第44話 麦村の思いがぶつかってくる

「なぁ、鮎」

「なに?」

「乳を揉むって事は揉まれる覚悟があるって事だよな?」

「俺の揉んで嬉しいのか?」

「じゃあ言い直そう」

「ん?」

「エロイ事をすると言う事は、エロイ事をされる覚悟があるって事だよな?」

「いや、こんな幼体に出来るエロイ事なんてないだろ」

「やってみないとわからないだろ?」


 麦が何を言いたいのかさっぱり理解できていなかった。

 後で思えば、この時逃げるべきだった。俺の後悔はいつも役立たずだ。

 まじめな顔をして俺に迫ってくるが、エロイ事ってなんだ。


「な、なぁ、麦、なんか変だぞ」

「ああ、変だよ。そうだ、お前が男に戻ったら抱かれてもいい、だから今は俺の好きにさせてくれ」

「やめ、やめろっ、やめろおおおおおぉ…」



 ◆ □ ◆ □ ◆



「ひっく、ひっくっ、やめろっていただろ、ひっくっ」


 股間を重点的に舐め回されて、気が変になりそうになった末、いってしまった。

 正直怖かった、未曽有の感覚が俺の体を突き抜け頭が真っ白になった。

 そしてこの体になってから、涙腺が酷くゆるくなっていた。弱い所なんて見せたくないのに涙が止まらない。


 麦が俺を抱きしめる。

 豊満なボディーに抱きしめられるのは悪くないが、さっきのような事をされそうで怖いと言う感覚が上回る。


「ごめん、鮎、でもお前も悪いんだよ。俺がお前をこんなにも愛しているのに他の男を紹介するなんてどれだけ無神経なんだ」


 麦、お前、何を言っているんだ?

 今日のお前は本当に変だぞ。他の男って、潤井うるいさんの事か?

 そういえば仮定の話で告白じみた事をされていたと思い出した。

 つまりは実際に女になってしまったのだから、改めて男の俺に惹かれたって事…か?


 悪い事をしたと思いつつ、気持ちに応えれないも同時に思った。

 麦が悪いわけじゃない、無神経だった俺が悪い。


「麦、俺こそごめんな、でも思い人は一人なんだ」

「わかってるよ、どうせすぐ仲直りするんだろ」

「うん…」

「どれだけ、喧嘩してもすぐ元通りになるんだろ」

「うん…」

「笹原さんが襲ってもいいって許可を出しても許してしまうんだろ」

「うん……うん?」


「じゃあ、もう一度だけ、女の喜びを教えてやる」

「は、ちょっとまて、襲っていい許可ってなんだよ、まて、舐めるな、やめ、やめろおおおおぉぉぉ」



 ◆ □ ◆ □ ◆



 ぐったりだ、もう動けねえ。

 全裸で大の字で寝転ぶ、また羞恥心がないと言われそうだが、もう動く気力がない。


「幼体でもこんなに感じるんだな…」

「いいか、パンツをはかないって事はそういう事をされると言う事だぞ、もうちょっと羞恥心を持ったほうがいいぞ」


 やっぱり言われた。というかなんで襲った側がそんなに偉そうなんだよ。


「ぐぬぬ、いや、わかるけどわからねえよっ」

「何がわからないんだ?」

「ここまでする必要がだよ」

「頭の凝り固まった大人はここまでしないとわからないんだろ?」

「体は子ども、頭脳は大人って、これは違うか。あーもう、いいよ。でも男になってもお前を抱く事は無いからな、悪いけど、男の俺の相手は一人だけで十分だ、タイミングが前後すれば違ったかもしれんが、そうならなかった。これが現実だよ」


 言い過ぎかもしれないが、これは必要な事だ。

 中途半端な期待を持たせるのが一番残酷だから俺はバッサリと切り捨てる。

 これで笹原さんに振られでもしたら目も当てられないな、そういえば喧嘩中だったんだー。


「はは、コテンパンだな、じゃあ俺が男に戻って、お前が成長したら相手してくれるか?」

「いや、お前その時には50歳超えているだろ、15、6になった俺に手をだして良い訳がないだろ」

「だめかぁ仕方ねーな。諦めるか」

「ああ、諦めろ。でも、嫌いにはならない。お前はいつまでも親友だからな」

「わかった、ありがとうな」


 微妙な空気が流れる。

 俺は場の空気を変えるべく、気になった事を思うがままに口にした。


「それで、潤井さんの事はどう思っているんだ?」

「んー…そうだなぁ、最初は盛ったメス的に欲してたのと、お前に彼女ができてやぶれかぶれで関係持ったが、相手としては悪くないんだよな、優しすぎるのがたまに傷だが」

「それって、結局いいのか?悪いのか?」

「悪くない…のがね、いっその事セフレ扱いで使い捨てにされた方が良心が痛まないんだが、ほんとに真面目なんだよ」

「それは知っていただろ、そういう人だって」

「お前の事を吹っ切れた事だし、真剣に向き合ってみるか…」

「ああ、そうしろそうしろ」


「じゃあ、今度は嫌われない親友として、もう一回しようか」

「ちょ、おまっ、舐めんなっ、やめ、やめろおおおぉぉぉ」

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