第307話 王国騎士の期待感
「ゴブリンキングはこの私、王国騎士にして爆炎の騎士の称号を陛下から承ったドリスが討ち取って見せます!!ですが、私一人だけではどうしようも出来ません!!皆さんの御力が必要ですわ!!どうか、御力を貸してください!!」
「おおっ!!」
「俺達がの王国騎士の力になれるなんて……」
「が、頑張ります!!」
王国騎士というだけで集まった人間達の期待感が高まり、その様子を見てレノはこの国において王国騎士という存在がどれだけ特別な存在なのかを改めて思い知る。
一般の間でも王国騎士という存在は羨まれる立場であり、ある意味では国王よりも特別な存在として認識されている。理由としてはライコウやセツナの存在が大きく、どちらも数え切れないほどの功績を残していた。
ライコウは王国騎士の中でも古株であり、国境の守護を任される程の重大な役目を与えられている。セツナも王都の守護という大任を任され、しかも彼女の場合は小さい頃に黒狼が送り込んだ刺客を返り討ちにした時から様々な逸話を作り上げていた。そのせいで王国騎士という存在は増々世間に知られ、その二人と立場的には同格であるドリスに期待を抱く人間がいても仕方がない。
「……ほ、本当に上手く行くんですの?なんだか皆さんを騙しているようで心苦しいですわ」
「大丈夫、きっと……多分、上手く行くよ」
「本当に大丈夫ですの!?」
「流石に絶対に大丈夫とは言い切れないよ」
アルトの作戦を事前に聞いているとはいえ、ドリスは本当に今回の作戦が上手く行くのかと不安を抱かざるを得ない。失敗すれば大勢の人間の命が危うくなるため、なんとしても成功しなければならない。
緊張しているのはレノも同じであり、今回の作戦の要はレノとドリスの二人である。この二人がどうにかゴブリンキングの元まで辿り着かなければ作戦は決行出来ず、失敗すれば多くの人間の命が失う可能性も高い。だが、王都の援軍が到着するまで持ち堪えられる確証がない以上、他に手はなかった。
「……大丈夫、二人とも何があろうと私達が守る」
「僕も一緒に行ければ良かったけど……足手まといになるだろうからね。城壁の上から応援するよ」
「うん、ありがとう……無事に戻ってこれたら、この鞄も返すからね」
レノはアルトから借りた鞄に視線を向け、今回の作戦にはこの鞄が必要だった。鞄の中にはゴブリンキングを倒すための重要な道具が入っており、どうにかレノはドリスと共にゴブリンキングの元まで辿り着かなければならない。
同行者としてレノとドリスの他には当然ながらネココも付いていき、他にも十数名の冒険者と傭兵が同行する予定だった。ゴブリンキングが存在するのは南側の城壁から離れた場所だが、魔物の軍勢はゴブリンキングから少し離れた場所で未だに陣取っている。
「ゴブリンキングに近付くためにはまずは南側とは別の城門から外へ抜け出し、回り込むように移動しなければならない。出来る限りはゴブリンキングや魔物の軍勢に接近を気付かれずに行動する必要がある」
「でも、そんな事が可能なのか?」
「あれだけの数の魔物の軍勢に見つからずにゴブリンキングの元に近付くなんて……」
「勿論、途中で必ず気づかれてしまうだろう。だが、いかにゴブリンキングに近付けるかだ。君達の役目はドリス君とここにいるレノ君をゴブリンキングの元まで送り込むだけでいい、戦闘が始まった際は他の魔物がゴブリンキングに近づけさせないようにすればいいんだ」
「ほ、本当にそれだけでいいのか?」
「ああ、ゴブリンキングを倒す役目はこの二人に任せればいい。君達は戦う必要はないんだよ」
ゴブリンキングとの直接戦闘しなくてもいいという言葉に冒険者と傭兵は安堵するが、一方でたった二人だけでゴブリンキングに挑むつもりなのかと内心驚きを隠せない。
しかし、ゴブリンキングとの戦闘の際はレノとドリス以外の面子はネココを除けば足手まといになる可能性が高く、あくまでも彼等にはゴブリンキング以外の存在が近付けないように足止めを任せる。ネココも戦闘の際はレノとドリスの手助けは行わず、他の者と同じように彼等の援護に集中する予定だった。
「ウルとスラミンも連れて行っていいかな?」
「勿論だ、むしろ逃げる事を考えれば同行させるべきだろう。魔物の方がむしろ警戒せずに近付けるかもしれないからね」
「ウォンッ!!」
「ぷるる〜んっ!!」
「……頼りにしている」
今回の作戦はウルとスラミンも同行し、これでアルトを除けばレノ達は全員で戦う事になる。作戦の内容を頭の中で繰り返し、必ずゴブリンキングを倒してシチノの平和を取り返す事を決意する。
「では……皆さん、行きましょう!!この街の平和のために私達に力を貸して下さい!!」
『うおおおおっ!!』
ドリスの言葉に同行する冒険者と傭兵は気合のこもった歓声をあげ、まずはゴブリンキングの元に向かうため、南門から離れて別の城門から外へと移動するために行動を開始した――
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