第303話 脅威ではない
「なんて奴だ……あれがゴブリンキングか」
「……珍しい、アルトがあんな魔物を見ても興奮しないなんて」
「流石の僕もあんなのを見せつけられたら興奮して喜んではいられないよ……」
普段のアルトならば珍しい魔物を見れば興奮して調べようとする所だが、土鯨の時と同様に圧倒的な存在感を放つ魔物には委縮してしまい、流石に研究対象としては見れないらしい。
ゴブリンキングが遂に姿を現した事で城壁内の人間は恐怖を抱き、想像以上に驚異的な存在感を放つゴブリンキングに怖気づいてしまう。一方で魔物の軍勢もゴブリンキングの存在を恐れるように動けずにいた。
――一般的には最弱の魔物として認識されている「ゴブリン」そのゴブリンの最上位種である「ゴブリンキング」その存在感は最早ゴブリンの枠を超えた怪物としか表現できない。
ゴブリンキングがどのような経緯で誕生するのかは改名されておらず、100年に1度の単位で出現する事が多い。その強さは並の魔物の比ではなく、場合によっては竜種や土鯨のように特級の危険種として指定されるほどである。
砂漠を蹂躙していた土鯨と比べれば戦闘力という点においてはゴブリンキングは土鯨には及ばない。しかし、土鯨の場合は砂漠の外には出られないのに対し、ゴブリンキングの場合はゴブリンを集め続けて勢力を増やして人間の街を襲う。放置し続ければいずれは勢力を大きくさせ続け、国の脅威となり得る存在へと変わるだろう。
「ギアアアッ……!!」
スカーの折檻を終えたゴブリンキングは街に視線を向けると、手にしていた樹木に視線を向け、無造作に樹木を放り込む。その結果、投げ放たれた樹木は数百メートルも離れていた城壁へと衝突し、振動が城壁の上の人間へと襲い掛かる。
「うわぁっ!?」
「きゃああっ!!」
「ば、化物め……!!」
城壁に投げ放たれた樹木が突き刺さり、その光景を確認した人間達は信じられない表情を浮かべる。ゴブリンキングの膂力は巨人族を遥かに上回り、こんな存在と戦わなければならないのかと城壁の人間達は背筋が凍り付く。
「アガァッ……」
ゴブリンキングは城壁の様子を確かめると、何を思ったのか眠たそうに欠伸を行い、その場で横たわる。その光景を目にした城壁の人間達は呆気に取られるが、ここでネココがゴブリンキングの行動の真意に気付く。
「……あいつ、私達は脅威じゃないと判断した。だからあんな風に私達の前で堂々と眠り始めた」
「くっ……私達の事を完全に舐めていますわ」
「だが……戦力差は圧倒的だ」
「クゥ〜ンッ……」
「ぷるぷるっ……」
「…………」
敵を前にしながら堂々と眠り始めたゴブリンキングに対してレノ達は悔し気な表情を浮かべるが、現段階では何も出来ない。眠りこけている相手に何もすることが出来ないという現状にレノ達は悔しく思う一方、自分達では何も出来ないう現状に焦りを募らせる。
――その一方で先ほど折檻されたスカーは眠りこけたゴブリンキングに視線を向け、目つきを鋭くさせていた。その瞳の奥には怒りの炎を宿していた
※短めですが、ここまでにしておきます。
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