第281話 二刀流
「ウル、行くぞ!!ドリス、援護して!!ネココはアルトを守って!!」
「ウォンッ!!」
「分かりましたわっ!!」
「……仕方ない、私の後ろに隠れていて」
「頼んだよ」
レノはウルとドリスと共に駆け出し、迫りくるホブゴブリンの集団へと向かう。アルトの護衛はネココに任せると、まずはレノは両手に握りしめた剣と刀を振りかざす。
「嵐刃!!」
「グギャアッ!?」
「グギィッ!?」
二つの刃を交差するように振りかざすと、十字のように放たれた風の斬撃が2体のホブゴブリンを吹き飛ばす。レノの嵐刃は距離が遠いほどに威力を落とすが、二つの嵐刃を組み合わせれば威力も距離も伸びる。
荒正と蒼月を両方同時に使用して戦うのは初めてではなく、蒼月を手に入れてからはレノは毎日のように訓練し、二刀流でも戦う術を身に付けようとしていた。また、ドリスも先日のセツナとの戦闘以来、より一層に自分の魔法剣の派生技を生み出す。
「私も負けていられませんわ!!爆火斬!!」
『ギィアアアッ!?』
ドリスは剣を振りかざすと、刀身に纏わせていた炎を広範囲に放ち、周囲のゴブリンを蹴散らす。爆炎剣の応用技であり、爆炎の力を利用して広範囲に存在する敵を蹴散らす技だが、更に彼女は新しい魔法剣を繰り出す。
「まだまだぁっ……爆裂剣!!」
『ギャアアアッ!?』
まるでレノの「地裂」の如く、ドリスは下から刃を繰り出すと、地面を派手に吹き飛ばす。その際に爆発の衝撃によって土砂が前方に放たれ、ゴブリン達へ爆風が襲い掛かる。
――これまでにドリスは「爆炎剣」で相手を斬り付けるのと同時に爆炎を放つ攻撃しか出来なかった。しかし、毎日の訓練によって彼女も確実に成長しており、派生技を生み出せるまでに成長した。
爆火斬は横向きに振り払う際に爆炎を広範囲に拡散させ、爆裂剣の場合は正面に範囲を狭める代わりに飛距離を伸ばす。威力自体は爆炎剣には劣るが、爆炎剣と違ってこちらの二つの技は離れた場所からでも攻撃が出来る。
先のセツナとの戦闘でドリスは爆炎剣だけでは彼女に敵わず、レノを見習って自分なりに新しい技を生み出す事を決めた。先日の決闘は引き分けに終わったが、ドリスの中ではセツナとの実力差はまだまだ存在した。
(あの女にだけは負けられませんわ!!)
剣を振るいながらもドリスはホブゴブリンにセツナの姿を重ね、瞳に炎を宿しながら刃を振りかざす。
「爆炎剣!!」
「グギィッ……ギィアアアッ!?」
大盾を構えたホブゴブリンにドリスは躊躇なく刃を振り下ろすと、刃が触れた際に強烈な爆発が発生し、大盾ごとホブゴブリンを吹き飛ばす。爆発をまともに浴びたホブゴブリンは黒焦げと化し、地面に倒れ込む。
「ガアアアッ!!」
「グギャアッ!?」
「グギィイイッ!?」
ウルも2頭のホブゴブリンを前脚で突き飛ばすと、押し倒した状態で頭に喰らいつき、引き裂く。その姿を目撃してレノは最後に残ったホブゴブリンに向けて接近する。
「お前が親玉か!!」
「グギィッ……!!」
最後に残ったホブゴブリンだけが頭にパンダナのような物を巻きつけており、装備は斧と盾を保有していた。ホブゴブリンの中でもひときわに大きく、迫りくるレノに対してホブゴブリンは斧を振りかざす。
敵が斧を振り抜いてきたのに対してレノは両手の武器を構え、片手の状態では残念ながらレノが得意とする地裂や嵐斧などの剣技は繰り出せない。だが、二刀流だからこその技もレノはしっかりと編み出していた。
「火炎剣!!」
「グギャッ!?」
蒼月に纏わせていた風の魔力に火属性の魔石から火の魔力を加え、刀身に炎を宿す。これによってレノは炎と風の魔法剣を同時に発動させ、斧を繰り出そうとしたホブゴブリンは炎を見て一瞬怯む。
「喰らえっ……火炎刃!!」
「グギャアアアッ!?」
左手の蒼月に炎を纏わせた状態でレノは右手の荒正を叩きつけると、荒正に纏わせた風の魔力も加わり、普段放つよりも強烈な火炎刃を生み出してホブゴブリンの全身を飲み込む。
火炎に飲み込まれたホブゴブリンは悲鳴を上げ、地面に倒れ込む。全身が黒焦げになったホブゴブリンをレノは見下ろすと、額の汗を拭って両手に纏わせていた魔力を掻き消す。
「ふうっ……これで全員倒したかな」
「や、やりましたわね。ふうっ、でも流石に少し疲れましたわ」
「ウォオオオンッ!!」
ホブゴブリンを全員倒し、更に残ったゴブリン達もいつの間にか逃げ出してしまったらしく、レノ達の周囲にはゴブリンとホブゴブリンの死骸だけが残っていた。ウルは勝利の雄叫びを行うと、その間にレノ達の元にアルトとネココがやってきた。
「流石だね、これだけの数のゴブリンとホブゴブリンを倒すなんて……土鯨との戦闘から皆一層に腕を上げたね」
「まあ、土鯨と比べたら大したことないよ」
「ですけど……この地域にこれだけの数のゴブリンとホブゴブリンの群れが存在するなんて思いませんでしたわ」
「……こいつら、普通じゃなかった」
ネココは倒れているホブゴブリンに視線を向け、ここで彼女は何かに気付いたようにホブゴブリンの死骸を指差す。
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