第313話 魔弓術の本領発揮
「ネココ!!早く来い!!」
「レノ!?」
先に逃げたと思われたレノが残っている事にネココは驚くが、彼は矢を構えると弓に取り付けた風属性の魔石を利用して次々と撃ち込む。魔石の魔力を利用して発射された矢は標的を確実に射抜き、更に衝撃波を生み出して周囲の敵も同時に吹き飛ばす。
「ギャインッ!?」
「グギャッ!?」
「ガアアッ!?」
「グギィッ……!?」
次々と撃ち込まれる矢によって魔物の軍勢は蹴散らされ、その光景を見ていたスカーはレノを睨みつける。そんなスカーに対してレノは最初の時のように矢を番えると、魔力を込めて放つ。
「喰らえっ!!」
「グギィッ!!」
「ガアッ!?」
発射された矢を見て咄嗟にスカーは自分が乗り込んでいた赤毛熊の背中に隠れると、矢はスカーの代わりに赤毛熊の顔面に的中した。その結果、赤毛熊の顔面は衝撃波を受けて吹き飛ぶ。
自分が使役していた赤毛熊を犠牲にしてスカーは攻撃を受けるのを免れると、その様子を見てレノは舌打ちし、次の矢を放とうとした。だが、その間にネココは彼の元まで迫り、逃げる様に促す。
「レノ、ここは退く!!」
「ネココさんの言う通りですわ!!これでは多勢に無勢です!!」
「ウォンッ!!」
「くっ……分かった。なら俺が時間を稼ぐから他の皆も先に避難させて!!」
レノはスカーだけを狙い撃ちするのは止め、先に逃げた冒険者や傭兵を襲い掛かろうとする魔物の群れに対して矢を放つ。ドリスはウルの背中の上で近付いてくる魔物を焼き払い、ネココは水分を吐き出しすぎて縮小化したスラミンを抱えて駆け出す。
「爆火斬!!」
「ギィアッ!?」
「ギャンッ!?」
ファングに乗り込んで追いついてきたゴブリンに対してはドリスが対処し、その一方でネココは蛇剣を振り回しながらスラミンを庇うように駆け出す。
その一方で先に逃げた冒険者と傭兵は既に城門の近くにまで辿り着いており、彼等を迎え入れるために城門は開け開かれた。兵士達は急いで城門の中に入るように促す。
「早く中に入れ!!敵がこちらに来る前に早く!!」
「うわぁああっ!!」
「た、助かった……」
「油断するな、全員が入ったらすぐに城門を閉めるんだぞ!!」
討伐隊として志願した冒険者と傭兵達は先に入り込むと、最後にレノ達が城門へと移動し、橋の上を渡る。あと少しで城壁に辿り着けると思われた時、ここで城門が閉じ始めた。
「もう限界だ!!城門を閉めるぞ!!」
「お、おい!?まだ全員入っていないんだぞ!?」
「早く中に入れ!!」
城門が動き出す光景を見てレノ達は慌てて移動速度を上げるが、その後ろからはボアやファングに乗り込んだゴブリン達が追尾する。この状況ではウルに乗り込んでいるドリスとレノはともかく、スラミンを抱えたネココは間に合わない。
「ネココ!!こっちに手を!!」
「くっ……」
「掴まえましたわ!!」
「ウォオオンッ!!」
ウルに乗り込んだレノとドリスはネココに手を伸ばすと、ネココはレノの腕を掴み、ドリスは彼女からスラミンを抱きかかえる。3人とスライム1匹を乗せたウルは閉じられようとしている城門に飛び込む。
ぎりぎりの所でウルは城門を潜り抜ける事に成功し、あまりの勢いに着地に失敗して背中に乗っていた3人ごと地面に倒れ込む。その直後に城門が閉じられると、外側の方から無数の魔物の声が響く。
――グギィイイイッ!!
城壁の外側から悔し気なホブゴブリンの鳴き声が響き渡ると、それを耳にしたレノは身体を痛めながらも起き上がり、全員が無事に戻ってきたことを確認して安堵する。
「ふうっ……助かった」
「あ、あのレノさん……その、手を退けてくれませんか?」
「ん?この感触は……まさか!?」
「ひゃんっ!?破廉恥ですわ!?」
レノは手元に感じる柔らかな感触に気付き、驚いた様に振り返るとそこには自分の手がドリスのお腹を掴んで言る事に気付き、彼女は恥ずかしそうな声を上げた。意外と引き締まったお腹をしており、お腹を撫でられるとくすぐったそうな声を上げる。
「わっ、ご、ごめん!!大丈夫?」
「え、ええ……平気ですわ」
「……痛い」
「ぷるぷるっ(死ぬかと思った)」
「クゥンッ……(優しくスラミンを舐め上げる)」
どうにか安全な城壁内に逃げ込む事に成功したレノ達は立ち上がると、そんな彼等の元に大勢の兵士が集まる。全員がレノ達の無事を確かめると安堵するが、ここで討伐隊に参加していた人間が悔し気な表情を浮かべた。
「くそっ!!どうなってるんだ!?ゴブリンキングを倒せば終わりじゃなかったのかよ!!」
「話が違うぞ!!どういう事だよ、王国騎士さんよ!?」
「そ、それは……」
「待ってくれ、作戦を立てたのは僕だ。なら、責任は彼女ではなく僕にあるだろう」
「ドリス様、ご無事ですか!?」
討伐隊の者達が作戦を実行したドリスに言い詰めようとした時、ここでタスク侯爵と共にアルトも現れる。すると、討伐隊の者達は公爵が現れた事で流石に声を荒げる事は出来ず、それでも納得していない表情を浮かべる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます