第153話 ロウガとの対面
「だ、団長はあんたが本当に兄貴を殺したのかを疑っているんだ。確かに兄貴は副団長の座から下ろされたが、それでも牙狼団を正式に辞めたわけじゃない。もしもあんたが兄貴を殺していたとしたら、それは牙狼団の団員に手を出した事を意味する……傭兵は面子を大事にすることは知ってるだろ?傭兵団の身内が殺された場合、その殺した相手はどんな手を使っても報復するのが傭兵の仕来りだ」
「それで牙狼団の団長……ロウガは俺を狙ってるのか?」
「い、いや……まだ、ロウガは本当にあんたが殺したのか疑っているだけだ。実際、見つけても手を出すなとは言われていた。穏便に話し合って俺の元へ連れて来いと言われてる」
「ん?それならどうして俺を襲ったの?」
「……あんたがキバの兄貴の死体が上がった場所にいたから、本当にキバの兄貴を殺したのはあんたの仕業だと思ったんだよ。だから、俺達で報復しようと……」
「なるほど……」
レノはキバの死体が発見された場所に立ち寄っていたのは偶然だが、牙狼団の団員から彼が自分が川に落とした相手がどうなったのか確認に赴いているようにしか見えなかったという。レノからすればとんだ勘違いだが、傭兵達も兄貴分として慕っていた相手が殺された事で取り乱していたらしい。
キバが殺されたとなれば彼に協力して従っていた自分達も狙われるかもしれないと判断し、彼等は知り合いの魔導士に金を渡してレノを仕留めようとした。だが、それも失敗に終わった彼等はこれから自分達はどうなるのかと怯えていると、そんな彼等にレノはため息を吐きながら告げる。
「団長の所まで俺を案内すればあんたらの役目は終わるの?」
「な、何だって!?」
「だから、要するにその団長と俺が話を付ければもうあんたらは俺の前に現れないのかを聞いてるんだよ」
「ほ、本気か?本気で言ってるのか?」
「だってここで無視してもあんたらの団長が疑う限り、あんたらは諦めないんだろ?なら、俺がその団長と直接会って話をする」
「あんた、うちの団長が怖くないのか!?あの人はな、獣剣士と呼ばれた人だぞ!!前回の闘技祭では決勝にまで勝ち残った凄い人なんだぞ!!」
牙狼団の団員の言葉にレノはロウガが相当に腕の立つ剣士である事を知っていたが、まさか前回の闘技祭の準優勝者だとは知らなかった。だが、それを知った所でレノの意思に変わりはなく、彼等に自分をロウガがいる場所まで案内するように指示した。
「とにかく、そのロウガに会わせてくれ。そうすればあんたらも役目を果たせるだろう?」
「あ、ああ……分かった」
「なら、付いて来てくれ……くれぐれも団長と会う時は態度に気を付けろよ」
「キバの兄貴の一件でぴりぴりしているからな……下手をしたら殺されかねないからな」
団員達は言われた通りにレノをロウガが待つ場所まで案内を行い、彼等の後に続いたレノは街に訪れる度に面倒事に巻き込まれる事に内心でため息を吐きたい気分だった――
――ロウガが待ち構えている場所は前回と同じように元は酒場を経営していたと思われる廃墟だった。そこには既にロウガが円卓に座った状態で待ち構え、団員達がレノを連れてきたのを見ると、黙って自分の向かい側の席に座るように促す。
ここで団員はロウガの傍に移動すると、レノは彼等と向かい合う形で椅子に座り込む。ロウガと向かい合う形で座ったレノは彼の迫力に気圧されそうになるが、こちらも勘違いで命を狙われてはいい迷惑のため、堂々と腕を組んで座り込む。その態度にロウガは笑みを浮かべた。
「……ふっ、俺を前にしてその態度、まだ若いのに中々に肝が据わっているな」
「そんなお世辞を聞くために来たんじゃない。二度と関わらないと約束したのに、呼び出した用件を話して欲しい」
「お、お前!!団長に対してなんて態度を!!」
「よせっ!!お前等は口を挟むなっ!!」
不遜の態度を貫くレノに対して控えていた団員が焦った様子で騒ぎ出そうとするが、それをロウガが制する。彼はレノと向き合うと、まずは謝罪を行う。
「確かにあんたの言う通りだ。昨日、俺の部下が迷惑を掛けたばかりだというのに再び呼び出されてはいい気分じゃないだろう。だが、もう話を聞いているかもしれないが、あんたにちょっかいをかけた俺の部下が殺された。それは知っているな?」
「……死体は見ました、川に流されてましたね」
「そうだ、俺の部下は昨日殺された。しかも、その相手というのが丁度あんたのような黒髪の若い剣士にだ」
「それだけの理由で俺がやったという証拠にはならないでしょう?」
「ああ、確かに黒髪の人間は珍しいが街中を探せばあんた以外にも剣士はいるだろう。だが、重要なのは殺された男が昨日、あんたと関わりを持っていた事……そして殺害の現場があんたが宿泊している宿屋からそれほど離れていない場所にある事だ」
ロウガの目つきが鋭くなり、彼は暗にレノ達が宿泊している宿屋の居場所を特定している事を伝える。それを聞いたレノはまずは何処で彼が殺されたのかを聞く。
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