エピローグ
「桜 舞う 季節 」
ヘッドフォンのLRから澄みきった優しい声が聞こえる。
僕は凝った首をグルグルと回しながら空港特有の平面エスカレーターに乗っていた。
彼女が指定してきた場所は日本のシンボルともいえるタワーの展望室だった。
「君との思い出はほとんど屋上だったんだし、ちょうどいいでしょ!」
一世を風靡した歌姫が電話越しにはしゃいでいたのを思い出して、思わず笑いが溢れた。
僕は空港をでると、バスを使ってタワーの麓へと向かった。
近くまで来ると思ったよりずっと大きくて腰を抜かしそうになった。
「さてと、行くか。」
僕はあの出会いの日を思い浮かべながらエレベーターに乗り込んだ。
エレベーターが展望室に近づくにつれて、僕の鼓動は激しさを増していく。
久しぶり過ぎて緊張しているのかもしれない。
扉が開くと、一面に東京のビル群が広がった。
だけど僕の視線は風景ではなく、ある一点に注がれた。
「久しぶりだね。春人くん。」
そこにはより美しくなった歌姫の姿があった。
◯◯年の春。
これは僕と彼女の再開と未来の物語。
君は春風のようだった。 ユキ @YukiYukiYuki312
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