閑話 それぞれの悩み
1.あゆむちゃんの悩み
隣に麦村が引っ越し(?)て来てから数日が経過したある休日の話。
「麦、自分の体に戻れたと思ったら仕事が増えてゲームをする時間が減ったんだけど。慰めて?」
「鮎は彼女の手伝いが増えただけだろ?そもそも仕事の手が早いんだから問題ないだろ」
「何を言っているんだ、仕事をさっさと片づけて、こっそりゲームしていた時間が減ったんだ大問題だろ。折角のテレワークがこれでは満喫でないじゃないか」
「いや、仕事しろよ」
2.麦村の悩み
「なぁ、麦はなんでキスしないんだ?」
「お前が脅したせいだろ!」
「え?俺、脅したっけ?」
「女子人格が生まれたのがディープキスかどうか試してみろって言っただろ、俺は自分の体の主導権を無くすのは嫌だからな」
「見てみたいなぁ、麦村が女の子女の子してる所。大丈夫だって自分をしっかり肯定していれば。大丈夫大丈夫、俺の目を信じて」
「好奇心に満ちた目にしか見えないんだけど?」
「ばれたか」
3.笹原さんの悩み
母親に連絡を取り、改めてあゆむちゃんの認識を確認しに電話した時の話。
『お母さん、あゆむちゃんって覚えてる?』
『あゆむちゃん?誰の子?』
『あ、知らないならいいの、気にしないで』
『それより、あなたそろそろ30よ?いい加減お見合いでもしなさい』
『あ、それはもう大丈夫、最近彼氏ができたから、だからもうお見合いの写真送るのやめてね?』
『あら、そう?』
数日後、笹原さんの元に郵送物が届た。
「
「婚姻届け、私の両親の署名と捺印入り…、気が早いんだから、こういうお節介困るのよね」
「や、破らないで。その、男に戻ったら使うし…、あ、彩月さんが俺でよかったらだけど、でも俺こんなんじゃ、この先どうなるか…」
「私は歩さんがいいなら、全然…。じゃ、じゃあ私の分だけでも書いちゃおうかな」
「じゃあ、俺も…」
「「(あとは提出するかしないか、それが問題…)」」
尚、婚姻届けを出す際はそれぞれの戸籍謄本か抄本が必要になる事は二人はまだ知らない。
4.潤井さんの悩み
数日後の休日、またもや体を重ねてしまった後の話。
「なんか俺達の関係って、セフレになるのかなぁ」
「セフッ……そ、そう…なのか?」
「その方が都合がいいでしょ、潤井さんにいい人ができたらあっさり関係を切れるし」
「いやいや、そんな予定はないぞ」
「戸籍上は男なんだから結婚できるわけじゃないしな」
「性同一性障害と診断されれば、戸籍の性別は変更できるぞ」
「なんでそんな事知ってるんだよっ、戻るかもしれないから戸籍は変えないからな」
「まぁそれはそうとして、結婚がすべてではないだろ?それに一ノ瀬もまだ戻っていないからきっと大丈夫だ」
「戸籍以外は好きにすればいいよ、どうせ潤井さん以外とはする気ないし」
「じゃあ、お、俺の、彼女で、いいだろ?」
「いいけど、それなら服買ってくれよ。大人びたやつ」
「どうしてだ?」
「二人で歩いていると、援交にしか見えないんだよっ」
「あ、ああ、だが今月厳しいんだ、一着だけでいいか?」
「いいけど、何かでかい物買うの?」
「内緒だよ」
その一週間後、隣部屋に引っ越してきた潤井さんの顔は緩み切っていた。
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