第251話 氷結の騎士と爆炎の騎士

「あうっ!?」

「くぅっ!?馬鹿な、これほどの力をどうやって……!!」



お互いの魔力が反発した事でドリスとセツナは吹き飛ばされ、ドリスは派手に尻餅をつき、一方でセツナは膝を着く。以前に戦った時よりもドリスの魔力が明らかに強くなっており、その事実に動揺を隠せない。


ドリスもこれまでのレノの指導の元、魔力を操作する技術を磨き続けた。その成果で以前よりも魔法剣の力も強まっており、セツナに迫る勢いだった。その事実にセツナは苛立ち、本気を出そうとした。



「おのれ!!」

「セツナ様、いけません!!それ以上は……!?」



セツナはドリスに対して剣を構えると、距離が離れているにも関わらずに振り下ろす。今度は「氷柱」を想像させる形状の氷像を作り出すと、ドリスに放つ。



「くっ……負けませんわ!!爆火斬!!」

「何だと!?」



迫りくる氷柱に対してドリスは剣を振りかざすと、迫りくる氷柱に対して刃を振りかざし、衝突した瞬間に炎の魔力を発散して爆破させる。氷柱は粉々に砕け散り、周囲へと散らばる。



「はあっ、はあっ……!!」

「……なるほど、確かに前に戦った時よりは少しは成長しているな。だが、もう限界のようだな」

「な、舐めないでください……まだ、やれますわ!!」



氷柱を破壊する事には成功したが、ここまでの攻防でドリスは明らかに魔力を消耗し、弱っていた。その様子を見てセツナはこれ以上に続ければドリスは魔力不足を引き起こして倒れる事に気付き、黙って剣を収めた。



「ここまでだ、弱り切った今のお前を倒しても意味はない」

「な、何ですって……私はまだ、戦えますわ!!」

「動く事もままならいくせに無理をするな……この勝負は引き分けにしておいてやる。次に会った時は容赦はしないぞ」

「ま、待ちなさい……あうっ!?」



黙って背中を向けて立ち去ろうとするセツナに対してドリスは追いかけようとしたが、足に力が入らずに膝を着いてしまう。誰の目から見てもドリスはもう戦える状態ではなかった。


ドリスの爆炎剣は魔力消耗量が大きく、魔石の補助があっても本人の魔力を大きく削ってしまう。その影響でもうまともに戦う事も出来ない程に疲労し、やがて彼女は砂の上に倒れ込む。



「ううっ……ま、まだ私は……!!」

「……ふんっ」



最後の最後まで戦意を失わず、自分に挑もうとするドリスの姿にセツナは黙って鼻を鳴らし、ゆっくりと自分の船の方向へ向かう。この時の彼女の表情は不機嫌そうでありながら、口元は少し笑っている様子だった――






――王国騎士同士の勝負という前代未聞の展開に陥ったが、結果から言えば勝負は引き分けで終わり、互いの面子は守られた。この後、盗賊王ヤクラは白狼騎士団に引き渡され、彼等が使用していた3隻の船も回収される。


約束通りに魔狩りの船長は白狼騎士団と同行する形で王都へ向かい、その間に彼の部下は国が貸し与えた砂船を利用して生計を立てる。正式に王都で土鯨の討伐を果たした事が証明されれば莫大な報奨金が渡され、彼等も新しい砂船を正式に購入できるだろう。


一方でレノ達はこれで「黒狼」「蝙蝠」「盗賊王」の3つの組織の壊滅に成功し、これでもう彼等の命を狙う存在はいなくなった。更にドリスは盗賊王の捕縛、土鯨の討伐に貢献した事もきちんとセツナが報告し、国王はそれを聞いて大変に喜んだ。


王国騎士として今までは鳴かず飛ばずだったドリスであったが、他者の協力は遭ったとしてもかつて王国騎士を殺した事も有る土鯨の討伐に成功した事を賞賛し、国王は直々に彼女を表彰するために王都へ訪れるように連絡を送った――






※とりあえずはここまでです。次は閑話です。

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