第4話

あの決心の日から僕は春風の二番のことだけを考えて生活をした。

作成は苦難の連続だったが一週間が立つ頃には完成に近い状態にすることができ、後は細かい部分を調整する作業が残っているのみだった。



「よう、何してんの?」


クラスメイトであり、幼なじみでもある御子柴が話しかけてきた。

彼は放送部であり普段から台本を書くので、僕がしていることに興味があるらしかった。


「ちょっと作詞することになってさー」


「作詞!?軽音部にでも入ったのか??」


御子柴が大きな声を出すので、僕は周りに聞こえないように事の顛末を話した。

彼は何だか心配そうだ。


「まー止めはしないけどよ。歌嫌いのお前にそんなことが勤まるのか?」


「別に歌が嫌いな訳じゃないよ。ただ歌うのが苦手なだけでさ」


御子柴は僕の恥ずかしい過去を知っている。今となればしょうもないことなのだが未だに彼は僕のことを心配してくれているのだ。

しょうもないとは言いつつも、それを未だに引きずっている僕に問題があるのだが。


「でもそういうことなら、はやく作ってあげないとなー」


御子柴はあっけらかんと言った。


「もうすぐ春休みだし、なかなか会えなくなるからね」


僕は歌詞の候補を紙に書き出しつつ、心ここにあらずと言った感じで答えた。


「咲桜さんって言ったらあの有名な歌姫だろ?」



僕と御子柴の間に暫しの静寂が訪れた。



「え??咲桜のこと知ってるの?」



僕は驚きを隠せなかった。御子柴から咲桜の名前が出るとは思わなかったのだ。


「文化祭で歌ってだろ!去年、三年生の出し物でさ!」


文化祭では適当に出店を回って買い食いをしていただけだったので、ステージの方を見ていなかった。

いや、問題はそこではない。僕は狼狽えながら尋ねた。


「三年生って言った?一年生じゃなくて?」


彼は笑って答えた。


「三年生で間違いない。え、同年代だと思ってたのか?」


御子柴の返答を聞き終わると僕は急いで教室をでた。

三年生の教室がある四階に行くために。


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