第200話 地下通路の先には……
「……この通路、意外と広いですわね」
「そうだね、天井も結構高いし……」
「……もしかしたら大きな荷物を運ぶことを想定して作られたのかもしれない」
階段を降りた先には扉が存在し、その先には1本道の通路が広がっていた。位置的には地下に存在するはずだが、燭台などは設置されておらず、ランタンを片手にレノ達は先へと進む。
地下通路の先はゴノ伯爵の屋敷の書斎に繋がっているはずだが、途中でレノ達は扉を発見する。まだ移動を初めてからそれほど時間は経過しておらず、地上の伯爵の屋敷には到達していないはずだが、扉がある事に気付いたレノ達は立ち止まって扉を確認する。
「あら?こんな所に扉が……でも、まだここは闘技場の地下ですよね?」
「移動した距離から考えてもまだ闘技場のはずなんだけど……」
「……ちょっと待って」
ネココは扉に耳を押し当てると、何も聞こえない事を確認し、ゆっくりと取っ手に手を伸ばす。扉を開くと、階段が存在する事に気付き、更に地下に繋がっていた。
「どうしてこんな場所に階段なんて……」
「地下に続いてますわね。何かあるのでしょうか?」
「……気になるなら探索してみる?」
階段の先が気になったレノ達は一旦調べるために階段を降りると、階段の先には牢屋のような場所が広がっていた。こんな場所に牢屋がある事にレノ達は驚くが、殆どの牢には誰かが入っていた形跡が存在し、異臭が漂っていた。
「うっ……な、何ですのこの臭い!?」
「……牢の中を見て、死体が腐ってる」
「し、死体って……」
レノ達は牢屋の中に存在する死体を見て驚愕の表情を浮かべ、もう何日も放置されているのか腐敗化した死体が横たわっていた。その様子を見てレノとドリスは口元を抑え、ネココも険しい表情を浮かべる。
どうしてこんな場所に牢屋が存在し、中に死体があるのかと思いながらもネココは牢の扉を開き、死体の様子を伺う。すると、死体の手には布切れが握りしめられている事を知り、彼女は恐る恐る手を伸ばす。
「これは……見て」
「ち、血文字!?」
「……事切れる前に自分の血で書いたのか」
布切れは死体の衣服の切れ端らしく、そこには血文字で「許さない」とだけ書かれていた。死体の服をよく観察すると、どうやら屋敷の使用人が着込むような服装である事が判明し、大分汚れてはいるがこの人物の正体は伯爵家で働いている使用人だと判明した。
「これ、まさか……伯爵がやったのか?」
「そ、そんな……!?」
「……見て、この服に伯爵家の家紋が刻まれている」
ネココは服の肩の部分を指差すと、貴族ならば誰もが持っている家紋の紋章が記されていた。貴族の屋敷で働く人間は使用人であろうとこの家紋が記された服を着る事が義務付けられている。
「状況的に考えてもこの人は誰かに掴まって殺されたとしか考えられませんわ。服装から考えてもゴノ伯爵家の使用人でしょうけど……」
「という事は、この地下通路の存在を知っている人間の仕業……」
「……つまり、ゴノ伯爵が殺した」
牢屋に閉じ込められた状態で何日も飲まず食わずに過ごしたのか、壁のあちこちには爪でひっかいたような痕が存在した。衣服もボロボロで既に死亡してからかなりの時が経過している様子だった。
しかも死体が存在しない部屋の方も汚れており、どうやら全ての部屋に誰かが閉じ込められている形跡が存在した。この事から考えてもこの場所に閉じ込められた人間は一人や二人ではなく、何人もの人間が閉じ込められていた事が判明する。
「まさか、ここに存在する牢全部に誰かが閉じ込められていたのか!?」
「そ、そんな……」
「……ドリス、この人達の犠牲を無駄にしちゃいけない。伯爵の悪行は晒さないといけない」
「え、ええ……必ず、報いてみせますわ」
ドリスは死体を前にして怒りの炎を瞳に宿らせ、レノもネココも伯爵の行為が許せなかった。このような場所に人間を監禁し、死ぬまで閉じ込めていたという事実だけでも許せず、何としてもレノ達はゴノ伯爵の悪行を世間に晒す事を決意した。
「さあ、行きましょう!!長居は無用ですわ!!」
「……この布切れ、一応証拠品として持っていく?」
「そうだね、ここに残しておくのもなんだし……」
ネココの言葉にレノは殺された人間の恨みを晴らす事も兼ねて布切れを持ち帰る事にすると、3人は階段を引きかえして通路へと戻った――
――同時刻、屋敷の方では伯爵は落ち着かない様子で自室に引きこもり、部下からの報告を待つ。今夜中に指名手配犯を捕まえろと厳命したが、一向に誰も報告に赴かない事に苛立ちを募らせる。
「ええい、まだ犯罪者を見つけ出せんのか!!」
「お、落ち着いて下さい伯爵!!」
「現在、警備兵と蝙蝠の傭兵達が全力で捜索しています!!今しばらくお待ちください!!」
「ぐぬぬっ……!!」
伯爵は部屋の中で待機している部下の兵士の言葉に頬を真っ赤に紅潮させ、落ち着かない様子だった。こういう時は酒を飲んで気分を晴らしたい所だが、屋敷にセツナ達がいる間は彼は心の底から休む事はできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます