第34話 恥じらいは大事、本当に
俺はこの不思議現象の当事者が帰って来た事に少しばかり興奮していた。
何から質問すればいいのかを少し考えた後、口を開いた。
「お前、どこまで記憶があるんだ?」
「全部ある。今までは三人称視点のゲームみたいに自分が見えていたんだ、最初は臨死体験かと思ったから結構焦ったよ」
「どうして体の主導権を失ったんだ?」
「多分だけど、きっかけは
「ふむ、それであの女の子の性格は一体なんなんだ?」
「いや、それはわからない。わかったのは記憶の大部分を共有出来ている幼女と言う事くらいかな。逆に共有出来ていないのは、性格、しぐさ、感情、そして性知識だ」
「なんでそこで性知識がでるんだ」
「実は、家出したあとロリコンに誘拐されてな、随分エロイ事されたんだが─」
「なんですってー!」
「彩月さん落ち着いて、ちょっと裸にひん剥かれて、写真撮られたくらいだから」
「それ、誰ですか、ちゃんと警察に通報しましょうよ!制裁よ!制裁!抹消しなきゃ!」
「もう、警察来たから大丈夫だ、犯人がどうなったかは…俺も知らないけど」
「そうか、その歳で処女を奪われたとかじゃなかったんだな、よかった」
「いやいや、さすがに入らないだろ、知らないけどさ」
「ちょっとぉ、もし実験しようとするなら通報しますよ」
「え?俺もしょっぴかれるの?」
「幼女が児ポ法で捕まるってどんなんだよ」
「「あはははは」」」
「まぁ、その時、もう幼女の人格は何をされたのかどういう目的で誘拐されたのかを、正確に理解していなかったんだよな。もし性的に危険だと認識していたら泣きわめいて殺されていたかもしれん。気絶している間に撮られた裸の写真を見せられて、パンツを履いていない事を恥ずかしがってた程度だったんだ」
「その歳じゃ女としての自我は薄いと言う事か」
「普通は、そこまで薄くはないと思うんですけど。好きな人が出来てもおかしくない年頃ですよ?」
「個人差というやつか」
「あ、そうだ、ちょっとその後がどうなったか確認してくるわ。二人は待っててくれないかな、警察いるし時間かかるかもだけど」
そういって立ち上がりそうになる一ノ瀬を笹原さんが抱きしめるように静止した。
その時、包まっていた毛布がさらりと落ちて、裸体が露わになった。
だが幼女だ。しかも中身は一ノ瀬だ。
せめて、あと10、できれば15程、年をとっていれば…。
あと絶望的に羞恥心が足りない。それが一番の問題だな。
「あゆむちゃん!ちょっとは恥じらいくらいはもってよっ」
「あははは、気を付けるよ」
一ノ瀬はちゃんとおめかしして部屋を出ていった。
出かけに「彩月さんに手を出したら許さんからな」という一言を残して。
「なんだか、可愛い服を着るのに抵抗が無くなった感じがしまね。以前は極力飾り気のない服を選んでいたのに、その手の服に見向きもしませんでしたよ」
「それって、女の子の感性に引っ張られているって事ですかね、いつか『俺』とも言わなくなったりして?」
「それはそれで楽しみですね」
「ははは」
「ふふ」
それから、小一時間程経っただろうか。
いい加減、笹原さんとの会話にネタが尽きてしまいそうだと思った頃に、一ノ瀬は帰って来た。
その一ノ瀬は何やら嬉しそうに俺に向かって言った。
「潤井さん、喜んでくれ、若くて可愛い子を紹介してやる」
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