第45話 お仕置きが返される

 同日23時30分───


 うたた寝をしていた私は物音に気付いて目が覚めた。

 あゆむちゃんが帰って来たのかな?

 麦村さんのところに行って怒りが収まったのかな?

 そんな甘い思考をしながら、目をこするとやっぱりあゆむちゃんが目の前に立っていた。


 そしてその表情は穏やかな…ものではなく、引きつった表情。

 つまりまだ怒っている。


「まだ、怒ってる?」

「うん、怒ってる」


 すっごくにこやかに、そしてかわいい表情で。

 これは、闇のオーラを身に宿している。

 非常によろしくない…。


「なにかあった?」

「うん、麦に襲われた。誰かさんの許可が出たって」

「お、襲われたって親友同士だよね?な、なにされたのかなぁ?」


「……襲えって指示したんだから、襲われる覚悟があるんだよね?」


「……え?…‥‥うん?いいよ?」

「え、いや、そのあそこを舐められるんだぞ、べろぺろとっ」

「うん、そういうプレイは普通だと思うけど。恋人同士なら尚更…」

「あ、ふ、ふーん、そうなの?」


「それで、感じていっちゃったとか…なの?」

「まぁ、少し、だけ」

「私以外の人として、いっちゃったの?」

「少し……少しだよ」


「何回?」

「3回…」

「私にされるのは嫌?」

「嫌じゃないけど、ダメ。男に戻れなくなったらどうするんだよ」

「それは残念だけど仕方がないよね。可愛いあゆむちゃんが感じてる所、私だって見たいもん。いままで我慢してしなかったのに、勝手に他の人にそんな姿を見せるなんて、恋人としてそれ以上の事をしたくなるのってわかるかな?」


「待ってっ、まだ敏感だからっ、折角シャワー浴びたのに、まだ、ちょっ、あ、あああああああぁ」



 ◆ □ ◆ □ ◆



 ほどほどに対抗心と嫉妬心が満足した頃、「もう怒らないから、やめて」とまで言われてようやく、やりすぎた事に気付いた。


「なぁ、俺の事、嫌いだったりする?」

「そんな事ないよ~、大好きだよ」


 なんだか、乙女の様な事を言い出した。若干拗ね気味に…。

 本当に元に戻れるか心配になってくる。

 いままで抑圧された気持ちが爆発したのと可愛いからついつい、というのは言い訳にはならず反省しなくてはいけない。


「あのね、あゆむちゃんがしたいなら、私を好きにしていいのよ、胸を揉むのすら遠慮してるよね」

「そういうのは、男になった時に、ちゃんとしたいんだ…。特に最初は…」


「そうなのね、私はどっちでもいいよ。あゆむちゃんはあゆむちゃんだから」

「さっさと元に戻れていたら、今頃籍も入れて、子どもも出来ているかもしれないのに…」

「2週間程度じゃ子どもが出来たかわからないよ?」

「え、そうなの?」

「ふふふ、でも、できたらいいね、あゆむちゃんの子どもなら何人でも欲しいなぁ」

「まぁ俺も欲しいけど、まずは戻らないとね…」



 そんな事を話しながら、二人並んでベッドに沈んだ。

 もしかすると私は欲求不満になっているのかもしれない。

 そう考えると、お酒飲みながら何話したのが気になる。

 とんでもない事を話していたらどうしよう。

 どうせ体裁から聞く事も出来ないのだから気にしても仕方ないよね。


 そうして私は眠りについた。

 色々あったけど、結局あゆむちゃんは帰って来た。

 もしかしたらまだ怒っているかも知れないけど、きっとこれからも大丈夫。

 もう、お酒は舐める程度にする。



 その翌朝。

 私の横に寝ていたあゆむちゃんは歩さんになっていた。


 大きなテントをこしらえて。


 起こそうかと思ったけど、すぐに子どもに戻ってしまうかもしれない。

 その時に脳裏によぎったのは、ニューハーフの旦那を持った奥さんが妊娠する話だ。朝には自然に勃起つからそれを利用するという方法。


 意を決して、私は事にあたった。

 抱きしめたいキスしたい、そんな軽度の煩悩を振り払い、眠ったままの彼氏に初めてを捧げた。

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