第286話 ホブゴブリンとボアの強襲

「な、何だあれは……ホブゴブリンがボアを従えているのか!?」

「このままだと街に避難しきれていない人たちが……何とかしないと!!」

「くそっ……ウル、行くぞ!!」

「ウォンッ!!」

「スラミン、私達も……」

「ぷるぷるっ!!」



レノはウルに乗り込み、ネココもスラミンの頭の上に移動する。非戦闘員であるアルトは同行しても役には立てないと判断し、ここで馬車の中に避難する事にした。一方でドリスはレノの後ろに移動し、共に乗り込む。



「レノさん、私も一緒に行きますわ!!」

「僕はここで隠れているよ……終わったら、迎えに来てくれるかい?」

「分かった!!アルトも気を付けてね!!」

「……かなり距離が縮まってきた、急いだほうがいい」



避難民とボアに跨ったホブゴブリンとの集団との距離は既に1キロを切り、避難民たちはホブゴブリンとボアの存在に気付いて混乱状態に陥っていた。



「ひいいっ!?ご、ゴブリンだ!!またゴブリンが現れたぞ!?」

「いやぁあああっ!!助けてぇっ!!」

「も、もうお終いだぁっ……」

「あ、諦めるな!!ここには兵士だっているんだ、きっと守ってくれるさ!!」



避難民は急いでシチノへ向けて向かうが、数百人の人間が一気に受け入れる事など出来ず、列を揃えていた兵士達が慌てて迫りくるホブゴブリンとボアの集団の元へ向かう。



「おのれ、ゴブリンどもめ!!遂にこの街まで攻めてきたか、お前達行くぞ!!」

「し、しかし……敵はボアに乗り込んでいます!!我々だけでは……」

「馬鹿者!!ここで我々が踏ん張らなければ誰がこの街を守る!?それに彼等を見捨てるつもりか!!戦え、それしかないのだ!!」



街の警備兵たちは馬に乗り込んでいた者はすぐに避難民と街を守るためにボアとホブゴブリンの集団の元へ向かい、撃退の準備を行う。だが、相手は10体のボアとそれを従えるホブゴブリンであり、ただの兵士には荷が重い。


列を整理していた兵士の数は100人程度であり、到底その数ではボアやホブゴブリンを倒すどころか足止めさえも難しい。しかし、帝国の兵士として彼等は引き下がるわけにはいかず、迎撃の準備を行う。



「……ここの兵士はゴノと違って腐っていないみたい」

「そうだね、俺達も力になろう!!」

「よし、行きますわよ!!」

「ウォオオンッ!!」

「ぷるる〜んっ!!」



レノ達は迎撃の準備を整えた警備兵と、ホブゴブリンとボアの群れの間に割り込む形となり、唐突に現れたレノ達に警備兵は驚く中、真っ先に仕掛けたのはレノだった。



(よし、まずは武装していない奴から狙う!!)



ボアに残り込んだホブゴブリンの内、鎧や兜などを身に付けていない個体を確認した

レノは弓を取り出すと、瞬時に魔弓術を発動させて打ち込む。次々と矢はを放ち、確実にホブゴブリンの急所を狙い撃つ。



「ギィアッ!?」

「ギャウッ!?」

「アガァッ!?」

『グギィイイッ……!?』



鎧兜で身を守っていなかった3体のホブゴブリンの頭部をレノは正確に撃ち抜き、その光景を確認した他のホブゴブリンや人間達は驚愕の表情を浮かべる。魔弓術を利用すればレノの矢は絶対に外さず、更に彼は続けて矢に余分に魔力を込めて放つ。


鎧兜で身を守っているホゴブリンに対しては直接狙うのではなく、彼等が乗り込んでいるボアに向けてレノは矢を放つ。加速した矢はボアの眉間に的中し、肉体を貫通する。



「プギィッ……!?」

「グギャッ!?」



ボアが頭を撃ち抜かれた事で背中に乗っていたホブゴブリンは体勢を崩し、地面に倒れ込む。他にも背中に乗っていたホブゴブリンが殺された事で移動していた3体のボアも足を止め、混乱したように立ち止まる。これで合計で4体のボアとホブゴブリンの足止めに成功した。



(残りは6体か……)



魔弓術でこのまま仕留めるべきかとレノは考えたが、ここで矢筒に矢が残っていない事に気付く。先の戦闘でレノは矢を大量に使い込んでしまった事を思い出し、仕方なく弓を背中に戻して蒼月と荒正を引き抜く。



「皆!!援護をお願い!!」

「分かりましたわ!!」

「……問題ない」

「ウォオオンッ!!」

「ぷるるんっ!!」



ウルは咆哮を上げてボアの1頭に飛び込み、首筋に喰らいつく。スラミンの方も身体を弾ませてボアに体当たりを行い、この際にネココもスラミンの頭から跳躍し、ホブゴブリンに切りかかった。



「ぷるんっ!!」

「プギィッ!?」

「辻斬り」

「グギャアッ!?」



スラミンに体当たりされたボアは体勢を崩し、身体がよろめく。柔らかいスライムとはいえ、勢いを付けた状態で体当たりされればボアも怯む。その間にネココはボアの背中に移動し、性格に鎧の隙間に刃を突き刺して急所を狙う。


ネココの使用する「辻斬り」は不意打ちや急所を狙う際に暗殺者がよく利用する戦技であり、鎧と兜の隙間に首筋を貫かれたホブゴブリンは地面に倒れ込む。その間にもレノ達も動き出し、ウルが抑え込んだボアの背中に乗り込んだホブゴブリンにドリスは攻撃を仕掛けた。

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