第215話 砂漠地帯

「辻斬り……!?」

「駄目だ、ネココ!!」



攻撃を仕掛けとようしたネココだったが、そんな彼女にアルトは本を片手に大声を出す。しかし、既に振り抜かれた蛇剣は止められず、サンドワームの肉体に触れる。すると金属音が鳴り響き、攻撃を仕掛けたネココの方が弾かれてしまう。



「そんなっ!?何て硬さですの!?」

「やっぱり、そうか……資料によるとサンドワームの鱗は鋼鉄よりも固いんだ。並の武器では通用しない、だから危険度はタスクオークやトレントよりも高い!!」

「ギュロォッ!!」



鋼鉄をも上回る硬度を誇る鱗に覆われたサンドワームはネココの魔剣すらも弾き返し、それどころか空中に跳躍したネココを捕食しようと大口を開いて迫りくる。それに対してネココは蛇剣の刀身を伸ばし、どうにか地面に突き刺して刀身を縮めて空中から地上へ引き返す。



「回避!!」

「ギュロンッ!?」

「今だ!!」



喰われる寸前でネココは回避に成功すると、それを見ていたレノは剣を振り抜き、直接攻撃が効かないのであれば別の攻撃法を行うしかなかった。自分の鞘を手にしたレノは風と火の魔石を利用して魔力を引き出し、刀身に炎の竜巻を纏う。


プラントさえも倒した火炎旋風でサンドワームを仕留めようと仕掛けるが、この時にサンドワームはレノが炎の剣を纏った事に気付き、咄嗟に口元を塞ぐ。



「喰らえっ!!」

「ッ……!?」

「や、やりましたの!?」



レノが剣を突き出すと、火炎の竜巻がサンドワームの身体を飲み込み、サンドワームの身体に炎が纏う。その様子を見ていた者達は倒したのかと思ったが、サンドワームは全身が炎に飲み込まれた状態で地面に潜り込む。



「ギュロロロッ……!!」

「うわっ!?」

「に、逃げたのか!?」

「……助かった」



炎に包まれたサンドワームは地中へと潜り込むと姿を消し、その様子を見ていた者達は逃げ出したのかと安堵するが、ここでウルだけは何かを勘付いたようにレノの元へ向かう。



「ウォンッ!!」

「うわっ!?ウル!?」

「ぷるぷる~んっ!!」



ウルがレノの服に噛みつくと、そのまま彼を加えた状態で跳躍する。すると、スラミンが何かを感じ取ったように鳴き声を上げると、レノが存在した地面に亀裂が発生し、サンドワームが出現した。



「ギュロロロッ!!」

「うわっ!?こ、こいつ……!!」

「ウォンッ!!」



サンドワームは地面に潜り込んで逃げたのではなく、隙を突いて不意打ちするために潜り込んだに過ぎず、ついでに身体に纏わりついた炎を地中の土砂に擦り付けて掻き消していた。


砂漠地帯に生息するサンドワームは熱に対する耐性もあるらしく、トレントを焼き尽くす程の火力を誇る火炎旋風を受けても特に影響は受けている様子はなかった。最初の攻撃は口の中に火炎を受けて怯んだだけに過ぎず、熱には元々強いらしい。



「ウル、背中に乗せてくれ!!」

「ウォンッ!!」

「ギュロロロッ!!」



地上に着地すると、ウルの背中に飛び乗ったレノは迫りくるサンドワームを引き寄せ、その場から離れる。ウルの移動速度でもサンドワームは引き離せず、それどころか徐々に距離が追いつめられていく。



「くそっ、嵐刃!!」

「ギュロォッ!!」



駄目元でレノは嵐刃を放つが、顔面に風の刃を受けてもサンドワームは一瞬だけ怯む程度で損傷を与えられない。至近距離ならば大木を切り倒す威力を誇る嵐刃だが、距離が離れているのとサンドワームの頑丈な肉体には致命傷を与えられない。



(こいつには風も火も通じにくい、なら残された手段は……)



レノは水属性の魔石に視線を向け、次の攻撃で確実にサンドワームを仕留めるために好機を伺う。ウルも全力疾走で駆け抜け、やがて前方の風景に変化が訪れた。



「ウォンッ!!」

「どうした、ウル……あれは!?」



鳴き声に反応したレノは前方を確認すると、そこには広大な砂漠の風景が広がっている事に気付き、いつの間にか砂漠地帯に訪れようとしている事に気付く。砂漠地帯に目を向けたレノは考え、平地ならばともかく砂漠のように足元が柔らかい場所だとウルも思うように走れはしない。


考えている間にも砂漠地帯に踏み込んでしまい、ウルは足元が急に柔らかくなったせいで移動速度が格段に落ちてしまう。その一方でサンドワームの方は元々は砂漠に生息している生物のため、砂の中に飛び込むとまるで水の中を泳ぐ魚のように追いかけてきた。



「ギュロロロッ!!」

「ウォンッ!?」

「くそっ……ウル、跳べ!!思いっきり跳ぶんだ!!」



レノは距離を一気に縮めてきたサンドワームに視線を向け、逃げ切れないと判断したレノはウルに一か八か上空に逃げるように促す。ウルは主人の命令に従い、全力疾走の状態から一気に上空へと飛び上がる。


空へ逃げたレノとウルに対してサンドワームも砂の中から姿を現すと無数の牙が生えた大口を開き、一気に飲み込もうとした。そんなサンドワームに対してレノは荒正を振りかざし、刀身に水の刃を纏わせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る