第267話 オリハルコンを求めて
「ううっ……まだ頭が痛い」
「全く、飲み過ぎですわアルトさん。調子に乗ってトレントの樹酒を飲むから……」
「……自業自得」
「大丈夫?背中を摩ろうか?」
「あ、ありがとう……でも、今は放っておいてくれ」
二日酔いの影響を完全に抜け切れていないアルトは船の上でへたり込み、レノ達の中で彼だけは酒を飲んでいた。ちなみにレノは未成年なので酒は飲まなかったが、他の者はちゃっかりと飲んでいる。
ドリスとネココも酒は飲んでいたが、二人は酔いつぶれる程には飲まず、平気そうであった。一方でアルトの方は他の船員と共に飲み明かし、その影響で未だに調子が悪そうだった。一方で一番酒を飲んでいた船長は何事もなかったように平然としていた。
「何だ何だ、学者のあんちゃんはまだ酔いつぶれているのか?全く、しっかりしてくれよ。俺達の中でオリハルコンの鉱石を確かめられるはあんちゃんだけなんだからよ」
「わ、分かっている……うぷっ、ま、任せてくれ」
「アルトさんが魔法金属の鉱石にも詳しいと聞いたときは驚きましたけど、本当に色々な知識を持ち合わせているのですね」
「まあね、子供の頃はよく本を読んでいた影響かもしれないね……う、もう駄目だ。うおぇええええっ……!!」
「わあっ!?大丈夫!?」
耐え切れずにアルトは船の外に吐き出してしまい、その背中をレノは摩ってやる。そんなアルトの様子を見てネココは呆れるが、ここで船首に存在するポチ子は声を上げた。
「船長!!見えてきたぞ、遺跡だ!!」
「おう、遂に辿り着いたか……船を停めろ!!」
ポチ子の言葉を聞いて船長は船を停止させると、レノ達の視界にも砂漠に存在する遺跡の建物を捉えた。外見は確かにレノが前に見た砂漠の遺跡と似通っており、この砂漠に暮らす者からすれば珍しくもない風景だった。
「よし、梯子を下ろせ!!魔物の警戒を怠るな!!ドワーフ共、行くぞ!!」
「全く、年寄りをこき使いおって……」
「しかし、伝説の魔法金属か……腕が鳴るのう」
今回の探索にはドワーフの力も借り、鉱石の知識や発掘に関しては彼等の方が向いていた。数人のドワーフ達と共にレノ達も地上へと下りると、周囲を経過しながらも遺跡へと向かう。
「ふむ……見た限りでは僕達がこれまで発見した遺跡とはわずかながらにデザインが異なるね」
「え?そうなの?俺には全く同じように見えるけど……」
「建物の柱に刻まれている紋様をよく見てくれ。似ているけれど、若干違うだろう」
「……そんな事、いちいち覚えていない」
アルトによればこの遺跡は他の砂漠の遺跡とは異なり、柱の紋様が建物の設計が微妙に異なるらしい。その事にアルトは興味を抱き、調べ始める。
一方で船長はドワーフ達を連れて先に進み、彼は建物の裏手に移動すると、古い羊皮紙を握りしめながら何かを確かめるように建物の柱を調べ始める。その様子に気付いたポチ子が不思議そうに声をかけた。
「何してんだ船長?早く入ろうぜ?」
「ちょっと待ってろ……あった、ここだ!!」
「どうしたんだ急に……うおっ!?」
船長は羊皮紙を手にしながら柱をべたべたと触っていると、やがて柱の一つに突起物のような物が存在する事に気付き、その突起物を押し込むと突如として建物が振動し、やがて建物の壁が動いて隠し通路が出現した。その事にレノ達は驚くと、船長は笑みを浮かべる。
「はははっ!!親父の言っていた通りだ、この絵に描かれている柱を調べれば隠し通路が現れると言っていたが、まさか本当に存在したとはな!!」
「なるほど……こうやって隠されていたから今まで誰にも気づかれる事はなかったのか」
「よし、行くぞお前等!!」
どうやら船長の持っていた羊皮紙は船長の父親が記していた物らしく、隠し通路を開く方法が記されていたらしい。船長は全員を先導して隠し通路を進むと、やがて大きな門の前に辿り着く。
「この門は……どうやら鍵が掛かっているようだね。鍵穴は見当たらないし、内側から鍵を掛けられているのか」
「えっ!?それじゃあ、中に入れませんの?」
「大丈夫だ、こいつの開き方も書いてある。えっと……何だこりゃ!?」
「どうしたんですの!?」
船長は羊皮紙の内容を見て素っ頓狂な声を上げ、その反応にレノ達は戸惑うと、彼は困った表情を浮かべて羊皮紙の内容を示す。
「あのくそ親父、叩けば開くなんて適当な事を書いてやがる!!」
「えっ……この扉を?」
「……頑丈そう、すくなくとも無理やり壊す事は無理そう」
レノ達の前に存在する青色の門は普通の硬さではなく、試しにネココが指先で叩いてみるが、並の鋼鉄よりも固い金属だと判明した。
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