第335話 正念場
「二人とも、無事だったんだね!!」
「どうにかね……それよりも聞いてくれ、実は北側の城門が破られてゴブリンキングが街に侵入してきたんだ」
「えっ!?」
「……大丈夫、もうゴブリンキングは私が倒した」
「ええっ!?」
アルトとネココの言葉にレノは驚きを隠せず、ゴブリンキングが単独で城門を破って街に侵入した事、それに既に討伐されたという話を聞いて動揺せずにはいられない。
「まあ、ネココが倒したというよりは皆で力を合わせて倒したと言った方がいいんだけど……ともかく、もう魔物の群れの主はいない。あとはこの魔物達を倒すだけだ」
「倒すだけって……」
「ゴブリンキングという存在がいなくなればもうゴブリンがこれ以上に増える事はない。そう都合よく次のゴブリンキングが生まれるはずもない……はずだ。後はここに集まった魔物を倒せば、今度こそ終わるはずだ!!」
「……ここが正念場、こいつらを倒せばもう終わり」
レノは二人の言葉を聞いて地上に存在する魔物の群れに視線を向け、まだ数は残っているがそれでも殲滅できない量ではない。城壁には街で待機していた冒険者や傭兵も続々と集まっており、戦力も整ってきた。
ゴブリンキングという脅威が既に消えたというだけでも心は楽になり、後は魔物を倒すだけだと知ったレノは二人に頷くと、両手の剣と刀を握りしめる。
「よし……なら、戦おう!!」
「僕も出来る限りは援護するよ。こんな時のために色々と持って来たからね」
「私も疲れてるけど……頑張る」
3人は城壁の上から見下ろすと、空堀の方に集まっている魔物の群れに視線を向ける。未だに多数の魔物が存在し、これらを殲滅するのはきつそうだが、それでも諦めるわけにはいかなかった。
「ネココ!!城門を守っているドリスの援護を頼む、アルトはここで俺の援護をしてくれる!?」
「……分かった」
「ああ、任せてくれ……こんな時のために用意しておいたこれを使おう」
ネココは頷くと城門で一人で守護をしているドリスの元へ向かい、アルトの方は収納鞄から大量の酒瓶を取り出す。こんな時に酒でも飲むつもりかとレノは驚いたが、彼が手にしているのはただの酒瓶ではなく、アルコール度数が高い酒と火属性の粉末を混ぜた液体が入っていた。
「レノ君、僕がこれを投げたら君の火炎刃で発火してくれ!!」
「発火……分かった!!」
「よし、行くぞ!!」
アルトは特製の火炎瓶を振りかざすと、地上へ向けて投げ込む。それを見たレノは蒼月に風と火の魔力を灯し、火炎の刃を放つ。
「今だ!!」
「はああっ!!」
『グギィッ……!?』
地上に存在する魔物の群れに目掛けて落下した火炎瓶をレノは火炎刃を放つと、魔物達の上空にて火炎瓶は爆発し、直後に破裂した中身が火の雨のように降り注ぐ。
爆発して吹き飛ばすのではなく、無数の火が上空から降り注ぎ、魔物達は火に飲み込まれて悲鳴を上げる。特に魔獣種などは火を恐れて逃走を始めてしまう個体も現れた。
「ギャインッ!?」
「ガアアッ!?」
「ギャウンッ!?」
コボルト、ファング、他にも獣型の魔獣は特に火を恐れて逃げ始め、街から離れていく。元々ゴブリン以外の種の魔物は無理やりにゴブリンキングに従わされていただけに過ぎず、ゴブリンキングがこの場に存在しない以上は躊躇なく逃げ出してしまう。
「い、いいぞ!!あいつら、逃げ出しやがった!!」
「俺達にも手伝わせてくれ!!」
「よし、それなら火矢で援護してくれ!!無理に空中で当てようとしなくてもいい、地上に落ちても割れた箇所に火矢を撃ち込むだけでもいいんだ!!」
レノ達の行動を見ていた他の兵士達も協力を申し込み、彼等にアルトは火炎瓶を渡すと、弓兵に火矢で狙うように指示を出す。普通の炎でも効果はあるらしく、彼等は火炎瓶を投擲を始めた。
土次と城壁の上から火炎瓶が投げ放たれ、そこから無数の火矢が撃ち込まれる。火炎瓶は地上に衝突した際に割れてしまい、その箇所に火矢が撃ち込まれると地面にしみ込んだ液体が発火し、文字通りに火の海と化す。
「グギャアアアッ!?」
「ギィアッ!?」
「ギャアアアッ!?」
「やった!!奴等、苦しんでるぜ!!」
「この調子だ!!どんどん投げろ!!」
火の海とかした地上で魔物達は身体を焼かれ、やがては耐え切れずに逃げ出してしまう。しかし、空堀の中に現れた事が災いし、堀の中から抜け出さなければ火の海から逃れられない。
結局は大半の魔物は逃げ切る事も出来ずに身体が燃やされ、仮に空堀から抜け出しても炎を纏った魔物の大半は逃げ切る前に力尽きてしまう。アルトの作り出した火炎瓶によって地上の魔物の殆どは殲滅され、遂には地上の火が消える頃には魔物はもう殆ど残っていなかった。
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