第218話 あたしは信じないからな!!
「なんだ、ポチ子か。お前も来てたのか」
「船長!!あたしはまだ納得してねえ!!どうして兄貴と私がこいつの面倒を見なきゃならないんだよ!?」
「言っただろう、この坊主は只者じゃねえ……きっと、俺達の力になってくれる。そう俺の勘が言っているんだ」
「だけど!!」
「あの、話が見えてこないんですけど……」
いきなり現れた犬耳の少女の言葉にレノは戸惑っていると、ゴンゾウは二人の間に割り込み、まずは少女の肩に手を置いて落ち着かせる。
「ポチ子、落ち着け。お前の気持ちはよく分かるが、まずは事情を説明して身体」
「あ、兄貴……分かったよ」
「兄貴?兄妹、なんですか?」
「兄貴分という意味だ。こいつは俺の娘じゃねえが、死んじまった親友の娘でな。この船で世話してやってるんだ」
「ふんっ!!」
ゴンゾウの事を兄貴と呼ぶ少女にレノは不思議に思うと、エイハブが彼女の事情を話す。ポチ子という名前の少女はレナを見ると鼻を鳴らし、不機嫌そうな態度を貫く。どうやら初めて会ったのに何故か嫌われているらしく、その事にレノは疑問を抱きながらも話を聞く。
「あの、さっき俺に手伝って欲しい事があるといってましたよね。それはどういう意味なんですか?」
「さっきも説明したが、俺達は砂海に生息する魔物を狩って生活している。だが、今回の航海の収穫だけだと心許なくてな、悪いがお前さんが倒したサンドワームの死骸はうちが回収して貰った」
「あ、そうだったんですか」
「サンドワームの死骸は食料としては価値はないが、鱗の部分は色々と使えるんでな。悪いと思ったが回収させてもらった。だが、サンドワームの素材だけだと売り払ってもうちの大喰らい共を養う事は出来なくてな……そこで俺達はもっと大物を狩る事にした」
「この船はとある魔物の生息地に向かっている。その魔物の名前は……」
ゴンゾウが言葉を言い終える前に船内に強烈な振動が走り、部屋が大きく傾く。これによってレノは体勢を崩して壁に激突するが、他の者は床に手を押し当てながらも何が起きたのかを確かめようとする。
「何だ!?何が起きやがった!!」
「親父!!窓の外を見ろ、奴が現れたぞ!!」
「そんな!?もう見つかったのか?」
エイハブはゴンゾウの言葉を聞いて部屋の窓から外を覗き込むと、そこには船の横を移動する大きな物体を確認し、彼は舌打ちを行う。予想よりも早く敵に見つかったと判断した彼はすぐに指示を与える。
「ちっ、仕方ねえ!!寝ている奴等を叩き起こせ、戦闘態勢を整えろ!!舵は俺が切る!!準備が終了次第、甲板に移動しろ!!」
「分かった!!」
「くそっ……ほら、あんたも倒れてないでさっさと準備しろよ!!」
「うわっ!?」
ゴンゾウはエイハブの指示に従って部屋の外へ移動すると、犬耳の少女はその後に続こうとしたが、すぐに何かを思い出したように部屋に戻ってくるとレノが最初に身に付けていた衣服を放り込む。
どうやら少女は洗濯した衣服を持ってきてくれたらしく、その中には退魔のローブも存在した。急いでレノは退魔のローブを着こむと装備を整える。何が起きているのか分からないが、とりあえずは甲板に向かう事にした。
「奴が現れたぞ!!」
「投擲槍の準備をしろ!!」
「今日こそ仕留めてやるぜ!!」
甲板にはエイハブ達以外の声が聞こえ、どうやら他の船員も目を覚ましたらしく、数名の巨人族の男性の姿が存在した。彼等は船の右側に視線を向け、甲板に搭載された大きな槍を射出するための巨大なボーガンを想像させる乗り物に乗り込んでいた。
(何と戦っているんだ!?)
レノは右側に視線を向けるが、そこには何も見えず、さきほどはエイハブの部屋で窓の外を見かけた時は巨大な物体が動いている姿を目撃した。だが、今現在は特に何も見えないが、船員たちは戦闘態勢を整えている。
やがて砂の中から巨大な物体が派手に砂煙を舞い上げながら出現し、その姿を見たレノは驚く。それは全身が土気色の鱗で覆われた巨大な生物であり、外見はまるで「鯨」を想像させた。
――オァアアアアアッ!!
鯨の咆哮が砂漠中に広がり、その声を耳にした者達はあまりの声量に耳を塞ぎたくなる。全身が土気色の鯨はレノ達が乗り込んでいる砂船と同程度の大きさを誇り、並走する形で移動を行う。
「土鯨が現れたぞ!!」
「よし、撃てっ!!」
「おらぁあああっ!!」
巨人族の船員は姿を現した土鯨なる魔物に対して投擲槍と呼ばれる装置から大きな槍を発射し、土鯨へと打ち込む。だが、槍は土鯨の身体に触れた途端に砕けてしまい、突き刺さる事もない。
金属を想像させるほどの硬度を誇る鱗であり、次々と槍が撃ち込まれるが土鯨は怯む様子も見せず、それどころか徐々に船に近付いてきた。遂には船に土鯨が衝突すると、船が大きく傾く。
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