウキ「じゃあ罠にはまって動けない所を襲われて木で囲ったって事か」

中年男性「いやー順序が違うんだよねー」

コウキ「順序が違う…?」コウキが首を傾げる

中年男性「えーとね、まず僕は罠を仕掛けたんだよ…」

トラウ・コウキ「うんうん」

中年男性「次に僕は罠じゃなくて能力使って獲物を捕らえられないかと思ってねー」

コウキ・トラウ「うんうん」

中年男性「試しに勢いよく木を生やしてみたんだよ、そしたら自分の作った檻に閉じ込められちゃったんだよねー」笑って話す中年男性

コウキ(大丈夫か…この人)

中年男性「伸ばせるけど縮められないから、それでどうしよっかなーって考えてる時に、襲われたんだよねー」

トラウ「おっさん罠にはいつ挟まったんだよ?」

中年男性「オオイタチにびっくりして後ろ下がったら、嵌っちゃったんだよねー笑っちゃうよねー」笑いながら話す男性

トラウ「おっさん…よく今まで生きてこれたな…」

コウキ(うわートラウといい勝負のやべーおっさんだな…)

コウキ「あんたこの先の村の人か?」

中年男性「そうだよーオグス村のスナッテンってんだよーよろしくねー」

トラウ「おお!俺はトラウだ!」

コウキ「俺はコウキ、スナッテンさん村帰るなら送ってくよ」

スナッテン「そうかいー、頼むよー」

三人で村を目指し、三十分程歩くと村に着く

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