第317話 収納石の破壊方法

「あっ、ドリス……実は収納石を無理やり破壊して中身を取り出せないのかを試してたんだ」

「魔石を破壊すれば暴発するように収納石も破壊すれば異空間に収めている物も取り出せるからね」

「……でも、硬くて中々壊れない」

「そ、そういう事ですの……でも、他に方法はなかったのですか?」



収納石を乗せていた机はレノが剣を叩きつけた際に壊れてしまい、肝心の収納石には罅割れ一つ入っていなかった。やはり無理やりに破壊する事は難しいらしく、それでも合言葉が分からない以上は取り出す方法は破壊するしかない。



「この収納石をゴブリン達が何故探しているのか……中身を知ることが出来れば分かるはずだ」

「……という事でドリスも手伝って」

「手伝えと言われても……」

「そうそう、破壊する時は単純な物理攻撃が有効的だと思われるよ。試しに街に存在する魔術師に魔法を撃ち込んでもらったけど、びくともしなかったしね」

「火属性の魔石を暴発させて破壊しようとしても無駄だったよ」

「そ、そんなことまで試したんですの!?」



普通の魔石と比べても収納石は異様なまでに頑丈であり、特に魔法などの攻撃の場合は全く影響を受けていなかった。アルトの見立てでは収納石は闇属性の魔石に分類され、闇属性は他の属性の魔法を吸収する性質がある。


魔術師の砲撃魔法やレノの魔法剣でも破壊できなかった理由の一つは収納石が外部の魔法攻撃を吸収して無効化している素振りがあり、だからこそレノも直接的に魔力を吸われないように「兜割り」や「地裂」などの攻撃を試すが、まるで触れた瞬間に衝撃が吸収されるように無効化されてしまう。



「何度か試してみたけど、やっぱり普通に攻撃しても壊れる様子はないな……」

「ふむ、闇属性は聖属性を苦手としていると聞いている。だが、聖属性の魔法の中で攻撃に特化した魔法は存在しない。浄化や回復の魔法を施したとしても意味はなかったね」

「もう試されたのですか?」

「ああ、この街の治癒魔導士や修道女に無理を言って収納石に魔法を施して貰ったが、何も変わらなかったよ」



闇属性の魔力を打ち消せば収納石も破壊できるのではないかと考えたアルトだが、治癒魔導士の回復魔法や修道女の浄化魔法も効果はなく、収納石を破壊するには至らなかった。


他に方法がないのか色々と試してみたが、今日に至るまで成果はなかった。やはり合言葉が分からなければ収納石を解除できないかと思われた時、ここでレノは何かに気付いたように腕を組む。



「聖属性の攻撃、か……」

「レノ君、何か思いついたのかい?」

「ああ、いや……そういうわけでもないんだけど、何となく引っかかってね」

「……何が引っかかったの?」



レノは聖属性の魔法には攻撃性能を持つ魔法は存在しないというアルトの言葉にひっかり、確かに治癒魔導士や修道女が覚える魔法には攻撃に特化した魔法は存在しないかもしれない。だが、魔法ではなく、魔法剣ならば可能性はあるのではないかと考えた。



「……聖属性の魔石、誰か持っている?」






――その後、街に存在する教会にレノ達は赴くと、教会が販売している聖属性の魔石を購入する。聖属性の魔石の類は基本的には「陽光教会」と呼ばれる宗教団体が取り扱うのがジン国の決まりだった。


陽光教会は太陽の女神と呼ばれる存在を信仰し、主に女性しか入信を許可されていた。男性は教会に入る事は許されず、修道女の能力を持つ者は特に迎え入れやすい。


教会は聖属性の魔石を販売しており、この魔石を扱えるのは治癒魔導士や修道女に限られているため、滅多に二つの職業以外の人間が購入する事はない。だからこそレノ達が訪れた時は教会の人間は非常に驚いた。



「ふうっ……どうにか聖属性の魔石を手に入ったね」

「何か凄く確認されたね」

「仕方ありませんわ、普通の人間が聖属性の魔石を購入する事なんて滅多にありませんもの」



聖属性の魔石は他の魔石と比べても希少品であるため、値段も相当に高い。その代わりに他の魔石よりも魔力が多分に含まれているため、一度購入すればすぐに魔力が切れる事はない。


聖属性の魔石を手にしたレノはミスリル製の魔法腕輪に装着し、オリハルコン製の魔法腕輪とは別の腕に装着する。この腕輪をもう一度使う機会が訪れた事にレノは嬉しく思う。



「よし、やってみるよ」

「本当に大丈夫かい?」

「……無理だったとしても気にしないでいい」

「そうですわね、聖属性にも適合を持つ方は滅多にいませんし……」



聖属性の魔石を取り付けた魔法腕輪を装着したレノは蒼月を構えると、魔法腕輪に取り付けた魔石に視線を向け、試しに魔力を引き出せるのかを試す。本来は治癒魔導士や修道女しか扱う事が出来ないと言われている聖属性の魔石、それをレノは引き出せるかどうかは分からなかった。

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