第165話 双刃の剣士アリスラ 蛇使いジャドク

「……どっちも願い下げ」

「そうか、ならお前のお友達にも聞いてみようか?」

「御断りですわ!!」



ネココは蛇剣を構えると、ドリスも鞘に納めた烈火を握りしめ、お互いに背中を合わせる。先ほどと同じ形に戻ったが、もう逃げる事は出来ない。ネココはアリスラと向き合い、ドリスはジャドクと向き合う。



「ひょひょひょっ……儂等を相手に戦うつもりか?」

「諦めた方がいいよ、あんた等じゃ私達には勝てないよ」

「……人を舐めるのもいい加減にして」

「ここまで馬鹿にされて引き下がれませんわ!!」



ドリスもいい加減に苛立ちを抑えきれず、どうして自分達がこんな目に遭わなければならないのかと憤る。その怒りに反応するように烈火の鞘に取り付けられた火属性の魔石が輝く。


一触即発の雰囲気の中、最初に仕掛けたのはジャドクだった。彼は両腕を構えると、ローブの袖から再び赤蛇が出現してドリス達の元へ向かう。それを見たドリスは精神を集中させ、背中はネココに任せて彼女は鞘から剣を抜き放つのと同時に魔法剣を発動させた。



「爆炎剣!!」

「何じゃとっ!?」

『ッ――!?』



刃が引き抜かれた瞬間に爆炎が迸り、数匹の赤蛇が一瞬にして爆炎に飲み込まれて消し炭となる。魔力操作の技術を身に付け始めた影響か、以前よりも炎の威力が強化されており、一撃で全ての赤蛇を焼き尽くす。



「はあっ!!」

「ちぃっ!!」



一方でネココの方も蛇剣を振りかざすと、刀身を伸ばしてアリスラに放つ。彼女は煩わしそうに刃で受けようとするが、蛇剣は自由に剣先の軌道を変更する事が出来るため、受けようと避けようと刀身を伸ばして軌道を変化させれば防ぐ術はない。



「にゃああっ!!」

「くぅっ……このっ!?」



アリスラは両手の剣で蛇剣を振り払おうとするが、いくら弾かれても蛇剣は刃を伸ばして幾度も剣先を突き刺し、彼女の身体を狙う。まるで金属の蛇を相手にしているような感覚に陥ったアリスラは剣を防ぐ事を止め、へし折る事に決めた。



「調子に乗るんじゃないよ!!」

「……それを待っていた!!」

「何っ!?」



再び刃を重ね合わせて「鋏」のように扱おうとしたアリスラに対し、蛇剣を手にしたネココは前に出ると、彼女は刃を重ねた状態の剣を足場に利用して飛び上がる。まさか自分の剣を足場に利用して空中に跳んだネココにアリスラは驚くが、ネココは蛇剣の刀身を今度は逆に短くして短刀へと変化させる。


右手に短刀、左手に蛇剣を構えたネココは空中にてアリスラの首元に目掛けて刃を放ち、その攻撃に対してアリスラは首を逸らして回避しようとした。



「辻斬り!!」

「ぐうっ!?」



暗殺者の戦技を放つネココに対してアリスラは持ち前の反射神経と運動能力を生かして回避するが、完全には避けきれずに皮一枚だけ斬られてしまう。首筋から血を流したアリスラは驚愕の表情を浮かべ、一方でネココも仕留めきれなかった事に歯を食いしばる。



「……今のを避けるなんて、流石はアリスラ」

「はっ……さ、流石に死ぬかと思ったよ。何だ、あんたも成長してるね」

「よそ見は禁物ですわ!!」



アリスラは素直に感心した表情でネココに話しかけようとすると、ここで後方からドリスの声が響き、彼女は振り返るとそこには剣を振り下ろすドリスの姿が存在した。そんな彼女に対してアリスラは重ねていた双剣の刃で彼女の劣化を受け止めた。



「おっとっ、その程度で私を……!?」

「引っかかりましたわね!!」



刃を受け止めたアリスラは笑みを浮かべるが、そんな彼女にドリスは魔剣に魔力を送り込むと、刀身に真紅の炎が発生する。それを見たアリスラは本能的に危険を察知し、咄嗟に後方へ跳ぼうとした。



「爆炎剣!!」

「うわぁっ!?」

「……隙有りっ!!」



烈火に纏った炎の魔力が暴発した事でアリスラが握りしめていた双剣の刃が砕け散り、武器を失ったアリスラにネココは飛びつくと、彼女は両足を利用してアリスラに絡ませて身体を仰け反らせる。


頭を足で締め付けられた状態のアリスラは咄嗟に振りほどこうとするが、その前にネココは地面に両手を付けると、勢いのままに彼女の頭を地面へと叩きつける。現実世界のプロレス技である「フランケンシュタイナー」と酷似した技だった。



「兜落とし!!」

「あいだぁっ!?」

「あ、アリスラ!?」



ネココによって頭から地面に叩きつけられたアリスラの悲鳴が響き渡り、その様子を見てジャドクが驚愕の声を上げた。その様子を見てドリスも好機だと判断すると、彼女は地面に視線を向け、烈火を突き刺す。



(レノさんのように上手く行くかは分かりませんけど……!!)



レノの「地裂」の剣技を思い返しながらドリスは烈火の剣先を地面に突き刺した状態で魔力を集中させると、ジャドクを睨みつける。その彼女の姿を見てジャドクは嫌な予感を覚えて逃げようとしたが、彼が逃走する前にドリスは剣を放つ。



「爆砕!!」

「ぬがぁあああっ!?」

『シャアアッ!?』



地面を爆発させ、その際に地面の中の土砂を吹き飛ばしてジャドクへと襲い掛かった。彼は自分のローブの下に隠していた蛇達と共に悲鳴を上げ、地面へ倒れ込む。

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