第131話 またもや再会
「レノさん、先ほどは助けてくれてありがとうございます」
「いいよ、気にしないで……それにしてもこの街にはあんな柄の悪い人たちばっかりなのかな?」
「否定は出来ない……闘技場が建てられてからこの街にはいろんなゴロツキが集まるようになってきた」
「ん?ネココはこの街の事に詳しいの?」
「……昔、住んでいた事もある」
ネココによると闘技場が作り出されたのは10年ほど前らしく、その前の時代ではこの街に観光客など殆ど訪れなかったという。
闘技場が建てられた理由は今から13年ほど前、この街を取り仕切る領主が変わってから闘技場の建設が行われた。完成までに3年の歳月を費やしたが、完成した後は一気に外部から訪れる人間が増加して街は急速に発展した。
「私も子供の頃にこの街に訪れた事はありますが、これほど人間はいませんでしたわ……余程、闘技場に興味がある人間が多いのですね」
「……魔物や人間同士が戦う姿に興味を持つ者は多い。原則として人殺しは禁止されているけど、闘技場での殺人は罪に問われる事はない」
「えっ!?そんな事、許されるの?」
「故意の殺人と判断されなければ罪には問われない、その代わりに一時期的に試合に出れなくなるか、あるいは出場する権利を永久剥奪される」
「なるほど……試合とはいえ、真剣勝負である以上は人が死ぬこともありえますね。しかも敵が人間だけならばともかく、魔物の場合は手加減なんて期待できませんわ」
レノはネココの話を聞いて予想以上に闘技場が危険な場所だと知り、まさか殺人を犯しても罪に問われないとは思いもしなかった。先ほどの捕縛されたボアの事を思い出し、あんな魔物と戦わされるならば生半可な実力者は試合に出場すれば命はない。
(思ったよりも危険な街なんだな……そういえばこの時期は特に人が集まりやすいといっていたけど、どういう意味だろう?)
シノの街を出発する前にレノはネズミ婆さん達との会話を思い出し、この時期に何か特別な催し物があるのかとネココに尋ねようとした時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「てめえ、何処に目を付けてやがる!!」
「お、おいおい……ぶつかってきたのは君の方だろう?言いがかりはよしてくれ」
「うるせえっ!!てめえのせいで俺の大事な肉が落ちちまったじゃねえか!!」
街中にレノ達に妙に聞き覚えのある少年の声と、男性の声が響く。何事かとレノ達は声のした方に向かうと、そこには見知った顔が存在した。
「アルト!?」
「その声は……レノ君か!?頼むよ、助けてくれ!!」
「ああん!?」
「……また野蛮な奴に絡まれてる」
柄の悪い獣人族の男性に絡まれていたのはアルトだと判明し、すぐにレノ達は彼の元へ向かうと、男性はレノ達を見て舌打ちを行う。
「おうおう、お前等この坊主の友達か?だったらお前等が弁償してくれるのか?こいつのせいで俺の鎧が汚れて肉も台無しだ!!」
「肉?」
「ほら、下に落ちている……」
男性の話にレノ達は疑問を抱くと、アルトは地面を指差す。3人は視線を向けるとそこには鉄串に突き刺さった肉が存在し、恐らくは色合いと香りから一角兎の肉だとレノは気づく。
どうやら男性は肉を食べながら歩いていた際にアルトとぶつかったらしく、その表紙に彼が持っていた肉は身に付けていた鎧に触れて脂がこびり付き、更には地面に肉が落ちてしまったらしい。そこで男性はアルトに肉の代金と鎧の弁償代を支払えという。
「この鎧はな、闘技場に出場するために新調したばかりの大切な鎧なんだぞ!!さあ、弁償しろ!!銀貨3枚で許してやる!!」
「言っている意味が分からないな……鎧が汚れたのなら拭けばいいじゃないかい。ハンカチを貸してあげようか!?」
「うるせえ、払わねえならぶっ飛ばすぞ!!」
「アルト、この前も盗賊に攫われてたのに……またこういう感じで絡まれてたのか」
「……アルトはこういうのによく絡まれやすい」
「仕方ありませんわね……ほら、汚れた所を見せてください。私が拭いてあげますわ」
「うおっ!?さ、触んじゃねえっ!!」
ドリスはハンカチを取り出すと男性に近付き、肉の脂がこびり付いた鎧に手を伸ばそうとする。その際に男性は咄嗟に彼女の腕を振り払い、その際にドリスが所持していたハンカチが地面に落ちてしまう。
その様子を見たアルトはハンカチに視線を向け、何かに気付いたように目を見開き、一方でドリスの方は親切心で汚れを拭いてあげようとしたのに手を弾かれて不機嫌そうな表情を浮かべる。
「……何もこんな乱暴な真似をしなくてもいいのではないんですの?人が拭いてあげようとしただけなのに」
「う、うるせえっ!!いいから弁償代を払いやがれ!!そうしたら許して……」
「いや、弁償代を払うのは君の方だよ」
「はあっ?何を言って……」
アルトはドリスが落としたハンカチを拾い上げ、落ちた際に汚れてしまい、それを見たアルトは冷や汗を流す。ハンカチには美しい花の模様が刺繍されていた。それは素人目から見ても高価な代物で間違いなく、アルトは男性に告げる。
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