第325話 北と南の襲撃

スカーは城門へ向かう光景に兵士達は気づき、慌てて彼等はスカーを仕留めようと矢を放ち、投石を行う。だが、どんな攻撃もスカーを仕留める所か止める事も出来ず、無数の矢や石を払いのけながらスカーは城壁へと駆け出す。



「ギァアアアアッ!!」

「ま、まずい!!城門を守れ!!」

「撃て、撃てぇっ!!」

「駄目です、止まりません!?」



兵士は必死にスカーの行動を止めようとしたが、最早ゴブリンキングへと進化を果たしたスカーは身体能力はホブゴブリンの時の比ではなく、巨体でありながら矢の雨を潜り抜ける程の身軽さと速度で城門へと辿り着く。


シチノの城門は頑丈な鋼鉄製の門であり、ボアの突進だろうが赤毛熊の怪力であろうと破壊される事はない。だが、スカーは拳を握りしめると、閉じられた城門に向けて叩き込む。



「ギガァアアアアッ!!」

「うわぁっ!?」

「な、何だと……そんな馬鹿なっ!?」

「素手で……鋼鉄の扉を!?」



拳が叩き込まれた瞬間、城壁に振動が走り、あろう事か鋼鉄製の城門が大きく凹む。更にスカーは止まらず、無数の拳を突き出すと城門が徐々に変形し内側の方へと凹み始めた。



「だ、駄目です!!このままでは持ちません!!」

「馬鹿を言うな!!何としても耐えろ、この城門を突破されればもう街は……!!」

「そ、そんな事を言われても……」



兵士達も必死にスカーを止めようとしたが、間に合わずに遂にスカーは城門に強烈な体当たりを行った途端、城門が破壊されてしまう。遂に街の内部へと入り込んだスカーを見て兵士達は恐怖を抱き、一方でスカーは雄たけびを放つ。




――ギァアアアアアアッ!!




遂にシチノの歴史において城壁と突破し、街中に侵入者を許してしまう。過去に他国からの大軍が押し寄せても守り切ったと伝えられた難攻不落の伝説を打ち破ったのは、人間ではなくあろうことかゴブリンだった。


スカーは城門を突破して街中に入り込むと、慌てて兵士達はそれを止めようと武器を手にして取り囲む。だが、相手は並のゴブリンの数十倍、下手をしたらそれ以上の力を誇る存在であり、身体が震えてしまう。



「ギアアッ……!!」

「ひいっ……」

「な、情けない声を出すな!!ここで退けば、俺達の家族が殺されるかもしれないんだぞ!?」

「そ、その通りだ!!戦え、戦うしかない!!」

「やれぇっ!!」



槍を手にした兵士達がスカーに対して突っ込み、彼の身体に槍を放つ。その光景を目にしたスカーは何を考えたのか避ける素振りもなく、堂々と両腕を広げて迎え入れる。



「フンッ!!」

「うわぁっ!?」

「は、弾かれた……!?」

「な、なんだこいつの身体は!?」



スカーが力を込めるように鼻息を鳴らすと、兵士達の槍はスカーの肉体に触れた瞬間に弾かれ、まるで鋼鉄の塊にゴムのような物が纏ったかのように刃が突き刺さらない。いくら力弧をめても弾かれてしまい、攻撃が通用しない。


槍だけではなく、矢を放っても突き刺さる事はなく、剣で斬りつけようとしても弾かれてしまう。普通のゴブリンやホブゴブリンには通じる攻撃でも現在のスカーには通用せず、必死にあがくように攻撃を繰り返す兵士達にスカーは笑みを浮かべた。



「こ、こんな馬鹿な……どうして、どうして効かないんだ!?」

「いったい何が……くそっ、刺され!!切れろっ!!」

「なんでだよ!?切っても突いても駄目なら……どうすればいいんだよ!?」

「ギッギッギッギッ……!!」



必死に自分に武器を振るう兵士達の姿を見てスカーは笑い声をあげ、その余裕の態度に兵士達は怒りを抱くどころか不気味さを覚え、何をしても通じないのではないかと考えてしまう。


だが、ここでスカーを仕留めなければ街に被害が生まれてしまい、なんとしてもそれだけは避けなければならない。北側の城壁の警備隊長は杖を取り出し、魔法の準備を行う。



「下がれ、お前達!!我が魔法で吹き飛ばしてくれる!!」

「た、隊長!?」

「そうだ、隊長は魔導士だ!!」

「全員、離れろ!!巻き添えを喰らうぞ!!」



北側の城壁の守護を任されている警備隊長は実は「魔導士」でもあり、彼は火属性の砲撃魔法を扱えた。火属性の魔石を取り付けた杖を構えた警備隊長は狙いを定め、魔法の準備を行う。



「喰らうがいい、怪物め……吹き飛べっ!!」

「ギアッ……」



杖を構えた警備隊長を見てスカーも流石に油断できないと判断したのか、両腕を組んで防御の体勢を取った。それを確認した警備隊長は杖先に赤色の魔法陣を展開させると、砲撃魔法を放つ。



「フレイムアロー!!」

「ッ――!?」

『うわぁっ!?』



魔法陣から熱線が放射され、直線状に存在したスカーの肉体に衝突すると、爆炎がスカーの全身を覆い込む。その攻撃を確認した兵士達は慌てて距離を取り、一方で警備隊長の男は全ての魔力を出し尽くす勢いで魔法を撃ち込む。

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