第174話 カジノへの侵入方法
「あんたらの荷物を盗んだ奴等はカジノの裏口から入っていったんだ。だけど、そこから先はあたしのネズミは忍び込む事が出来なかった」
「え?どうしてですの?」
「ジャドクの野郎が放った蛇がいたからさ。うちのネズミ達は蛇を前にすると本能的に恐れて逃げちまうんだよ。番犬代わりにあちこちに蛇を放っているせいでカジノに忍び込む事は出来ない」
「……前に私もカジノに立ち寄った事がある。尋常じゃないぐらい警備が厳重過ぎて私でも忍び込む事は難しい」
「カジノには色んな奴等が訪れるからね、中には賭博で負けた腹いせに暴れるような輩も珍しくはない。そんな奴等を警戒してカジノの警備は厳重に敷かれている……と思っていたけど、もしかしたら警備が厳重な本当の理由は蝙蝠の根城だからという理由かもしれないね」
「カジノか……」
レノはカジノがどのような場所なのかは分からないが、ネズミ婆さんのネズミ達でさえも侵入できない程の警備が施されていた場合、自分達では忍び込む事は不可能かと考えた。だが、もしもカジノが蝙蝠の拠点だとしたら上手く忍び込む事が出来れば拠点を捜索してゴノ伯爵と蝙蝠が繋がっているとう証拠が手に入るかもしれない。
証拠さえ手に入ればドリスが王国騎士の権限で彼の不正を取り締まる事は出来るが、まずはカジノに忍び込む方法を考えなければならない。外から忍び込む場合はジャドクの飼育している蛇達と警備の人間達を何とかしなければならず、ネココでさえも忍び込むのは無理だという。
「カジノに潜り込めば不正の証拠を掴める可能性もあるのですね!!」
「……でも、忍び込む方法を考えないといけない。少なくとも、私では無理」
「ジャドクの蛇さえいなければあたしのネズミ達を協力させる事も出来るんだけどね」
「ふふふ……それなら僕に良案があるよ!!」
ここでアルトは自信満々に答えると、彼は収納鞄を取り出す。アルトの行動にレノ達は戸惑うが、彼は鞄の中を開くと化粧用の道具を取り出す。どうして彼がこんな物を持っているのかとレノは戸惑うが、貴族出身の男性は化粧をする者も多く、アルトも化粧道具を持ち込んでいた。
「これを利用して僕達も変装してカジノの客に紛れて入り込むんだ!!」
「へ、変装?」
「ちょっと待ちな、あんたね……狙われている立場だと分かってんのかい?もしも気づかれたら殺されるよ」
「だからこそ逆に考えるだ、相手だってまさか自分達が根城にしているカジノにのこのこと僕達が乗り込んでくるとは考えないはずだ。今頃、きっと僕達を探すために街中を探しているだろう。つまり、今ならカジノにいる傭兵達の警備も薄くなっているはずだ!!」
「な、なるほど……一理ありますわね」
「……その可能性はあるかもしれない」
アルトの言葉にドリスとネココも賛同し、確かに言われてみれば標的がまさか自分達の拠点の傍にいるとは誰も考えないだろう。それに客としてならばカジノに入る事は容易く、目立つことはない。だが、この方法には問題があった。
「でも、あんたら客として入るのなら当然だけど持ち物は預けなければならないんだよ。あそこには武器になりそうな物は持ち込めないし、怪しい行為をしているのが見つかったら身体検査される事もあるんだよ。それはどうやって切り抜けるんだい?」
「その点も考えていますよ。カジノには貴族もよく訪れる、そして貴族の殆どは高級な装飾品を身に付けている。カジノ側も相手が貴族となると無礼な行動は出来ない。ならば僕が貴族として振舞い、レノ君が僕の付き人として従えば問題はない!!」
「ええっ!?」
「なるほど、貴族か……確かにそれならいけるかもしれないね」
思いもよらぬ提案にレノは驚くが、ネズミ婆さんは感心したように頷き、貴族の中には宝石の代わりに魔石を取りつけた装飾品を身に付ける人間も多い。つまり、魔法腕輪や指輪の類ならば持ち込んでも見逃される可能性は高い。
カジノ側としても貴族は他の一般客と同じように扱うわけにもいかず、元貴族であるアルトならば貴族らしく振舞う事など容易い。その点はドリスも同様のため、ネココを付き人にして連れていく事も出来る。
「それならば私はネココさんを付き人にして中に入ればいいのですね」
「……でも、私の場合は武器がないと困る」
「その点は大丈夫だろう。貴族は基本的に身体検査されることはない。ドリスさんがネココの武器を隠し持っておけばいいんだ。短刀ぐらいならスカートの中に隠せるだろう?」
「でも、私の場合はどうすればいいんですの?流石に烈火は隠して持ち込む事は出来ませんわ」
「俺も荒正以外の武器に頼るのはな……」
「大丈夫、こういう時こそ僕の収納鞄の出番さ」
服の中に隠せそうな武器はアルトとドリスが預かり、どうしても隠しきれない武器はアルトの収納鞄に入れて置く事にした。早速準備を整え、レノ達はカジノへ入るための変装を行う――
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