第266話 砂漠の秘宝

「本当にすまねえ、お前等には世話になったのに……そうだ、それならこうしよう!!今度の航海で手に入れた宝物の分け前をお前等に多めに渡す!!それでどうだ?」

「航海?どういう意味ですか?」

「また魔物を狩るのかい?」

「いいや、違う違う!!今度の獲物は魔物じゃねえ、砂漠の秘宝と呼ばれる伝説の鉱石を手に入れるんだ!!」

「船長、まさか遂にあの場所へ行くのか!?」



船長の言葉にポチ子は驚き、その反応にレノ達はどういう事なのかと尋ねようとすると、船長はこの砂漠に伝わる伝説の秘宝と呼ばれる貴重な鉱石が発掘できる場所がある事を話す。



「この砂漠には鉱石が発掘できる場所がいくつか存在する。その中で今までは土鯨の住処から近いという理由で誰も辿り着けなかった場所があるんだよ」

「えっ?そんな場所があるんですか?」

「ああ、何隻もの船がその場所を目指して戻ってこなかった。だが、俺の長年の勘が告げている。その場所にはきっと伝説の鉱石と呼ばれた「オリハルコン」が眠っているとな!!」

「オリハルコン……ミスリルをも遥かに上回る価値を誇る希少金属の事かい?」



アルトは船長の言葉を聞いて驚き、オリハルコンは魔法金属の中でも希少価値が高く、その性能はミスリルをも上回るという。船長によればこれまで土鯨の存在が邪魔をして近づく事も出来なかった場所にそのオリハルコンが発掘できる場所が存在するらしい。



「目的地はここ、この場所は一件すれば何もないように見えるが、俺の親父の話によるとこの場所に遺跡が存在する!!その遺跡は地下に通じていて、その場所にオリハルコンが手に入る鉱脈が残ってると俺はガキの頃から聞かされてきたんだ!!」

「遺跡……そういえば俺達も遺跡を見かけましたけど、何なんですかあれ?」

「さあな、だがこの砂漠には遺跡は割とよく見かけるんだ。誰が何の目的で建てたのかは知らないな」



レノ達は何度か砂漠で遺跡を見かけたが、遺跡がどの時代に何の目的で建てられたのかは砂漠の住民すら知らない。殆どの遺跡は既に崩壊済みで金目になりそうな物はないが、船長によると彼が父親から聞かされた話によると土鯨の住処の近くには遺跡が存在し、その遺跡の地下に伝説の魔法金属オリハルコンを作り出せる鉱石があるという。


土鯨が存在した時はその場所には船は近づけず、今までは手に入らなかった。また、この遺跡が地下に繋がる事は船長しか知らず、他の者が狙う可能性は低い。なにしろ遺跡自体はこの砂漠では別に珍しい物でもなく、偶然に発見されたとしてもわざわざ調べる人間はいない。



「オリハルコンは希少金属として価値もとんでもない!!場合によっては土鯨よりも金になるかもしれねえ!!そこでどうだ?お前等も一緒に来ないか?勿論、護衛料も支払うぜ……後払いになるけどな」

「……どうする?」

「魔法金属のオリハルコンか……俄かには信じがたい話だね」

「私は行きますわ!!本当は王都から呼ばれてますけど……伝説の魔法金属が手に入るのならば黙っていられませんわ!!」



ネココとアルトは船長の言葉に半信半疑であったが、ドリスは意外な事に乗り気であり、滅多に手に入らない魔法金属であるオリハルコンが手に入る可能性があるのならば挑みたいらしい。


レノも魔法金属という言葉に興味を抱き、自分の持っている鞘と指輪と魔法腕輪に視線を向ける。この鞘と指輪と魔法腕輪はミスリル製であるが、もしもオリハルコンが手に入れば現在装備している物よりも良い道具が手に入るかもしれなかった。



「分かりました。それじゃあ、俺達も付き合います」

「やった!!まだ兄ちゃん達と一緒にいられるんだな!?」

「頼りにしているぞ」

「よし、今日は宴会だ!!実は俺のへそくりを使って酒とご馳走をたんまりと用意したんだ!!今日は朝まで飲むぞ!!」

『うおおおおおっ!!』



土鯨を倒した事で船長も船員も禁酒を止め、遂に酒を飲む事が出来る。大人達は久々の酒に喜び、子供達もご馳走と聞いて瞳を輝かせた――






――宣言通りに朝まで宴会を行い、結局は大人達は二日酔いで倒れたせいで出発するのに時間が掛かってしまった。だが、遂に新しい砂船は発進し、オリハルコンが存在するという遺跡へと向かう。

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