第273話 オリハルコンの刀「蒼月」

――拠点へ引き返した鍛冶師は数日も費やしてオリハル水晶の加工を行い、遂には伝説の金属オリハルコンの加工に成功した。出来上がったオリハルコンの半分はレノ達の物であり、それを利用してレノ達が依頼した物を作り上げていく。



「よし、出来たぞお前等!!」

「おおっ!!」

「な、なんて美しさですの……」

「凄い……これがオリハルコンなのか」

「……綺麗」



ドルトンが作り上げたオリハルコン製の道具をレノ達に渡すと、それぞれは受け取った物を見て驚く。アルトはペンダント、ドリスは指輪、ネココはイヤリングを受け取り、最後にレノは4人の中で唯一の武器を受け取る。



「こいつの名前は「蒼月」だ、大切に扱えよ!!」

「凄い……まさか、本当に作ってくれるなんて!!」



レノが受け取ったのは刀身が青色に染まった「刀」であり、外見は荒正と酷似している。ドルトンから蒼月と名付けられたオリハルコン製の刀を受け取ったレノは感動しながらも刀を受け取り、試しに刃を振り抜く。


オリハルコンで構成された刃は青色に光り輝き、一方で荒正と比べて軽量であった。これならば片手で使っても問題なく扱え、試しにレノは魔法剣を発動させる。



「よし……はあっ!!」

「きゃっ!?」

「うわっ!?」

「にゃうっ!?」



蒼月を手にした状態でレノは魔法剣を発動しようとすると、荒正よりも素早く刀身に魔力を込める事に成功した。レノは驚いて風の魔力を纏った剣に視線を向け、ここである事に気付く。魔法金属製の武器は魔力の伝達が早いため、荒正以上に魔力が込めやすい事を知る。



「凄い、凄いよこの刀……今まで以上に魔法剣が使えそうだ」

「す、素晴らしいですわ……私の魔剣「烈火」にも負けず劣らずの名剣ですわ!!」

「それ、さりげなく自慢してる?」

「ふんっ、そいつは俺達の最高傑作だ。大事に扱えよ……そうそう、それと余った分の素材でこれも作ってやったぞ」



ドルトンはレノ達が依頼した分だけでは素材が余ったため、その素材を利用して作り出した道具を取り出す。彼はそれをレノに渡すと、受け取った物を見てレノは驚く。



「これは……魔法腕輪ですか?」

「ああ、ちょうど一人分だけ余ったんだ。俺達に魔導士はいないからな、余っても仕方ないから持って行ってくれ」

「良かったじゃないか、レノ君。遠慮なく受け取ると良いよ」

「え?でも……」

「私は魔法鞘があるから使えませんし、レノさんが使った方がいいと思いますわ」

「……レノが一番頑張ったから受け取るべき」



自分が最もオリハルコンの素材を使用しているにもかかわらず、更に魔法腕輪を受け取る事にレノは躊躇するが、仲間達の言葉を聞いて頷く。既にミスリル製の腕輪はあるが、改めて受け取ったオリハルコン製の腕輪を身に付け、魔石を装着する。


ミスリルよりもオリハルコンの方が魔力の伝達は早く、これでレノは瞬時に魔石から魔力を引き出す事が出来るようになった。改めてレノはミスリル製の腕輪に視線を向け、ダリルの娘であるムミョウから受け取った大切な代物のため、捨てる事は出来ないので荷物の中に入れておく。



「ドルトンさん、色々とありがとうございました」

「気にすることはない……残りのオリハルコンは俺達のもんだ。好きに使わせてもらうぞ」

「はい、本当にありがとうございました」

「……ああ」



ドルトンはレノ達に頭を下げられると若干照れ臭そうな表情を浮かべて自分の部屋へと戻り、これでレノ達はオリハルコン製の装備を手に入れたため、もうここに留まる理由はない。



「それでは……そろそろこの場所ともお別れですわね」

「ああ、名残惜しいけど出発しよう」

「……船長が砂船で砂漠の外まで送り届けてくれる。次の街に迎えば、その次は王都へ辿り着く」

「ああ……王都までもう少しか」



レノは当初の目的を思い出し、最初は王都を目指すために旅に出た。ここまで色々とあったが遂に目的地まであと一つの街を通り過ぎれば辿り着ける事に緊張を隠せず、拳を握りしめる。



(義父さん、爺ちゃん……ここまで来たよ)



既にレノが山を下りてから半年近くの月日が流れており、思っていた以上に砂漠に滞在していた。だが、もうここへの用事は全て済ませ、レノ達は王都へ向けて出発する事を決意した――






――その日の晩はレノ達の見送りのために魔狩りは宴会を開いてくれ、ポチ子はレノ達が離れる事を聞いて悲しみのあまりに泣き喚いたが、結局は彼等を見送ってくれた。ゴンゾウもレノ達が離れる事を寂しく思いながらも彼は快く受け入れ、義兄弟の杯を交わさないかとまで言ってくれた。


船長はこのままレノ達が魔狩りに入らないかと提案してくれたが、レノは旅の目的を思い出し、まずは最初に王都へ向かう事は最初から決めていた。このまま魔狩りと共に生活するのも悪くはないが、見聞を広めるため王都へ向かえというロイからの言葉を思い出し、王都へ向かう事を伝えると納得してくれた。


こうしてレノ達は遂に砂漠を離れ、王都へと向かうために次の街を目指す。だが、その街にてレノ達は思いもよらぬ人物と再会する事になる――

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