第332話 南側の激戦
――ギィイイイイッ!!
南側の城壁の上では多数のゴブリンとホブゴブリンと兵士達が戦闘を繰り広げていた。地上に存在する大穴からは次々と魔物が現れ、その中にはコボルトやファング、更には他の魔物の姿も見えた。
「くそっ!!こいつら、どれだけいるんだ!?」
「油断するな!!ただのゴブリンだと思うな、こいつら武器を扱うぞ!!」
「ギギィッ!!」
「ギィアッ!!」
ホブゴブリンだけではなく、ゴブリンの中には人間から奪った武器を扱う個体も多かった。兵士達は必死に応戦するが、如何せん既に城壁に乗り込んだゴブリン達が縄梯子で地上から仲間を引き寄せているのが問題だった。
いくら倒しても地上から新手が出現し、乗り込んでくる。ならば縄梯子をどうにかしようとしても、それをホブゴブリンが立ちふさがって邪魔を行う。
「グギィッ!!」
「グギギギッ!!」
「く、くそっ……近寄れない!!」
「こいつら、本当にゴブリンなのか!?こんなのまるで……!!」
「弱音を吐いている場合か!!戦え、戦うしかないんだ!!」
仲間を守るために立ちふさがるホブゴブリンの群れに対して兵士達は対抗できず、普通のゴブリンならばともかく、上位種のホブゴブリンは並の兵士では相手に出来ない力を誇る。
いくら倒しても地上から新手が乗り込んでくるため、南側の城壁に配備されていた兵士達の方が徐々に被害が大きく、遂には城門にまでホブゴブリンの集団が乗り込む。
『グギィイイイッ!!』
「や、止めろぉっ!?」
「こいつら、城門を開くつもりか!?」
「くそ、止めるんだ!!」
城門の裏手に移動したホブゴブリンは閂を外し、内側から城門を押し開こうとした。その様子を見て兵士達は止めようとするが、ホブゴブリンはゴブリンと連携して邪魔する兵士を対処させる。
『ギィイイイッ!!』
「だ、駄目です!!ゴブリン共が邪魔をして城門に近付けません!!」
「くそっ!?おい、魔術師共!!なんとか出来ないのか!?」
「む、無茶を言わないでくださいよ!!こんな場所で魔法なんて使ったら大変な事になりますよ!?」
援軍として駆けつけてきた魔術師に兵士は怒鳴りつけるが、城門の近くで魔法を使用すれば大惨事を引き起こし、下手をすれば城門を破壊しかねない。そんな事になれば本末転倒であり、彼等ではどうしようも出来なかった。
――ガァアアアッ!!
城門の外側からはコボルトやファングの鳴き声ば響き渡り、仮に城門を開かれた場合はゴブリンやホブゴブリン以外の魔物達がなだれ込む。そうなればシチノはお終いであり、住民を守る事は出来ない。
「何としても止めろ!!奴等に門を開かせるな!!」
「そ、そういわれても……」
「くそっ!!残っている冒険者達は来ないのか!?傭兵共は何をしている!!」
兵士達は必死に戦う中、未だに駆けつけてこない冒険者と傭兵に悪態を吐く。だが、彼等は北側に現れたスカーの対処のために動いたため、すぐには辿り着けない。
必死に兵士達は城門を開かせようとするホブゴブリンを仕留めようとするが、それをゴブリンの大群が阻害し、やがて城門がゆっくりと開かれていく。その結果、遂に外側から大量の魔物の群れが押し寄せようとしてきた。
『ガァアアアッ――!!』
城門が内側から押し開かれ、遂に多数の魔獣種が街中に入り込もうとした時、ここで別方向から狼の咆哮が響き渡る。その声を耳にした者達は驚いて振り返ると、そこにはウルに乗り込んだレノと、その後方にはスラミンに乗り込んだドリスの姿が存在した。
「行くぞ!!皆!!」
「ウォンッ!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!?スラミンさんの背中、思っていた以上に揺れて落ちそうですわ!!」
「ぷるんっ!!(泣き言を言わない!!)」
ウルに乗り込んだレノは両手に蒼月と荒正を構え、ドリスもスラミンの背中から落とされないように必死にしがみつく。その光景を目にした者は敵味方関係なく唖然とするが、ここでレノは城門の様子を確認して両手の武器に魔力を灯す。
(城門がもう開かれている!!何とかしないと……!!)
両手の剣と刀にレノは魔力を送り込むと、刀身に風の魔力が纏い、両腕を振りかざしたレノは同時に二つの「嵐刃」を放つ。二つの風の刃重なり合うように放たれ、城門の前に立っていたホブゴブリンの群れに迫る。
「嵐刃・二連!!」
『グギャアアアッ!?』
『ガアアアッ!?』
レノが放った二つの嵐刃は重なり合った瞬間、通常以上の威力を引き出し、ホブゴブリンの群れを吹き飛ばすどころか城門から入り込もうとしていた魔獣の群れを吹き飛ばす。その光景を確認した者は砲撃魔法並の威力を誇る攻撃に驚愕した。
蒼月と荒正を同時に繰り出す事で通常以上の魔法剣を発揮できるようになり、レノはウルの背中の上から剣と刀を構えると、今度は両腕に取り付けた魔石の力を借りて別々の魔法剣を同時に発動させる。
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