第152話 魔導士との戦闘
「魔導士……?」
「へへっ、びびったか!?いくらお前が鬼の様に強くても、魔法を受ければ一発で終わりだ!!」
「さあ、やってくれ!!」
「うるせえな、偉そうに指図するんじゃねえよ……まあ、悪いが死んでくれや」
魔導士と思われる男は杖を構えると、その先端には赤色の魔石が取り付けられていた。それを確認したレノは咄嗟に荒正を抜くが、そんな彼に対して男は笑い声を上げる。
「そんな物で俺の魔法を防げると思ってるのか!?喰らいやがれ、俺の魔法をっ!!」
「っ……!?」
剣を抜いたレノに対して魔導士の男は杖を構えると、先端から赤色に光り輝く「魔法陣」が出現する。それを見たレノは本能的に危険を悟り、咄嗟に刃に風の魔力を送り込む。
「喰らえっ!!ボム!!」
魔法陣から火属性の魔力の塊が放たれ、それを見たレノは前にアルトが見せた「
だが、本能的にレノはこの魔法は危険だと判断すると、装着していた魔法腕輪を利用し、風属性の魔石から魔力を引き出して刀身に魔力を更に送り込む。そして魔導士が放った「ボム」がある程度まで接近した瞬間、突如として炎の塊は弾けてしまう。
「ぶっ飛びやがれ!!ひゃはははっ!!」
「あ、あちちっ!?」
「な、なんて凄い炎だ!!」
「これならあいつも……なっ!?」
炎の塊が内側から爆発した事で周囲に爆炎が広がり、それに対してレノは飲み込まれた様に見えた男達は騒ぎ出す。だが、直後に爆炎の中からレノが姿を現すと、彼は荒正の刀身に炎を纏わせながら魔導士の元へ向かう。
「うおおおっ!!」
「なっ!?馬鹿な、どうやって……!?」
以前にドリスの爆炎剣を防いだようにレノは刀身に風の魔力で形成した竜巻を纏わせ、相手が生み出した炎の魔力を取り込む事に成功する。自分の魔法を逆に吸収された事に魔導士の男は理解できず、そんな彼に向けてレノは剣を放つ。
「せいっ!!」
「うわぁっ!?つ、杖がっ……俺の杖がっ!?」
男が所持していた杖にレノは剣を振り抜くと、男の杖が切れてしまい、更には火炎によって杖が燃えていく。慌てて男は炎を消そうとするが、魔法で生み出した炎は簡単には消えず、このままでは魔石に炎が到達して大惨事を引き起こしかねない。
泣く泣く男は杖を諦めて魔石を取り外すと、その間にレノは剣を振り払い、刃に纏った炎の魔力を放出させる。他人が生み出した魔力はレノの意思では消す事が出来ないため、何処かで発散させなければならない。そして改めてレノは男達に視線を向けると、杖を失った魔導士は我先にと逃げ出す。
「ひいいっ!?ゆ、許してくれ……俺は関係ないんだ!!」
「あっ!?て、てめえ逃げるな!!」
「せめて金は返しやがれっ!!」
「おいこらっ!!どさくさに紛れて逃げようとするな!!」
傭兵達も男の後を追って逃げようとするが、そんな彼等を見てレノは一括すると、男達は硬直する。レノは荒正を鞘に戻すと、どうして自分を襲ったのかを問う。
「どうしてまた、俺を狙った?団長は何をしてるんだ」
「そ、その団長からの指示だ!!お前がうちの兄貴を殺したから、街中を探し出してでも見つけて来いって……」
「だからそれが勘違いだってば!!俺はあんたらの兄貴を殺してなんかいない!!」
「……ほ、本当に?」
レノの言葉に傭兵達は警戒しながらも話を聞く気になったのか、逃げるのを止めた。それを見てレノは腕を組みながらも何があったのかを尋ねた。
「昨日、俺が帰った後に何があった?詳しく教えて欲しい」
「な、何でそんな事を……」
「人の事を襲っておいて何も事情を話さないなんて図々しいにも程があるんじゃないの?」
『…………』
傭兵達はレノの言葉に苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ、やがて観念したのか彼等は昨日に起きた出来事を話す――
――副団長のキバが団長であるロウガから折檻を受けた後、彼はすぐに治療を受けた。折れた骨に関してはロウガの指示で自然に治るまでは回復薬などの類を使用するのも禁じられ、彼は平団員へと降格を言い渡される。
その後、応急処置を受けたキバは姿を消した。誰もがキバがロウガを恐れて逃げ出したと思われたが、すぐにロウガは彼の捜索を傭兵達に命じる。ここでキバがレノ達にまた迷惑を掛けたら面倒事になると判断し、彼は何としてもキバを連れ出すように命じた。
傭兵達は急いでキバの行方を追うと、ここである情報を仕入れた。それは夜道を歩いていたキバが橋の上で何者かに斬られ、そのまま川の中へ流されたという情報だった。しかも、その剣士の正体がまだ年若い黒髪の少年だと判明し、すぐにロウガは昼間に乗り込んだレノ達の事を思い出す。
もしかしたら逆恨みしたキバがレノの元に赴き、そこで返り討ちになったのではないかと考えた彼は本当に殺された男がキバだったのかを調べさせ、同時にレノの居所を探すように部下に命じたという。
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