第101話 王国騎士の重圧
「所詮、私が王国騎士になれたのは私の力というよりも公爵家の慣習でなれたに過ぎません。実際に自分の実力だけで王国騎士になれたわけではありませんわ。その証拠に私はまだ騎士団の結成すら出来ていませんもの」
「騎士団?」
「本来であれば王国騎士は騎士団の結成が認められています。しかし、実績もない私に従うような騎士はおらず、今の時点では私に従う騎士も兵士も一人もいませんわ……」
「でも、仮にも公爵家なら人ぐらい簡単に集められるだろう?」
「私の問題に実家は関係ありませんわ、何度か私に従いたいと申し出る者もいましたが、その殆どが公爵家と関わりを持とうとする者ばかり……結局、誰も私の事など見ていませんわ」
「……それは仕方がない、実力はあっても実績を残せない騎士に従おうとする人間はいない」
「ええ、その通りですわ。ですから私は今回の任務は絶対に失敗できません!!何としても私の手で黒狼の残党を捕縛してみせますわ!!」
ドリスは自分が王国騎士になれたのはあくまでも公爵家の習慣であって自分自身の実力を認められたわけではない事に悩んでいた。だからこそ彼女は功績を上げて王国騎士として相応しい存在になり、他の皆から認められようと生きこんでいた。
レノもドリスの話を聞いて他の皆から認められたいという気持ちは理解できた。そして話をしてみるとドリスの人柄が知れ、彼女の目的のために協力する事を申し出る。
「それなら俺達も一緒に行動していいかな?お互いに黒狼に狙われている同士、協力した方がいいと思うし……」
「そうですわね、確かに皆さんも黒狼に狙われている身、王国騎士として放置できませんわ。安心して下さい、これからは私が皆様を保護しますわ!!お~ほっほっほっ!!」
「……思い出したかのように貴族みたいな笑い方」
「まあ、あんたらはそれでいいんじゃないかい?私は私で鼠共を使って奴等の情報を集めておくよ」
今後はレノとネココは黒狼の問題が解決するまではドリスと行動を共にすることを決め、ネズミ婆さんは鼠を利用して黒狼の情報を集める事を約束した。彼女としても既に黒狼に二度も命を狙われているため、もう今回の件とは無関係とはいえない。
例によってネズミ婆さんは何か情報を掴めたら鼠を送り込んで連絡を送る事を告げると、彼女とはその場で別れる。一方でレノの方は鍛冶師のゴイルに剣を預けている事を思い出し、彼の元に戻る事にした――
――鍛冶屋へと戻ると、ゴイルは既にレノの剣を打ち直していたらしく、更に彼は剣の柄の部分を取り換えていてくれた。そして新しい鞘を用意してくれ、その鞘には魔石を嵌め込めるための金具も取り付けられていた。
「おう、戻ってきたか。ほらよ、持って行きな」
「あ、ありがとうございます!!でも、この鞘は……?」
「俺からの餞別だ。魔法剣士というなら魔石を嵌め込める鞘ぐらい持っていた方がいいだろう?」
ゴイルからレノは剣と鞘を受け取り、試しに素振りを行う。新しい柄に取り換えて貰ったが特に違和感はなく、問題なく扱えた。ゴイルに礼を告げてレノは鞘に剣を直そうとすると、ここである事を思い出す。
「そういえばドリスの鞘も火属性の魔石が取り付けられているけど、あれは鞘に取り付けた魔力を取り込んでいるの?」
「ええ、私の鞘は3つの魔石を取り込んでいるので攻撃の際はこの3つの魔石から魔力を引き出し、刀身に魔力を込めていますの。私の爆炎剣は魔力の消費が多く、それだけの数の魔石を使用しなければ発動する事も出来ないので……」
「まあ、あれだけの威力の魔法剣なら魔力も相当に使うよね」
「……私としてはドリスが持っている剣が気になる。もしかしてだけど、魔剣じゃない?」
ネココはドリスの剣に視線を向け、彼女が装着している剣が蛇剣と同じく魔剣の類ではないかと考える。その点に関してはレノも同意見であり、確かにドリスが所持している剣は普通の剣とは見た目が大きく違う。
二人の言葉にドリスは誇らしげな表情を浮かべながら剣を引き抜き、その刀身を見せつける。それを見たゴイルは驚いた表情を浮かべ、鍛冶師の彼から見ても見事な名剣だった。
「ええ、その通りですわ!!私の持つ剣はフレア家に代々伝わる家宝、魔剣「烈火」ですわ!!この剣の刀身は魔法金属のヒヒイロカネで構成され、全ての魔法金属の中でも最も魔力が取り込みやすい代物だと言われていますわ!!」
「ヒヒイロカネだと!?伝説の魔法金属じゃねえかっ!!」
「え、そんなに凄い代物なんですか?」
「……ミスリルよりも希少でオリハルコンと同様に今ではもう採掘は出来ないと言われている魔法金属、私も見るのは初めて」
レノはヒヒイロカネの名前を初めて聞いたが、ネココとゴイルの反応によると相当に希少な価値を誇るらしく、フレア家にて代々家宝として大切に保管されいてた名剣らしい。
ドリスの爆炎剣はこのヒヒイロカネ製の魔剣だからこそ生み出せる剣技らしく、彼女は鞘に取り付けた3つの魔石から魔力を引き出し、それを剣に伝わせて強力な火炎を生み出して剣に纏う事が出来るという。
※しばらくは1日に5話に戻ります
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