第229話 ネココ達との合流

ネココが樹木へ切り裂いた瞬間、レノ達を拘束していた根は力が弱まると、地面の中に引っ込む。その直後、樹木に人面を想像させる皺が誕生すると、奇声を上げながら今度はネココの元に根が放たれる。



「ジュラァアアアッ!!」

「やっぱり、トレントだった……」

「砂漠地方に生息するトレントだ!!気を付けろ、そいつはいくら切ってもすぐに再生するぞ!!」

「その声は……アルト!?」

「私もいますわ!!」



近くの砂丘からアルトが声をかけ、更に彼の隣にはドリスも経っていた。ドリスは砂丘を滑り落ちると、魔剣を引き抜いて刃に爆炎を纏いながら切り裂く。



「爆炎剣!!」

「ジュラァアアアッ!!」

「……おおっ、中々やる」



ドリスが爆炎剣で斬り裂くと、樹木に炎が燃え移り、トレントは悲鳴を上げる。前にレノ達が遭遇したトレントと比べれば小ぶりではあるが、それでも能力は変わらない。


炎が全身に広まりつつもトレントは砂の中に隠していた大量の根を放ち、ネココとドリスを拘束しようとした。それに対してネココは右手に蛇剣、左手に短刀を取り出すとドリスの元に移動し、彼女を守るように剣を振るう。



「剣舞」

「きゃっ!?」



ネココは目にも止まらぬ速度で剣を振り抜くと、まるで舞うように動いて接近してくる根を全て切り裂く。この際に紫色の液体も迸るが、それを考慮して彼女は身に付けていたマントで身を防ぐ。


二人が身に付けているマントは全身を日光から覆い隠すための物であり、紫色の液体を浴びるとすぐに脱ぎ捨てる。やがて全身に炎が広がったトレントは燃えクズと化して砂漠に倒れ込む。



「ジュラァアアアッ……」

「あ、あれ?もう倒しましたの?おかしいですわね、こんなに早く燃え尽きるなんて……」

「……倒せたんだからどうでもいい」

「レノ君、無事かい!?怪我はしていないかい?」

「俺は平気だけど、ウルが……」



トレントがあっさりと倒せたことにドリスは戸惑うが、その間にアルトはレノの元へ向かう。彼はレノにまだ絡みついていた根の残骸を引き千切ると、倒れているウルの様子を伺う。そして安心したように呟いた。



「良かった……大丈夫、これは酔いつぶれて眠っているだけだよ」

「えっ……酔う?」

「ほら、顔を見てくれ。苦しそうなじゃないだろう?」

「グゥウッ……」



レノはウルの様子を伺うと、アルトの言う通りにいびきをかいて眠っていた。どういいう事なのかとレノは不思議に思うと、ウルの牙に根が絡みついている事に気付く。


根を牙から引っこ抜くと紫色の液体が出現し、それをアルトは覗いて臭いを嗅ぐと、彼は適当な容器に液体を注ぎ込んで調べる。



「ふむ……これはお酒だね。どうやらこのトレントの樹液は葡萄酒に近い性質らしい」

「お、お酒?毒じゃないの?」

「まあ、度数は強いけど身体に害はあるものじゃないよ。これを飲んだせいでウル君も酔っ払ったんだろうね」

「ああ……道理ですぐに燃え尽きたと思いましたわ」



アルトの話を聞いてドリスは納得した風にトレントの残骸に視線を向け、アルコールの度数が高い樹液が体内に入っていためにすぐに燃え尽きてしまった事が判明した。ウルが無事であった事にレノは安堵する一方、ドリス達がどうしてここにいるのかを問う。



「そういえば皆はどうしてここに?どうやってここまで来たの?」

「君がサンドワームを引き寄せて逃げた後、僕達も後を追いかけたんだ。だけど、砂漠に辿り着いたのまでは良かったけれど、砂嵐に襲われて危うく死にかけそうになったよ。そんな時に偶然にも通りすがりの砂船に救助されてこの街に運び出されたのさ」



どうやらアルトたちもレノと同様に砂漠に訪れた時に砂嵐に巻き込まれ、死にかけた所を砂船に救われたという。その後はムツノ行きの砂船に乗せてもらい、街に先に辿り着いていたらしい。



「目を覚ました時は船の上でしたから驚きましたわ。ネココさんなんか、レノさんを助けに行くと言って砂船を飛び降りようとして大変でしたわ……はうっ!?」

「……余計な事は言わないでいい、わがままおっぱい」

「わ、わがままおっぱいとはなんですの!?あ、いやん……そこは駄目ですわ」



余計なことを口走ろうとしたドリスにネココは後ろから抱き着き、胸を鷲掴む。彼女の大きな胸が揉みしだかれる姿にレノとアルトは恥ずかし気に視線を逸らし、互いの無事を祝う。


アルトたちが目を覚ましたのは街に到着する直前だったらしく、情報収集も兼ねて街中を探索していた所、広場で起きた騒動を耳にした。その後はネココがレノの臭いを捉え、後を追いかけていた所に偶然にも襲われるレノを発見したという。



「全く、君は本当に色々と巻き込まれやすいね。君と一緒だと退屈しないよ」

「面目ない……でも、皆が無事で良かったよ」

「……生きていて良かった」

「ですけど、レノさんはどうしてこんな場所に?私達を探して戻ろうとしていたんですの?」



再会の喜びを分かち合いながらもドリスはどうしてレノがこんな場所に居るのかを尋ねると、彼は魔狩りと呼ばれる組織に救われた事、そして土鯨を倒すために協力する事になった事を伝えた。

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