第6話

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中学の時の話だ。

僕にはずっと好きだった女の子がいた。

優しくて強い人だった。

ある時、その女子が僕のことを好いていて、特に歌う姿が好みであるということをクラスメイト数人から聞かされた。

馬鹿だった僕はそれを聞いて浮かれてしまい、言われるがまま、その女子とカラオケに行って何曲か歌ったあとに想いを伝えた。

その時の返答を僕は忘れることはないだろう。

その女子は言った。


「テッテレー!ドッキリでした!歌下手野郎が調子に乗んな!」


その女子とクラスメイトがグルだったことは少したってから知った。

僕が音楽を好きなことを知ってのイタズラだったらしい。

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たったこれだけだ。

たったこれだけのはずだ。

何を気にしているんだ。

好きな人が勇気を出してくれたというのに。

もうこれを逃したら二度と会えないのに。




僕は何も言えずに立ち尽くした。

頭が真っ白になって何も発することができなかった。

咲桜さんはじっと待っててくれていた。

しかし時間は有限である。

五時限目を告げる鐘がこの時間を立ち切ってしまった。


「毎朝いろんなお話をしたこと本当に楽しかったし、これが永遠に続けばいいなとか思った。抱き締めてくれたの嬉しかったよ。」


咲桜さんは作り笑いを浮かべながら一息で言いきると、そっと四階へと帰っていった。


僕は自分の愚かさに憤怒した。

目からは涙がこぼれ、それが頬を伝う度に自分を殺したくなった。


僕は逃げたのだ。過去からも今からも。


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